ほんとうにあったこわいはなし「お前、向いてるよな。あいつといるの」
自主練で、小柄な身体から強烈なサーブを繰り出している星海をコート脇で眺めながら、白馬は隣にいる昼神に向かってそう言った。
「そう? なんで?」
「変わってんだろ。いい奴だけど、俺はたまにあいつ怖いんだよな、宇宙人感あって…お前は全然平気そうじゃん」
「まあ何言ってるか分かんない時は結構あるけど、面白いほうが勝つよね。見てよ、あのドヤ顔」
鋭いサーブを決め、こちらに向かってガッツポーズを決めている星海に向かって適当に手を振りながら、昼神は笑っている。
「このままお前らがずっと一緒にいたら怖えな」
深く考えたわけではないが、白馬は何気なくそう口にした。
「あはは。芽生の期待に応えられるように頑張らないとね」
「期待じゃねえよ、怖いっつってんだって」
それから10年後。
娘が産まれて、内祝を送るから住所録を作るようにと妻に言われた白馬は、大きな体を縮こめてPCに向かっていた。
会社の同僚やファルコンズのチームメイト、学生時代のチームメイトなどの住所をリストにまとめていく。そういえば最近光来が引っ越したって言ってたな、と思い出してメッセージアプリで住所を尋ねると、すぐに返事があった。画面の住所表記に見覚えがあった白馬は、つい先ほど自分が打ち込んだばかりのリストを視線で追う。
「あ、同じ…」
星海の新住所が高校時代のチームメイトのひとりと同じだったことに気がついた白馬は、死んだ魚のような眼をして呟いた。
「本当にあった怖い話だ」