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    AmakAsuka

    @AmakAsuka

    安赤小説を書いています。この二人の立場、性格等の関係で、物語はシリアスに始まることが多いですが、必ずハッピーエンドになります。

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    AmakAsuka

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    共闘中の安赤、まだ付き合ってない。「眠ってしまった零くんに毛布を掛けてあげる沖矢さん」の絵(「PASH!2016年11月号」)から浮かんできた話です。エアブー240209展示作品。

    ##安赤
    ##AMAK
    ##安赤ワンドロワンライ

    バレンタイン「あれ、寝ちゃったの?」
    「ああ……」
     沖矢は、机に突っ伏しているかわいい寝顔に見入っている。この男の前で、安室が眠るとは。こんなにも安心しきった顔で。
    (赤井さん、めちゃめちゃ嬉しそうじゃねーか)
     放っておけばいつまでも見つめていそうだったが、呼び出しがかかった。
    「はい……わかりました。一時間後には」
     電話を切った沖矢は、「すぐ戻る」と言って出かけ、本当にすぐに戻ってきた。
    「え、もう終わったの?」
    「いや、今から向かう。これを」
     くうくうと眠る安室の横にそっと置かれたのは、何ともファンシーな、小さな紙の手提げ。薄い水色の地に、星やハートや花が描かれている。
    「もしかして、チョコレート?」
    「ああ。ちょうど佐藤刑事がいてな。アドバイスしてもらった」
     おそらくはコンビニで、二人がバレンタインのコーナーで話すのを想像する。佐藤刑事のアドバイスって何だ。
    「参考になった?」
    「ああ。彼女はすごいぞ。俺がチョコレートの棚を見ただけで、『安室さんにあげるの?』と聞いてきた」
    「あ、そう……」
    「じゃあ、行ってくる。大して時間はかからない。……彼にいい土産を持ってきたいものだ」
     優しい目で、肩に掛けたブランケットを直してやっている。つまりは公安案件か。
    (喜ぶより怒るんじゃねーの?いやでも「君へのプレゼントだ」ってこの人に言われたら、安室さんは怒ることを忘れそうな気もする……)
    「行ってらっしゃーい……」
     コナンは、乾いた声で沖矢を見送った。二人の恋が静かに進行していることに気付いていないのは、幸せそうに眠るトリプルフェイスの男だけだった。彼は、懐かしい夢を見ていた。

       ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

    「うん……?これは。……バーボンか」
    「ああ」
    「寒そうな恰好で寝ているじゃないか……」
     ライの足音が聞こえる。彼が起きる気配に、咄嗟にたぬき寝入りをした僕は、わけもなく大きくなる心臓の音に戸惑った。
     ふわっ
     ライは、何かを僕に掛けてくれた。多分、僕が彼に掛けた上着だ。落ちないように、丁寧に……優しい手つき。肩に手が置かれた。それが頬に移動して……ん?何か、やわらかいものが。
    「お前……」
    「ん?」
    「キ、キ、キス」
    「ああ……つい。弟のようにかわいいと思ってな」
    「あ、そう……」
     ヒロとライの会話は、その後も続いていたけどよく聞こえなかった。キス……?弟……弟だって。ふふ……ライの弟かあ。

       ♢ ♢ ♢ ♢ ♢

    「ん……あれ?寝てた……」
     安室は少しの間、自分がどこにいるのかわからなかった。熟睡していた。工藤邸の書斎のようだ。
    (そうだ、コナンくんと……赤井と、打ち合わせをして……その後、おしゃべりしてたら眠くなって)
     自分がこういう場所で眠り込んだことに内心驚いていると、「あ」とかわいらしい声がした。
    「安室さん?起きた?」
    「コナンくん」
     離れたところで本を読んでいたらしい少年が、立ち上がって近寄ってきた。自分が突っ伏していた机の上には、何やらかわいい袋がある。
    「これ……ああ、バレンタインか。蘭さんから君にだね?」
    「いや、安室さんに」
    「え?蘭さんからの義理チョコかい?悪いなあ」
    「じゃなくて……その、あ、安室さんが多分この世で一番気になってる人からの」
    「赤井から!?」
    「あ、うん」
     やっぱりそうなんだ。とは、コナンは口に出さなかった。
     安室は、じっと袋を見つめている。
    「コナンくん……あいつ、僕のことをどう思ってるのかな」
    「えー……この世で一番気になってるんじゃない?」
    「そうかな……うん、そうだといいな」
    「ホワイトデーにお返ししてあげなよ?」
    「……うん」
    「あと、受け取ったお礼は、早く言ってあげた方がいいと思う」
     実際の年齢でもひと回り違うのに、恋はこの子の方が上手だ。
    「君のアドバイスは役に立ちそうだ」
     安室は、迷って迷って、実に一時間もかけて、一通のメールを送信した。

    「赤井くん、今日はやけに機嫌がいいな」
    「ええ、いいことがありましてね」
    「ほう?」
    「生き返る理由が見つかりました」
    「それは何よりだ」
     ジェイムズは心の底からホッとした。今のままでは、降谷が気の毒で見ていられないと思っていたのだ。
     変装したままの赤井は、難なく狙撃を済ませると、公安への連絡はジェイムズに任せて車へ戻った。エンジンをかける前に、さっき届いたメールをまた表示させ、繰り返し読む。
    『僕はお前の弟じゃない。はっきりしろ』
     悩んで悩んで送信して、「うわっ、送っちゃったっ……ストップ!」と慌てている様子が目に浮かぶ。気が緩んで、滑るように指が動き、返信した。

     送ったメールは取り返しがつかない。
    (とんでもないものを送ってしまった。いや、はっきりしないあいつが悪いんだ……)
     心の中でそう繰り返していた安室は、握りしめている端末の通知音に、恐る恐る画面を見た。
    「メール……」
     ドキドキする。コナンは別の部屋に行っている。でも小さな足音が聞こえてくるから、早く見ないと。
    「……!!」
    『You are the best thing that happened to me.』
     息が詰まる。顔が真っ赤になる。目が潤む。
    (赤井……赤井。好き、だ……)
     食い入るように……それから、安堵して、優しく抱きしめるような眼差しで画面を見つめ続ける男。それをドアの隙間から見た小さな名探偵は、足音を忍ばせて引き返していった。

     頬を染め、けれどいったん落ち着いて、幸福を身に纏って部屋から出てきた男に、コナンは声をかけた。
    「安室さん」
    「コナンくん。すっかりお邪魔してしまったね」
    「赤井さん、すぐ戻ってくるって言ってたよ?待ってれば?」
    「そ、それはその」
     会いたい。今すぐ会いたい。好きな相手が、君は俺の宝物だと言ってくれたのだ。抱きしめたい。あわよくば、押し倒したい。……それはまずい。場所が良くない。
    「ホワイトデーまで、待とうかと思っているんだ」
    「声、裏返ってるよ」
    「そ、そうかなっ」
     一か月も待つ自信はないが、赤井があそこまで言ってくれるのだから、一か月で心変わりするとも思えない。恋にうつつを抜かしている場合でもない。
    (それとも……一度でも、抱けば)
     この炎は静まるんだろうか。とにかく今、燃え盛っていてやばい。
    「ホワイトデーはホワイトデーで別に考えて、今は素直になったら?大事なことは、伝えられる時に伝えた方がいいと思うよ」
    「……うん。そうだね」
     安室はコナンの切なさを感じ取った。彼が工藤新一であることは、自分と赤井には明かされたが、蘭はまだ知らない。彼女の寂しそうな顔を何度も見た。赤井はそんなタマではないだろうが、一か月のうちに何が起こるかわからない。チャンスは、今、目の前にあるのだ。
     そこへ、車が止まる音と、耳に馴染んだリズムで車のドアを開け閉めする音が聞こえてきた。だが、家の中へ入っては来ない。
    「あれ、待ってるんじゃない?」
    「そうみたいだね。ありがとう、コナンくん」
     チョコの袋を提げて玄関へと向かう男は、完全に降谷零に戻っていた。

     夜の庭に、仮の姿の想い人が佇んでいる。
    「お疲れ様です」
     闇を滑らかに裂くテノールは、シャープな響きの中に甘さを含む。公安が追っていた人物の逃亡を阻止してくれたことは、風見から報告が入っていた。煙草も吸わず、祈るように空を見上げていた男は、いつになく緩慢な動きでこちらを向いた。
    (照れてる?)
     献身的というか、傍若無人というか。気ままに生きているように見えるのに、実のところは情で動いている。赤井の方へとひと足進むごとに、体がふわりと軽くなった。この男の情は、今、まっすぐに自分へと向けられている。
    「どうやら、怒られずに済みそうだ」
     冗談めかした口調に、普段のいたずらっ子のような調子はあまりない。緊張と、降谷に対する甘え。それも、無意識の。
    (全く、たちが悪い……)
     玄関の明かりと月の光に浮かび上がった長身を見れば、体つきや醸し出す雰囲気はやっぱり赤井で。探し出し、共闘するまでになった現実に、あらためて満足を覚える。
    「怒るわけないだろ……ありがとう」
     欲しくてたまらなかった人。ゆっくりと抱きしめる。チョコの袋が、カサッと音を立てた。
    「安室くん」
    「今は、そっちじゃない……」
    「……そうか」
    「うん……」
     大きな手が背中にまわる。その指先も、首筋から服の中へと忍び込んでくる吐息も、震えている。
    「さっきくれたメール、僕も同じ気持ちです」
     安心させたくてそう言うと、赤井の手の力が強まった。肩が震えている。顔を伏せて、泣いている。
    (赤井……あなたは僕の宝物だよ)
     冷たい夜の空気で肩が冷えないようにと、なでて、さすって、月が雲に隠れるまで、そうしていた。

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    Replies from the creator

    AmakAsuka

    DONEエアブー230528の展示作品です。安赤ワンドロワンライのお題「最後の日」をお借りしました。
    バーボンが、スコッチの最期の言葉を聞くことができていたら、と想像してみました。映画の影響で、幹部を手伝ってくれる構成員も登場させています。その後、ライが組織を抜け、2年後に赤井秀一として日本に戻ってくるまでを書きました。
    これだけで読めますが、6/23からのエアブーで続きを展示します。ハッピーエンドです。
    最後の日「おい。バーボンはどこにいる。誰か知ってるか」
    「今日は〇〇会の取引のために潜ってますぜ」
    「そうか……奴が戻ってきたら、気を付けろ。荒れるぞ」
    「兄貴、心配してやってるんですかい。そりゃあバーボンは、ライとデキてるとかデキてないとか言われてやしたが」
    「んなことはどうでもいい。ライのこととなると逆上するあいつが面倒なだけだ」
    「逆上ですかい?俺には、いつもより冷たく見えやすよ」
    「ウォッカ。赤い星と青い星、どっちが熱いか知ってるか」
    「え。あ、青い方……あー。そういうことですかい」
     真っ赤になって怒っている時よりも、静かに青い目を光らせている時の方が、恐ろしい。裏切者としてライに始末されたスコッチの死以来、バーボンのライを見る目は、氷のように冷たい。
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    AmakAsuka

    DONEPixivの1000字コンテストに応募した、「ボトルメール」をテーマにした小説です。ハッピーエンド。pixivの方は、コンテスト用に少し縮めてあります。こちらが完全版となります。零くんがこんな危ないことをするか?とも思いますが、パッと浮かんできた光景を書いておきたかった。赤井さん相手なので突飛なことをしてしまう上に今よりももっと若かった零くん、ということで、広い心でお読みいただければ幸いです。
    ボトルメール一、あなたは海の彼方

     僕の中に残っていた、温かいもの。それが粉々に砕かれた瞬間。破片をかき集めて、ボトルに入れ、蓋をした。優しい笑顔、気遣ってくれる声、交わしたいくつもの言葉。かけがえのない親友を失ってからも、なおも心の中から消すことができなかった日々。
    「さよなら、ライ」
     海に流して、すべて忘れよう。それでもこんな風にボトルメールにして、ぷかぷか浮かぶのを眺めているのは、未練にほかならないけれど。
         ♢ ♢ ♢ ♢ ♢
    「よぉ、シュウ!」
    「トム。しばらくだな。あの件は片付いたのか」
    「ああ、手こずったがな。この前アドバイスもらって助かったよ。さすがは『ライ』だな」
    「それは禁句だ」
    「ハハッ。悪い悪い」
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