ファーストコンタクト(あ、)
やってしまった
机の上に忘れてしまったであろうノートを思い出しながら鞄を探る。図書だよりとか要らないプリントの裏紙があれば取り敢えずこの授業は乗り越えられるんだけどなぁ。
いくら鞄を引っくり返してファイルの中身を確認しても図書だよりどころか裏が白紙の紙が一枚もない。仕方ないと周りを見る。窓側で一番後の私が頼れるのは前の席と隣の席との二択だ。
…ところがどっこい、前の女子は爆睡…あ、涎たれてる。
つまり、選択肢は一つしかない。
(話したことないのに紙寄越せとか…)
ぐだぐだ要らんことを考えた後、覚悟を決めて私は隣の席に呼びかけた。
「あの…鉢屋くん」
「…なに?」
ウワッこっちを見ない!!辛い!!!
でもめげるな、私!
「本当に申し訳ないんだけど…ルーズリーフとかあったら一枚恵んでくれると嬉しいです……」
「…あー、ちょっと待って」
ごそごそと机の中を漁ってくれてる。あぁ、ありがたい…
「本当にありがとう…ごめ、」
びりっ、と音を立てながら綺麗にノートを切り取る鉢屋くん。上手い!
じゃなくて、えっ
「はい」
何気なく渡される一枚のノート。いや、そうではなく!!!
「えっ?!え、ごめん!後で弁償する!!」
「いや別にいいけど…あと声気づかれるぞ」
「うっ、ありがとう…」
前を向き直して板書をする。あーそれにしても申し訳なさすぎる…。しかし鉢屋くん可愛いノート使ってるな…スヌーピーて。
(後でジュース買ってこよう……)
*
休み時間、鉢屋くんへのお礼をするために自販機とにらめっこをする。そういえば鉢屋くんってジュース飲むのかな?どうしよう、水素水しか飲んでなさそう…。
いやでも水を「はい、お礼です」って言われても反応に困るよね。私なら困る、うん。
いや、ここは無難にお茶を買っておこう…。もし甘いのが飲めたらアレだからミルクティーも買おう(自分が飲みたいっていうのある)
ガコン、とペットボトルが2つ落ちてくる。冷たいそれを腕に抱えながら教室に戻ると、鉢屋くんはなんか表紙がどシンプルな文庫本を読んでいた。絵になるな…。
「鉢屋くん」
「ん…どした?まだ紙足りない?」
「さっき購買でルーズリーフ買ってきたよ!はい、どっちか選んで」
「え、なんだよ、良いのに」
「いやいやわざわざ貴重なノートをねぇ…ありがとうございました」
「…じゃ、ミルクティーで」
「ほい」
意外、甘いのもいける口なのか。
「…甘いの飲めるんだとか思っただろ?」
「え?!なんでわかったの!?」
「顔見りゃわかるって」
薄く笑う鉢屋くん。あ、笑顔初めて見た。
「ていうか鉢屋くんって意外に話しやすい…?」
「いや俺のこと何だと思ってんだよ…アンタこそもっと根暗なのかと思ってたけど」
「うわ~普通にムカつく~」
1年生、4月───