両想いにならないと出られない部屋『両想いにならないと出られない部屋』
「詰んだな」
「あぁ、同感だ」
真っ白な部屋にドアノブがついたドアがひとつ。
おそらくこのふざけた難問をクリアしなければこの部屋から出られないのだろう。
正直に言おう、俺はこいつ、クリプトのことが好きだ。
けどこいつは俺のこと絶対好きなんかじゃない。
だからこれは不可能なのだ。
自分で言ってて辛い。
「なぁ、ここはさお互い嫌だってのはよーく分かるんだけど、好きだって言ってみねぇか?」
「は?」
「いや、だからお前が嫌なのは分かってる!けどここから一生出られないのはお前も困るだろ?だから…」
「お前は嫌なのか?」
「は?」
今度は俺が口をあんぐり開ける番。
「し、質問を質問で返すなよ!言うか言わないか、今はそこが重要だろ」
「俺にとっては嫌か嫌じゃないかかが重要だ。答えろウィット」
そんな真剣な顔で俺を見つめるな!
つーかどんどん赤くなる顔を見て察してくれよ!
「っ…お、俺は…別に…嫌、じゃない」
最後の方小声になったのは仕方がないことだろう。
すると突然腕を取られドアの方へずんずん歩いてくクリプトに半ば引きずられるように後を着いていく。
そしてクリプトがドアノブに手をかける。
「これが、俺の答えだ」
そう言って回されたドアノブはガチャりという音ともに開かれた。
「へ?え?どうして、ドア」
あまりの急展開に頭がついていけない。
それなのにクリプトは冷静で、というかどこか嬉しそうで
「俺も好きだって言ってんだ。ばかウィット」
「はぁぁぁぁ!?え、じゃ何だ?このドアもしかしてはじめから」
「あぁ、おそらく開いていたな。だってお前俺のこと好きだろう?」
意地悪な笑みで俺を見てくるクリプトに負けず嫌いが発動して、距離を一気に詰め頬にキスをする。
ぱちぱちと驚いて瞬きをするクリプトににやりと笑って俺はドアの外へと駆け出す。
「へっへーん。俺はまだ好きって言ってないからなー!俺から愛の言葉を言って欲しけりゃ精々俺を夢中にさせてみろ」
べーっと舌を出して笑えば、固まっていたクリプトの表情が変わる。
あ、やばい調子に乗りすぎた。
「上等だ、存分に可愛がってやるよ小僧。後悔するなよ」
捕食者の目をしているクリプトに心臓が跳ねる。
それに素知らぬフリをして俺は今度こそデコイを出して逃げ出した。
早く捕まえてくれ、なんて本音は絶対言ってやらねー。