ずっと目が覚めたらいい匂いがした。
どうやら無意識に恋人の頭を抱き抱えて眠っていたらしい。
すーっと息を吸えば甘いバニラのようなウィットの香り。
ずっと嗅いでいられる香りとはこのことか。
確か好きな匂いの人とは相性がいいんだったか?
そんなことを考えながらすんすん鼻を寄せていると、腕の中で恋人が身じろいだ。
「んぅー」
「悪い、起きたか?」
眉間に皺を寄せて目を瞑っているウィットの頭を撫でると、じわじわと表情が解れていき再び健やかな寝息に変わる。
その時に俺の背中に腕を回してくっついてくるもんだから口角が緩むのを止められない。
「ふっまだ寝るのか?安心しきった顔しやがって」
俺の胸元に収まっている自分より大きな男が可愛くて愛おしくてたまらない。
「ずっとこうしていたい、な」
ウィットを俺の腕の中で独り占めしていたい、心からの願い。
「ん、おれも」
寝ていると思ったのに返事が聞こえて頬が緩む。
「起きてたのか?」
「さっきおきた」
寝起きのウィットはぽやぽやしていて可愛い。
まぁ、いつでもウィットはかわいいのだが。
「まだ寝てていいぞ」
「んー、クリプトのにおい、すき」
まだ寝起きだからか普段より素直なこいつの発言は幸せ爆弾だらけで末恐ろしい。
朝から襲うぞ。
物騒なことを考えながら、恋人の顔が見たくなって覗き見る。
ゆるりと開かれた視線の先に一番に映るのが俺ということに、言いようのない多幸感に包まれる。
「おはよう、クリプちゃん」
「あぁ、おはようウィット」
そう言いながら再び俺の胸元に顔を寄せるウィット。
頭を撫でれば、すぅーと深く息を吸う音。
「何してるんだ?」
「クリプちゃん吸い」
「ふはっ猫吸いじゃないんだぞ。俺の匂いは好きか?」
答えはさっき教えてくれたが、何度でも聞きたいから聞く。
「ん、好き」
とことん素直で可愛い恋人に我慢できずウェーブのかかった柔らかな髪にキス。
本当は甘くて美味しい唇にしたいんだが。
「ここからでたくねーな」
「出なくていい。ずっと俺の腕の中にいろ。一生可愛がってやる」
すると俺の胸元から少し離れたウィットが上目遣いで俺を見つめる。
それにドキドキしていたら
「今すぐ可愛がってくれよ、クリーピー」
なんて舌足らずに言うもんだから、我慢もできずウィットを下に組み敷く。
「朝から俺を煽るってことは分かってるな?」
頬を染めたままウィットがこくりと頷く。
「クリプちゃんの匂い嗅いでたら興奮しちゃった」
照れ臭そうに笑う恋人に俺は片手で顔を覆い天を仰ぐ。
ついでに自身にもすっかり熱が溜まってしまった。
それに色っぽく、あっ、なんて目の前の凄まじく色香を放つ恋人が声を上げるものだから早急に服を脱がせてご希望通り可愛がった。
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「腰が痛い」
「ウィットがエロいのが悪い」
「おいおい、俺のせいなのか?」
時刻はとっくに昼を過ぎていたが未だベッドで恋人とまったり話しているこの空間が好きだ。
素肌にシーツという色っぽい格好なのに、その笑顔は悪戯っ子の少年のようで可愛い。
何が言いたいか、
「お前可愛いな」
「ふふっばーか」
照れ臭そうに抱きついてくるウィット。
「クリプちゃんは格好いい…かもな」
あまりの可愛さに唸り声が思わず出そうになった。
かも、なのが素直じゃない此奴らしい。
必死に唇を噛んで堪えた俺を誰か褒めてくれ。
「かも、なのか?」
「へへっ恥ずかしいから言わねーよ!」
結局我慢もできずぎゅうぎゅうにウィットを抱きしめた。
「愛してる」
「あぁ、俺も」
「言ってくれないのか?」
言葉で聞きたくてちょっと甘えてみる。
しょうがねぇなぁと態とらしく呟いたウィットが耳元に寄る。
「愛してるぜ、テジュン」
甘くて良い声で愛を囁かれ、離れぎわ耳にキス。
可愛すぎる恋人に何を返せばいいだろう?
無言でウィットを押し倒す。
期待に染まったハニーブラウンを見逃すはずも無い。
「いただきます」
きっと今日はベッドから離れられない。
こんな日々がずっと続くと良い。