あげたがりゲーム中大きいバッグを見つけた。
その時思い浮かんだいつも荷物でぱんぱんのちょっと憎らしくもある恋人の後ろ姿。
ポケットに手を突っ込んで走るのは危ないからやめろ、何度も言ったが知らん顔される。
それに、なんやかんやあの走り方が可愛いと思ってしまっている自分もいて困ったものだ。
話が逸れた。俺のせい?
いや彼奴のせいだ。
話を戻す。
ここにバッグがあるぞと知らせてやれば済む話だが、どうにも彼奴の驚いた顔が見たくてバッグを拾い目的の人物の元へと走る。
恋人、クリプトは建物の中を探索しているところだった。
いつも通りに、なんて何故か緊張しながら声をかける。
「おいクリプト」
「なんだ?」
目当てのものを拾って、視線が俺へと向く。
「これやるよ」
ポンと差し出した大きいバッグ。
クリプトは想像通り驚いた顔をした後、何故かくすりと笑った。
不思議に思いきょとんとしていれば目の前に差し出される同じ大きさのバッグ。
途端に恥ずかしくなって俺はその場を直ぐにでも後にしたかった。
が、クリプトは俺が差し出した方のバッグを持つと、心底嬉しそうに笑って俺の頭をぐしゃぐしゃと撫でつける。
「ありがとう」
「…どういたしまして」
素直にそう言うことしかできず、俺はというと顔が真っ赤なのもどうにもできずにクリプトが残していったバッグを手に取り走り出した。
クリプトから少し離れた場所で死角になっているところを探してしゃがみこむ。
恥ずかしい…なのにあんな嬉しい顔をされてしまえば嬉しい気持ちが勝ってしまう。
やっぱり彼奴のせいだ。
「ちくしょー、…好きだ」
熱は覚めそうにない。
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「どうした?」
「なんでもねーよ」
なんてことがあったから何となくずっと顔の熱が引いてない気がしてツンとした態度をとってしまう。
「…ウィット」
「ん?」
声をかけられクリプトを見れば、何故かアーマーを脱ぎ出していて俺は焦る。
「な!にしてんだお前はこんなところで!」
「ほら、早く着ろ。交換だ」
差し出されたアーマーは此奴がEMPで育てたアーマー。
俺のはまだ少ししか育っていない。
「さっきバックくれただろ」
なんでという問いかけの前に答えが返ってくる。
その答えにまた赤くなる顔。
「さっきのは…ただ交換しただけじゃねぇか…」
思わず声も小さくなる。
「お前から貰ったことに意味がある」
いつからお前そんなに素直になったんだよ。
「ほら、早くしろ。今撃たれたら俺は即ダウンだ」
「わ、分かったよ!…ありがとう」
「礼には及ばない」
さっきお礼を言われた時みたいに頭をぐしゃぐしゃに撫でられ視界が髪で遮られる中、ちらりと視線を上げてクリプトを見る。
「〜っ」
だから、そんな嬉しそうに愛おしそうに俺を見るな。
でも何故だろう。
今日のゲームは負ける気がしない。