閃光心臓の音が嫌に大きく聞こえる。
眼光は鋭く、皆目指すものはただ1つ。
“勝利“
「勝つ」
「勝つぜ」
「勝つ!!!」
「勝つわよ」
円はあっという間に最終円。
残ったのはミラージュとクリプト、オクタンとライフラインの2チーム。
焼けるほどの痛みを持つ円が急速に迫っていく。
「EMPを起動する!」
先手を打ったのはクリプト。
アーマーが砕ける音がして、代償にダメージを負ったクリプトをカバーするように、続くはミラージュ。
デコイを出し本体がどちらか迷っているオクタンの額にウィングマンを2発。
あと1発、その時オクタンがジャンプパッドで飛び上がりミラージュの視界は上に向く。
そこを狙って今度はライフラインがフラットラインでミラージュを狙う。
「悪いなお嬢さん」
ミラージュがまるでその様子を見ているかのように笑った。
「しまった…」
ライフラインが気がついた時にはクリプトのクレーバーで頭を撃ち抜かれていた。
興奮剤を刺したオクタンが持ち前のスピードで弾をすり抜けていく。
「遅せぇよ!着いてこい!」
「さぁ、パーティーといこうか」
ミラージュがアルティメットのパーティーライフを展開させる。
再び撹乱される戦場に、終演の円が近づく。
クリプトがじりじりと焼ける背中の痛みに耐えながら声を上げる。
「決めろ!ウィット!」
オクタンの目の前にいたミラージュがにやりと笑い今度こそ残り1発のウィングマンを額に撃ち込んだ。
Champion!
特大のクラッカーが鳴り響き2人を祝福する。
クリプトはハックとグータッチ。
ミラージュは観客へ向けてパフォーマンス。
勝利の余韻に酔いながら2人はドロップシップへと戻って行った。
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「やったな!クリプちゃん!」
「あぁ、やったな」
2人はお互いの肩を痛いほど叩きあう。
しかしクリプトの表情はどこか暗い。
それに気がついたミラージュは首を傾げる。
「どうしたよ?おっかねぇ顔して。せっかくの勝利だ景気よく行こうぜ!そうだ!今夜は俺の店でパーティーをしよう!皆誘ってな!な、いいだろ?」
楽しそうに笑うミラージュにクリプトは頷く。
だがその顔はまだ晴れない。
「なんだよ何かあるなら言っとけよ」
ミラージュが困惑した表情で問うと、クリプトの閉ざされていた口が開かれる。
「なぁ、どうかお前は消えてくれるなよ」
「はぁ?何言ってんだ。俺が消える?どうして?」
「どうしても、だ。約束しろ」
「ん?あぁ分かったよ、それでお前が安心するならな」
「本当だぞ?」
「しつこいぞ!俺はミラージュ様だ。約束は守るぜ」
ポンとデコイを出してハイタッチするミラージュに、漸くクリプトの表情は和らいだ。
「ふっ、どうだかな」
何故この時クリプトはミラージュに対してある種の不安を抱えていたのか、そして何故この後クリプトに背を向けたミラージュは儚く笑ったのか。
その理由はまだ誰にも分からない。