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    ya_so_yan

    @ya_so_yan

    9割文章のみです。勢いで書いたものを置いておきたい。後でピクシブに移すことが多いです。

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    ya_so_yan

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    冬のキュラム🐬🐏。乾燥にご注意。
    (※妄想度合い強めです)
    (※美女とおじさんがイチャついてます)

    Vanilla「少し早いですが、クリスマスプレゼントということで」
     そんな名目で差し出された包みは、男の手には不釣り合いなほど小さく可愛らしくて、キュラソーは眦の切れ上がった両目を見張る。
     次いで、腕組みをしながら溜息をつき、ソファに腰掛ける壮年の紳士を見下ろした。
    「……アクセサリーは邪魔になるだけだから付けない。忘れたの?」
    「承知していますとも」
     ラムは、すらりとした脚で仁王立ちする銀髪の美女を前にして鷹揚に頷くと、プレゼントに手を出そうとしない彼女の代わりに、膝の上で自らリボンを解いてみせた。
     深い皺の刻まれた厚い掌に、ころんと転がり出てきたのは、装飾品の類ではなかった。銀色の小さな平たい缶。
     蓋を開け、バーム状の中身を薬指の先に掬い取る。
    「手を」
     ダンスに誘うかのように、男が優雅な仕草で手を差し出す。
     女はしばし間を置いてから、腕組みを解き、自身の手を預けた。
     長く細い指。切り揃えられた爪は必要以上の長さはなく、ネイルの類も塗られていない。ラムがその指先や関節を優しくなぞると、カサリと乾いた手触りがした。
    「あかぎれなど出来てからでは、痛みますから」
     ラムの太い指が繊細に動いて、キュラソーの指にバームを塗り込んでいく。少量に見えたそれは伸びが良く、丁寧な手つきによって一本一本、指先から付け根まで馴染んでいく。
     されるがままになりながらも、キュラソーは釈然としない様子だった。しかし親子ほど歳の離れた男に手をまさぐられることに、嫌悪感は表れていない。そもそもラムの手つきに不埒な動きは一切なく、ただ彼女を労るためだけのものだった。
    「別に、仕事に支障はないのに……」
    「諦めてください、年寄りのお節介だと思って」
     手元に視線を伏せたラムの柔らかな微笑を、キュラソーはやはり、釈然としない気分で見下ろす。

     この男が彼女に求めているのは、たおやかな指でも、柔肌でもない。
     並外れた記憶力。彼を守る身体力。敵を打ち倒す闘争心。
     必要なのは、能力のみのはず。
     だというのに、ラムは時折、こうしてキュラソーの世話を焼きたがる。仕事に影響しない、心身の部分にまで。
     人を意のままに操る権力と傲慢を持ち合わせながら、部下であるはずの彼女に物を贈り、気を遣い、こうして執事のごとくかしずくような真似までする。
     それは、特別の腹心だからなのか、女だからなのか――もし後者なら、一度捩じ伏せてやろうかと密かに企む。キュラソーがどんな女なのか、知らないわけはないはずだが、もし忘れているのならその身をもって思い知らせてやろうかと。その時、いつも物腰穏やかなこの男が果たしてどんな顔をするのか、興味をそそられてもいる。

    「君は放っておくと、自分のことを後回しにしてしまうでしょう」
     その隻眼で、彼女の内心を見透かしているのか、いないのか。
     もうキュラソーの断りを待つまでもなく反対の手にも取り掛かりながら、ラムは語りかける。
     優しく、甘く。
    「大切なものをないがしろにされるのは、不愉快なものです」
     大切なもの。
     その響きは、軟膏を塗り込む手つきと同じで、あまりに柔らかく、こそばゆい。
     いつも甘ったるく聞こえるラムの言葉は、何が本心で何が詭弁なのかわからない。わからないのに、その全て耳心地がいいので始末に悪い。
     そうやって、結局は彼の目論見通りに飼い慣らされている。
     キュラソーは、また溜息をついた。

     解放された手を引っ込め、指を擦り合わせながら鼻先へ近づけると、バニラと思しき匂いがほんのりと香った。
    「……少しべたつく。匂いも甘ったるい」
     キュラソーがささやかな不満をこぼすと、我慢してください、とたしなめながら、ラムは蓋を閉めて缶を差し出してきた。
    「指や手だけでなく、肌のどこにでも使えます。唇に塗っても良いそうですよ」
     そう、と素っ気なく答えながら、キュラソーはようやくプレゼントを受け取った――直後。

     タイトスカートから伸びる膝が、スーツの腰を挟むようにソファに乗り上げた。
     ラムは微動だにせず、眼差しだけで静かに彼女の意図を探る。膝へ馬乗りになったキュラソーは、湿度を含んだ指で彼の顎を鷲掴み、軽く上向かせた。組織No.2の男にこんな真似をする人間は、他にいない。
    「唇が乾燥してるわ、ラム。切れたら大変」
     キュラソーがわざとらしい抑揚をつけて指摘してみせると、ラムは手を振り解くことなく、ちょっと肩を竦めてみせた。
    「私は結構ですよ」
    「へえ、自分だけ逃げる気?」
     逃がさない、とばかりに指に力を込めて顎を固定し、キュラソーは不敵な笑みを浮かべて顔を近づけた。オッドアイが隻眼を覗き込む。
    「貴方が言ったんだよ。大切なものをないがしろにされるのは、不愉快だってね」
     ――観念しな。
     睦言にしては挑戦的な低い声に、ラムは苦笑する。
    「……参りました」
     そして、どうぞ好きにしてくれとばかりに、瞼を閉じる。
     油断ない目つきをしていたキュラソーは、ようやく表情をやわらげた。

     己を飼い慣らすのがこの男だけであるように
     この男が無防備を晒すのが己だけならば
     少しは溜飲も下がるというもの。

     うるおった親指が、男の乾いた唇をゆっくりとなぞる。
     体温で温まったせいか、バニラの香りがいっそう匂い立った。
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