プランツドール🔶先生プランツドール鍾離先生
ある日の休日、友人と出掛けることになった。引きこもり気味な私は少し家から出るのが億劫だったが、それだけで断るのも気が引けたので「いいよ」と言えば嬉しそうにする友人。
で、その出掛ける日って言うのが今日。友人と少し遠出して見知らぬ街にいる。とてもオシャンティー(死語)。色々なお店があり、視線がうろうろ迷ってしまう。
「あ、ねぇ🌸!ここなんかすごいよ!すげー!」
「語彙力どうした。」
友人がお店のショーウィンドウに飾ってある小物に目を奪われているうちに少しキョロキョロしていると、その隣の店の窓にべたぁ…と張り付きこちらを見ている子がいる。え、なになになになに怖い怖い。
「……ねぇ。」
「どした、🌸もすげーもん見つけた?」
「うん。すげーもん見つけたわ。」
友人の服の裾を軽く引っ張り隣の店を見るように促す。やっぱり友人にも見えてるようで。「オワ…」と小さく戦慄する。え、なんなのこの子。と思いながらも隣のお店の窓に近づき、指でちょいちょいと窓をつつくと心底嬉しそうにその子の頬が綻ぶ。え、可愛い。
その子のいるお店の中を見てみたが暗くてよく見えない。やってないのかな……?なら入る訳には行かないな。と思い、
「ごめんね。ばいばい。」
と小さく言って手を振ってお別れをする。お別れする時めちゃくちゃに泣きそうな絶望したような顔で見られたけど私とそんな別れたくないの????出会って5分の女だよ????
友人との買い物中、やっぱりあの子のことが気になる。可愛かったし、何よりお店の子だったとしても暗い店内に居ていいの??ご両親とはぐれちゃったのかな?とかぐるぐる考えてしまう。
「🌸、あの子気になってる?」
「え、あ、うん…。ご両親とかどうしたのかなって。」
「店の子なんじゃないの?」
「そうだとしてもあんな開いていなさそうなお店にいていいのかなって。」
「うーん。」
まぁ自分の子が居ないってなったらご両親が気付くか。って結論になって2人でまたショッピング再開。
――――
日が傾いて来た頃に解散する事になる。
「またね~!」
「うん。ありがとうね。」
ほんとに元気な友人だ。さて帰るか。帰り道にあの子がいた店の前を通る事に気付いた。ちょっと様子見てみようかな。
しばらく歩くとあのお店が見えてくる。窓から中の様子を伺うとやっぱり暗いままの店内。あの子は居なさそかな?……と思った矢先。店内でドタドタドタドタッとめっちゃ走ってる音が聞こえた。ゴンッと窓に体当たりするほど全力で走って来てくれたのは日中にも見たあの子。茶色から夕暮れ色に変わる綺麗なグラデーションのかかった髪と琥珀のように輝く黄金の瞳。凡そ人間とは思えないその美貌に見惚れていると、店の中から金髪の女性が出てくる。
「あっ、もしかして……!」
「え、あ!?ごめんなさい!すみません!!べべ別に盗みに入ろうとかそういう訳では!!あのホントすみません警察だけは!!!!」
そりゃもうハチャメチャに謝った。店の中の様子を物色している泥棒に見られていてもおかしくない。勢いよく頭を下げて害は無いですアピールをする。
「……え?警察……??…じゃなくてですね。お姉さん、もしかして昼間にも来て頂いてたりしませんか?」
「来てました!!来てましたけども!別に盗みに入る下見とかではなくて!!!あのですね!?綺麗な男の子が1人でお店の中うろうろしてて!!窓越しにその…!仲良くなったと言いますか!!!」
「やっぱりだ!お店の中にどうぞ!」
「いやほんと何もしてないんです!!」
ぐいぐいと金髪少女?に店の中に引っ張られる。あぁ、これから事情聴取されるのかな。抵抗しない方がいいなと観念してついて行くと、店に入った所で足をぎゅっとされる感覚。逃げられないようにされる感じですか!?恐る恐る足元を見ると、昼間の綺麗なあの子。
「あ、鍾離先生いい所に!」
鍾離先生と呼ばれたその子。先生……?と思ったがまぁいいや。
「お姉さん、ちょっと先生と遊んでてください!」
「は、はいぃ……。」
お兄ちゃーーーん!!と店の奥に行ってしまう少女を見送る。ぐっぐっと繋いだ手を引かれる。
「えっと……しょ…うり先生……??」
「!!」
男の子のものと思しき名前を呼んでみると呆気に取られたような、喜んでいるような表情をした。
「鍾離先生起きたって!?」
鍾離先生と遊んでいると金髪の女の子が金髪の男の子を連れて帰ってきた。誘拐しようとしてるとか思われてない?大丈夫??
「「こちらへどうぞ。」」
お店のカウンターに案内されるが、鍾離先生に手を掴まれていて動けない。どうしましょう…と視線を送ると、「抱っこしてあげてください。きっと喜んでくれます。」とにっこり笑顔で金髪の女の子に言われたので、恐る恐る抱き上げるとすり…と頬ずりされる。可愛い……。
「まずは自己紹介からさせてください。僕は空。こっちは妹の蛍です。」
椅子に座ると鍾離先生が膝の上に乗ってくれる。向かい合わせじゃないと嫌らしく、もぞもぞしているが2人の自己紹介を聞く。
「よ…よろしくお願いします……??え、私警察に突き出されます?」
「?されませんよ??」
「……本当ですか??」
「え、はい。」
良かったぁ~と息を吐く。
「早速本題に入るんですが、……その前に。」
「お姉さんはプランツドールというものを聞いた事ありますか?」
プランツドール。聞いたことがある。なんか……すごい…生きる人形……みたいな……()
「…………まぁ…………はい。」
「間違ってはいません……かな?」
すごい微妙な反応された。空くんと蛍ちゃんに説明を受ける。
まず、プランツドールとは。プランツドール技師が丹精込めて命を吹き込み作るドール。しかもこの子は何十年何百年に1体という希少な子らしい。そしてそのドールが気に入った人間を選んで目を覚ますという。愛情を何よりの栄養とし、1日3回のミルクとたまにの砂糖菓子で生きる。最初は喋れないが、人間の子供と同じで沢山話しかければ言葉を覚えるらしい。
でもプランツドールってお金持ちの人が持ってるイメージだな。
「その……お値段……とか。」
「あー……。」
このくらいですね……とおずおずと計算機を出してくる。……ッスーめっちゃ0が見える。
「この子お迎えしないとどうなるんですか……?」
「もう一度眠らせる事は可能です……が、やはり「あなたがいい」と思い先生も目覚めたので、波長が合う次の人間と会う確率は無に等しいです。」
「眠らせるともう二度と目覚めない……という子も全然居ます。」
「そして、注意点が。1番の栄養の愛情を貰えなくなっても枯れてしまいます。」
「枯れ……??」
「枯れてしまうとドールは目覚めません。……永遠に。」
それって人間でいう死ってこと……?え、そんなん言われたらお迎えするしかなくね??となりローンを組んでお迎えすることにした。
「沢山愛情込めてくださいね。」
と2人ににこやかに言われた。
暫くのミルク砂糖菓子、衣服などをご好意価格でお買い上げして先生を抱っこして家に帰る頃には日が沈んでいた。
「おうち帰ろうか。」
と言うとにこにことして頷く先生。高そうな豪華絢爛な漢服を着ているから汚せない。
――――
家に着き、先生を下ろすと先生はとたとたと玄関を数メートル歩くとまたとたとた戻ってくる。
「おうち探検してきていいよ。」
と言うがフルフル首を振る。一緒に行こうかというと元気にこくりと頷く。基本一緒じゃないと嫌なのかな?
先生の部屋になるであろう部屋に案内する。何も無いけど。
「先生、もしかして一緒に寝たい?」
「(こくん)」
……まぁ、一応ベッド置くか。
「ご飯食べようか。」
「(こく)」