ふる〜てぃ〜ず“いちご”--自信がなかった。
ルビーに護られしフリュイ王国にある女学校、王立ポームム女学院。初等部〜大学部まであるお嬢様学校で、小さなフリュイ王国にずっと昔からある伝統的な女の子たちの花園。そんなポームムに向かって走る、平均的な体つきに、赤い柔らかな髪をポニーテールに結く後ろ姿があった。
「あ、いちごじゃん、どうしたのそんなに慌てて……!?」
「れーちゃんごめん、後でねっっ。」
彼女は高等部2年、赤星いちご。
得意なことは特にない。勉強は好きでやってるし、体を動かすのも好きだ。
でも、人前に出ることだけは小さな頃から嫌いだった。
失敗したらどうしよう。赤面症だから笑われるかもしれない。声も小さいし、喋りも上手くない。だから、人前に出ることだけは嫌いだった。
そんな中で、生徒の模範として次期生徒会長となることが決まった。いちごは1度は断りを入れたものの、
「赤星さんならできる。」
と、宥められてしまう。強く断れない自分にちょっと嫌気がさして落胆する。
そんな時の学園長からの呼び出しだった。
「し、失礼します。高等部2年、赤星いちごです。学院長からのお呼び出しと言うことで来ました。」
「どうぞ。」
学院長と呼ばれる1人の女性。英国淑女と呼ぶに相応しいエレガントなファッションに身を包み、顔はベールで覆われており伺うことはできないが、優しそうな声だといちごはいつも思う。
「私が戦士ってどういうことなのですか?ふる〜てぃ〜ず……って国の伝説の守護者じゃないですか。」
「ええ、そうよ。」
学院長の印が押された手紙。ポストの中に入っていたのだ。魔法もかけられた重要な封筒に入れられて。そこには理事長の元への招待と、戦士となって戦って欲しいとの文が綴られていた。
「それが、私なのですか?」
「このクリスタルが、貴女に反応しているの。」
差し出されたのはハート型に加工がされている透明なクリスタル。
「……綺麗。」
「持ってご覧なさい。」
「えっ……あ、はい。…………わぁっ!」
いちごが手に取ると、クリスタルはいちごの瞳と同じ色に染まり、一層の輝きを帯びる。そして、
「うわっ!?」
いちごの姿が変わった。
「これが証拠よ。ストロベリーの戦士、フラウラ。心配しないで仲間はあと9人なのだけど、難しいわね。」
「私以外にも……いるのですね。」
「ええ。だからこの子達と探して欲しいのよ。」
差し出された箱に学院長が手をかざす。……箱が動いている。
何が出るのか分からず、いちごは身構える。護身の呪文を唱えようか。そう思ったとき、蓋が空いた。
「……魔法兎のホイップとチョコじゃないですか。でも、こんな色でしたっけ?」
「学院長のスティルペースマジックのおかげで自由にお喋りできるようになったの!」
「姉さんはしゃぎすぎや〜。」
「し、喋ってる。」
「この子達が貴女のサポートをするわ。だからお願い。仲間を探し、ルビーを守護する戦士になって欲しいの。」
「えっ、ええええええええ!?」
こうしてふる〜てぃ〜ずとしての赤星いちごの活動が始まった。
--ちょっと、かっこいいかも。
そう感じたけれど蓋をして、使命感の元にちょっとだけ前を向いてみた。
「……できる、かな?ううん、やらなきゃ。」
やっぱり断れなかったけど、やれることはやらないと国が危ないのはわかっている。隣国のルレギュームの攻撃が激しくなっているのだから。
でもまさか、こんなにツラい思いをするなんて思ってなかったの。