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    えくれあ

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    えくれあ

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    ふる〜てぃ〜ず“なす”「まあ程々にね〜、じゃないと疲れちゃうよ?」

     ラベンダーのような髪、眠たげな瞳と、ゆるりとした雰囲気。あふぅ、という欠伸とともにそう言ったのは紫乃なす。齢10歳になる女の子だ。

    「ダメよ!このままじゃオルス学園に相応しいレディになれないのだわ!」
    「んぅ……。でも〜、うーちゃんお疲れに見えるよ〜?」
    「うーちゃん言うな!」

     どうやら、練習漬けの1歳上のチームメイト、白沢うりの心配をしているようだ。なんの練習か?もちろん、ふる〜てぃ〜ずに必要な魔法実技練習……もとい、素敵なレディになるための特訓だ。

    「……だいたい、あんたもあんたよ!私よりも実技できるんだから、もっと本気出しなさいよ!」
    「ん〜、おなすはいいんだよぉ。程々でね。」
    「いっつもそればっかりじゃない!才能あるのに、そんなんじゃ素敵なレディになれないんだから…。」

    (……才能……かぁ。)

     その言葉は聞き飽きたなぁとなすは思う。 “神童” “天才” “紫乃一族の才女”……未就学児の時から散々言われていた。自分で言うのも…とは思うが、なすが何でもできるというのは事実だった。読み書きだって計算だって、なんでも直ぐにこなしてしまう。否、できてしまうのだ。「なんでこんなことができないのだろう?」と同級生に感じることは多々あったし、一流貴族である紫乃家の両親も祖父母だって、信じられないと褒めたたえたものだ。それが嬉しくて何事にも全力で取り組んだ。
     そんなときだった。初等部にあがる少し前、本来習うよりも少し上の魔法の練習をしていた時にそれは起こった。

    「なに、これ。」
    「え?」

     なすが練習していたのは精霊を宿す魔法。自然の中にある…火や水を出現させるときなどに力を借りるのだ。
     その練習中に聞いたのは、家庭教師の先生の戸惑った声……そして、何かが湧き上がってきて燃えるような苦しい感覚。

    「熱い、熱いよ…!苦しいよぉ!!助けてぇぇぇ!!!」

     スティルペースマジックの暴走だった。
     この幼い体では抑えて置けないような魔力を持っていたなすは、少し高度な魔法を使ったことにより触発されてしまった。
     偉い魔法の学者たちが直ぐに来て、なすの魔力を抑えておく処置が施された。力を眠らせておくために魔具を持たせるのだ。でもその魔力はあまりにも強力過ぎた。内に秘めた魔力を眠らせるためには、なす自身も眠らせないといけなかったのだ。

    「おなすのこのお気に入りの枕さん……これじゃないと眠れないの…。」

     この枕……もとい魔具がないと、なすは力を抑えられずに暴走して……文字通り、苦しみで休まらなくなる。
     この出来事がきっかけで、なすは一族から“呪われた眠り姫”と呼ばれ、親ですらも恐れるようになってしまった。家から近いオルス学園入学と共に寮で暮らすようになったのもそのためだった。

    --そっか、おなすが頑張ったら、みんな怖がっていなくなっちゃうんだ。

     だから彼女は齢10という幼い年齢にして決めた。

    「何事も、程々でいいんだよ。じゃないと疲れちゃう。」

     そうすれば、お父様とお母様はまた褒めてくれるかもしれないから。
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