冬の日 冬の匂いがする。
路地裏には枯葉が溜まって、そのうえに血の跡がこびりついていた。
救急車のサイレンが次第に遠くなっていく。野次馬のひとだかりは興奮もさめやらぬように、スーパーの袋をさげた女性が同年輩の女性にあれやこれやと顛末を語っている。すごかったのよ、不良同士の喧嘩でね、どっちも顔がぱんぱんに腫れて血だらけでさァ。きゃーと悲鳴をあげたのはどちらだったか、女性たちはひとしきり噂話に興じたのちじゃあねとなにごともなかったかのように別れていく。
かたわらで三井がへぇと感心したように肩をすくめた。
「最近のやつらは手厚いな、なんかあったらすぐ救急車呼んでもらえるのか」
「ふつうは救急車呼ばれるようなことなんてしないんだよ」
1908