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    ao_nene

    シエジタ中心に文字書いてます
    (シエジタ以外はCP要素なし)

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    ao_nene

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    晴れた日に/シエテ、ジータ、ナルメア(シエジタ前提ですがCP要素は少なめ)

     空は晴天。
     風は清風。
     上々の機嫌で、シエテは草原を往く。
    「ああ、いたいた」
     先に艇を訪ねると、ジータは暇つぶしに鍛錬に行くと言って出たと、面倒見の良いことで評判の操舵士ラカムが教えてくれた。
     彼の言った通り、艇からさほど離れていない所にいたので、すぐに見つけることができた。
     人影が二つ見えたが、それもラカムの情報通りだ。

    「団長ちゃーん!」
     はっきりとその姿を視認できる距離まで近づいて、シエテはいつものように彼女を呼ぶ。
     その声に反応して、ジータがこちらを見た。
     また、隣に一緒にいた薄紫の髪の女性も同じように反応した。
    「やぁ、ちょっと久しぶりになっちゃったね。はいこれ、おみやげ。団長ちゃんの好きな、アレだよ」
     ジータの所まで辿り着いたシエテは、そう言って小さな紙袋を彼女に差し出した。
    「え! ほんとですか!? ありがとうシエテさん!」
     珍しくジータはシエテに素直に礼を言い、花のように愛らしい笑顔を浮かべて紙袋を受け取る。
    「いやーなになに、お礼なんてぜんぜん気にしなくていいからね。俺は団長ちゃんの、その笑顔が見られただけで満足だからさ」
     うんうん、と一人で大きく頷きながら、シエテもご機嫌な調子で笑った。

    「あの……」
     と、それまでそんな二人のやり取りを、隣で見守っていた女性が、遠慮深げにジータに声をかけた。
     薄紫の髪の毛を指先で弄りながら、ジータの方に自分の身を寄せ、彼女の耳元に小さく囁く。
    「この人って、もしかして、十天衆のシエテさん?」
    「そうだよ。あ、そっか、初めましてだよね」
    「う、うん。名前はもちろん知ってたんだけど、会うのは初めて」
    「そっか、じゃぁ紹介するね」
     と、二人の、内緒話にしては声が大きかった会話が聞こえてきたので、シエテは先んじて揚々と自己紹介を始めた。
    「やあ、君は確か、ナルメア、だよね? オクトーの遠縁の子っていう。噂は聞いてるよ。俺は十天衆を束ねる頭目、天星剣王のシエテ。よろしくね!」
     バチっと音がしてきそうなウィンクをしながら、シエテはナルメアに手を差し出し握手を求める。
    「あ、はい! こちらこそよろしくお願いします!」
     ナルメアは慌てて、シエテの手を握った。
    「ああ、ほんとだ。君、強いね」
    「え?」
    「君の得物が剣だったら、是非手合わせをお願いしてたのになぁ、残念」
     きょとんとした顔をするナルメアに、再度、人懐こくウィンクをして、シエテの方から繋がっていた手を放した。
    「シエテさんはどうせ、剣拓取りたいだけでしょ」
    「ああ、バレた?」
    「もう! シエテさんなんかほっといて、ほら、ナルメアさん続きやろ」
     ジータは、ぷいっと後ろを向いて歩き出した。
    「あ、待って、団長ちゃん」
     ナルメアは先にずんずん歩いて行くジータを、小走りで追いかける。

    「え、ちょっと待って! え!?」
     シエテが急に今までの飄々とした調子とは打って変わって、慌てた声を出したので、ジータとナルメアは何事かと驚いて動きを止めた。
    「どうしたんですか?」
     ジータが訊ねると、シエテはさらに焦りのようなものを滲ませて続けた。
    「いや、今、なんて言った?」
    「え……? なんて、って……シエテさんなんかほっといて、って言ったの怒ってるんですか?」
    「いやいや、団長ちゃんじゃなくって、ナルメアの方だよ!」
    「え、私?」
     まさか自分のことだとは思っていなかったナルメアは両手を胸の辺りに置き、不安そうな顔をする。
    「そうそう、君! 今、団長ちゃんのことなんて呼んだ!?」
    「え、え? 団長、ちゃん?」
    「君、団長ちゃんのこと、団長ちゃんって呼んでるの!?」
    「え? はい?」
     ナルメアはシエテの言わんとすることが、正確に掴めず不思議そうな顔をする。
    (ええ、団長ちゃんって呼んでるの俺だけだと思ってたのになー。んんん、この子……侮れないな)
    「シエテさん、なんか、深刻そうな顔してますけど」
    「あーいやいや、別に、ちょっと、ね」 
    「ちょっと?」
    「いや、まぁ、別にね……団長ちゃんって呼んでるの俺だけかなーって思ってたからさ。まぁ、別にいいんだけどね。別にね、うん、ほんと、別にいいんだけどね」
    「なんですか、それ。みんなが私のことなんて呼ぼうが自由じゃないですか」
    「やーほんとその通りなんだけどね……いや、ちょっとなんていうか、ショックだったなぁーって」
    「何がショックなんですか……」
     ジータが呆れたた顔でそう言いながら、小さくため息をつく。
    「ナルメアさん、行こ!」
    「う、うん」
     今度は、ジータはナルメアの手を取り、一緒に歩き出す、筈だったのだが――。

    「あーー!」
     行く手を阻むように、シエテが大声で叫んだ。
    「な、なんなんですか、今度は!?」
     ジータが手に取ったナルメアの手に何気に視線を落とすと、シエテはそこに指輪をみつけたのだった。
    (あれって、久遠の指輪だよねえ!?)
    「シエテさん!?」
     明らかに苛立ちを含んだジータの声音に気づき、シエテは我に返る。
    「いや、あの、えっと、ナルメアは、いつ頃ここにきたの?」
    「え? えーっと、初めて会ったのはもうだいぶ前になるけど、一緒に艇に乗るようになったのは……三日前、かな?」
    「三日!?」
     ナルメアの答えに、シエテは再度驚きの叫びを上げる。
    「えええええ、ちょっと待って、それ、久遠の指輪でしょ? 来てたったの三日でもう指輪もらったの!? 俺だって、貰ったの一年くらい経った後だよ!?」
    「だって、シエテさんが来た頃は、まだ久遠の指輪なかったでしょ」
    「いや、まぁそうだけど……で、でもさ、一番最初にくれたのは俺だもんね! ね! 団長ちゃん! 俺に真っ先にくれたもんね! 俺が初めてだもんね!!」
    「シエテさん……」
     ジータの声が低く落ち着き、加えて何やら鋭利な空気を感じたシエテはその口を閉じ、彼女の次の言葉を待った。
    「鬱陶しい」
    「え?」


    ***


    「団長ちゃん、団長ちゃん」
    「何? ナルメアさん」
     一通りの稽古が終わった後、、ナルメアがジータに小走りで近づいてきた。
    「やっぱりちょっと、可哀想じゃなかったかなぁ、シエテさん」
    「あれくらい言わないと、わかんないよあの人」
    「そうかなぁ」
    「そうそう」
     あの後、シエテは「そっか」と一言だけ残し、ジータとナルメアの元を去った。
     がっくりと肩を落とし、その後ろ姿はナルメアの言う通り「可哀想」な雰囲気を存分に漂わしていたのだったが。
    「でも、びっくりしちゃった。団長ちゃんがあんな風に誰かに怒ったりするなんて、お姉さん想像しなかったな」
    「だって、シエテさんむかつくんだもん」
    「ふふふ、仲いいんだね」
    「えっ!? なんでそうなるの!?」
    「だって、喧嘩するほど仲がいいって言うじゃない?」
    「そんなことない!」
    「わーん、団長ちゃんかわいい」
     ナルメアが突然抱きついてきたので、彼女の甘い香りがジータの鼻先に匂う。
    「お姉さんにできることがあったら、何でも言ってね」
    「だから、なんにもないってばー!」 
     ジータは大きな声で抗議をするが、ナルメアは再度「かわいいー」と、にこにこ笑うのであった。


    ***


    「はぁー」 
     青い空を眺めながら、シエテは一つ溜め息をつく。
     手近の岩に腰を下ろしていた彼の心は、空の澄んだ色に反して、どんよりとしていた。
    「鬱陶しいかぁ……」
     先ほどジータに言われた台詞を反芻して、また大きく息を吐いた。
    (ていうか、団長ちゃん、会う度に俺への風当たりがきつくなってない!? 鬱陶しいって、けっこう言葉強いよね!?)
     と、心の中で抗議をしてみたり。
    「あーあー」
     と、再びシエテが溜め息混じりの声を出した時、背後の空気が変わるのを感じた。
    (あれ? ちょっと予想外かな)
    「シエテさん」
    「わぁ!」
     驚いた風に声を上げて振り返ると、そこにジータが立っていた。
     今日はもう会うことはいなだろうと思っていたが、その予想は外れたみたいだ。

    「団長ちゃん、どうしたの?」
    「ちょっと、付き合ってもらいたいな、と思って」
    「え、何々? お兄さんにできることなら何でも言ってよ!」
    「えっと、この剣……ナルメアさんが来た時に一緒に手に入れて、泡沫夢幻って言うんですけど……ちょっと試したいから、相手してもらえたらなって」
     少し歯切れの悪い調子で、ジータはその手に携えていた剣を、シエテにも見えるように胸の辺りに掲げる。
    (気配の知らないもの持ってると思ったら、そういうことか)
    「ふふふ、わかるよ団長ちゃん。新しい子、手にしたら試したいよね!」
     若干、からかうような含みを持たせたので、怒るかと思ったが、意外にもジータははにかみを乗せて「お願いします」と素直に頭を下げたのだった。
    「よし! やろうやろう! 今すぐやろう!」
     彼女の気が変わらぬうちに、とシエテはすばやく立ち上がって、自分も無駄のない動きで剣を抜いた。

     間合いはまだ遠い。
     その距離は、シエテの足で五歩ほど離れているだろうか。
    「じゃぁ、いきます」
    「いつでもおいで」
     シエテが落ち着いて答えると、一つ分の呼吸をきっちりと置いた後、ジータは地面を蹴って、迷い無く突進してきた。
     瞬間的にほぼ最高点のスピードを出して向かってくるジータに、シエテは思わず目を細めて微笑んでしまう。
     ジータの初手の斬撃が、シエテの胴を目掛けて放たれた。
     振りが大きいので、シエテは彼女の動きを容易く予想し、体をずらしながらジータの剣をめがけて、上から自身の刃を振り落とす。
     鉄のぶつかり合う音と共に、ジータの体が、ぐらりと揺れる。
     しかしながら、体勢を崩しながらもジータは左手をシエテの方に突き出し、短く詠唱を下した。
    「アローレイン!」
     シエテの頭上に数十の青白い矢が突如として顕現し、次の瞬間一斉に彼を目掛けて落下する。
    「エンブレーマ!」
     シエテも詠唱と共に空いた左手を、ジータにではなく、落ちてくる矢に向かって掲げる。
     シエテの掌から現れた光球が矢とぶつかり、一瞬の閃光を放った後に互いに霧散した。
    (いい動きだ)
     アビリティの発動のタイミング、そして次にがら空きになったシエテの胴を再度狙って疾走した斬撃の速さに、彼は満足げな感想を抱く。
     しかし、残念ながらジータの打撃は弱い。
     特に強化のかかっていない彼女の一撃ならば、受けきれる。
     シエテは両手で剣を握り、切っ先を下に向け、ジータの剣を受けた。
     そしてそのまま力任せに、ジータを押しやる。
    「うっ……!」
     ジータはシエテの力に負けて後ろによろけ、倒れこそはしなかったが、そのまましゃがみ込んでしまった。
     つかさず、シエテはジータの頭上から剣を振り下ろす。 
     しかし、ジータはしゃがんだ力を逆に利用して、低い姿勢のままシエテの横をすり抜けた。
     そして、シエテの後ろに回り込んだ形になったジータは、軸足に力を集中させ、勢いのついた自身をなんとかその場に留まらさせ、次の動きに移る。

    (あ、……)
     それはシエテにとっては、ひさしぶりな感覚だったかもしれない。
     刹那、後ろを取られたことによる恐怖心が、背筋を奔った。
     しかし、シエテの中で、その恐怖心はすぐに昂揚感へと昇華される。
     血が、躍る。
     全身を巡る血が、躍るのを感じる。
     それは疼きとなって、心に伝わり、腕に伝わり、そして彼の剣へと伝わった。
    「いいねぇ! 団長ちゃん!」
     次に発したその声は、歓喜の色を帯びていた。
     シエテも軸足に力を込め、後ろを振り向く体の回転に乗せて渾身の斬撃を放つ。
     振り返ったその時に、ジータの相貌を捉え、さらに彼の血は躍った。
     が、それも一瞬。
    「アーマーブレイク」
     ジータの声が、静かに落ちる。
    「くっ」
     完全に不意を突かれたシエテは、足元に放たれたアビリティにより、動きが鈍る。
     その鈍りは、ほんのわずかではあったが、ジータを勢いづかせるには十分だった。
    「はああああああああ!」
     覇気を込めた咆哮と共に、ジータはシエテの胴を穿つがため、自身の剣を突き出した――。
    「おっと!」
     ところがシエテは、その場にそぐわぬ軽い声を出しながら、ぎりぎりまで体をのけぞらせて、その突きを避けた。
     ジータの剣が、無情にも彼の体の上を通りこしていく。
    「あっ!」
     完全に全体重をかけていたジータは、シエテに避けられたことにより、そのまま前に転がるように崩れ落ちた。

     そこで、緊張が一気に解ける。
    「やーまいった、まいった、団長ちゃん、また強くなったねー!」
    「うううーー」
     ジータは、恨めしそうな目でシエテを睨む。
    「絶対、勝てたと思ったのにー!」
    「いやいや、今のは団長ちゃんの勝ちでしょ」
    「最後シエテさん避けたじゃないですか!」
    「避けてなかったら、俺、けっこうやばいことになってたと思うんだけど……」
     シエテは、少しひきつった笑いを零す。
    「あー! 悔しい! 次こそは、絶対、絶対叩き込む!」
     ジータはシエテの声も聞こえていない風で、両手を震わしながら剣を握りしめていた。
    「ははは、死なない程度でよろしくね……」
     篭った熱を吐き出すように、ふぅ、っと一つ息を吐き、シエテが空を仰ぐと、そこには変わらず澄んだ青が広がっていて。
    「じゃぁ、また、次に晴れた日にでもやろうか」
    「私は今からでもいいですよ?」
     不敵に笑いながらジータはそう言い、立ち上がる。
    「ん? 団長ちゃん、今日はやけに機嫌がいいね」
    「おみやげ貰ったから」
    「はは、なるほど。じゃぁ、次も買ってこようかな」
     そう言いながら、シエテは纏っていた十天衆の証である白い外套を脱ぎ捨てた。
     その白が、風にたなびきながら草むらの上に落ちると同時に、開戦の号砲の如く高らかに彼は告げる。
    「じゃぁいこうか、二回戦!」
    シエテは逸る気持ちを抑えることができず、今度は自分の方から先にジータを目がけその体を飛ばしたのだった。
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    Replies from the creator

    ao_nene

    DONEa little time with you/シエジタ
    朝チュン…っぽいもの
     寝返りを打つと、冷たい空気が肌を撫でた。
     ジータは意図せず、瞳を薄く開ける。
     部屋はまだ夜の様子を漂わせていたが、目に滲んできた色は闇そのものではなく。
     まだその彩度は低かったが、ほんのりと明るみを帯びていた。
     もう間もなく、夜が明けるのかもしれない。
     そう思いながらも、ジータは意識にまだこびりつく眠気に勝てず、上掛け用のシーツをを軽くひっぱり、そのままもう一度目を閉じた。

     が、その時――。

    「ん……」
     まるで彼女を引き留めるように、掠れた吐息が漏れた。
     おかげでジータは、今度ははっきりとその目を開けてしまう。
    (あ、そっか……)
     眼前にシエテの顔を確認し、そうだったとジータは思い出した。
     不思議なことに、気づくとその体温が、途端に甘味を帯びてくる。
     終わった後、二人ともそのまま眠りに落ちてしまったため、衣服をつけていない。
     肌から直接感じる熱は、しっとりと心地良い。
     その誘惑に抗えず、ジータが彼の胸の辺りに頬を摺り寄せると、シエテの腕が緩く彼女を拘束した。

    「ん~、今、何時?」
     シエテが、ひどく気の抜けた声で訊ねる。
     起こしてしまったのを少し悪く 1809

    ao_nene

    DONE約定/シエテとウーノの普段の会話ってこんな感じかなぁという妄想 ごくありふれた、一軒家のこじんまりとした宿屋だった。
     内装はそれなりの歴史を思わせるが、古びたといったところまでの印象は無く、落ち着いた雰囲気を漂わせている。
     一階が受付兼食堂、二階が寝室と云う造りもごく一般的なものだ。
     しかし、六卓ほどあるテーブルには全て清潔なクロスが掛けられており、そういった心配りが好きなシエテは、ウーノとの待ち合わせにはここをよく指定していた。
     今日も、そのウーノとの待ち合わせだった。
     いや、正確に言うと待ち合わせの日は昨日だったのだが。
     数週間前に受けた依頼を、シエテとウーノでそれぞれ手分けをして進めていた。
     最初からそれなりの時間を有することは分かっていたので、予め落ち合う日時を決め、互いの進捗や情報交換をすることにした。
     その、予め決めていた日が昨日だったのだが。
     とある事情で、シエテは来れなかった。
     三日までは相手が来なくても待つ、と、これも予め決めていたので、一日遅れて今日ここに来ているシエテは、さほど咎められる必要もないと言ってもいいだろう。
     が、シエテはこれでも期日や時刻には几帳面で、今までウーノとのこの類の待ち合わせに遅れ 2574

    ao_nene

    DONE晴れた日に/シエテ、ジータ、ナルメア(シエジタ前提ですがCP要素は少なめ) 空は晴天。
     風は清風。
     上々の機嫌で、シエテは草原を往く。
    「ああ、いたいた」
     先に艇を訪ねると、ジータは暇つぶしに鍛錬に行くと言って出たと、面倒見の良いことで評判の操舵士ラカムが教えてくれた。
     彼の言った通り、艇からさほど離れていない所にいたので、すぐに見つけることができた。
     人影が二つ見えたが、それもラカムの情報通りだ。

    「団長ちゃーん!」
     はっきりとその姿を視認できる距離まで近づいて、シエテはいつものように彼女を呼ぶ。
     その声に反応して、ジータがこちらを見た。
     また、隣に一緒にいた薄紫の髪の女性も同じように反応した。
    「やぁ、ちょっと久しぶりになっちゃったね。はいこれ、おみやげ。団長ちゃんの好きな、アレだよ」
     ジータの所まで辿り着いたシエテは、そう言って小さな紙袋を彼女に差し出した。
    「え! ほんとですか!? ありがとうシエテさん!」
     珍しくジータはシエテに素直に礼を言い、花のように愛らしい笑顔を浮かべて紙袋を受け取る。
    「いやーなになに、お礼なんてぜんぜん気にしなくていいからね。俺は団長ちゃんの、その笑顔が見られただけで満足だからさ」
     うんうん、と一人 5777

    ao_nene

    DONE少女と剣王/シエテ
    シエテのエピの「少年と剣王」が少女だったら、どうだっただろうなという妄想
    ※モブの女の子が出てきます めっちゃ喋ってます
    ※時系列はこくしんイベの少し前くらい
    まだ、陽が昇らないうちに家を出た。
    あれからどれくらいの時間が経ったのだろうか。
     頭の片すみでぼんやりとそんなことを考えながら、少女は何度目かの鍬を振り下ろす。
     鉄が地面を打つと、痺れるような痛みが手に響いた。
    (ちっ)
     心の中で思わず舌打ちしてしまうくらい、痛みの割に得られる成果は乏しい。
     足元にはまだ、せいぜい犬一匹分くらいの窪みができたくらいだった――。 
     街外れにある森の、奥深く。
     周りを占める大樹のおかげで、空からの陽は遮られ空気は冷えている。
     にもかかわらず、頭をすっぽりと覆っているくすんだ色のしたフードから辛うじて覗く少女の額には、じんわりと汗がにじんでいる。
    「こんなんじゃ、今日中に終わらないかもな……」 
     彼女の口から零れた声音は、ひどく頼りない。
     気休めに上を見ても、そこに空はない。
     光の届かないところが良い、と選んだのは他ならぬ彼女自身だった。
    「はぁ」
     黒々と生い茂る葉を見つめながら大きく一度息を吐くと、すっかり力が抜けてしまった。
     少女は持っていた鍬を地面に放り投げ、その場にしゃがみこもうとした、その時――。
    「こんなところで何 7752