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    amaama1205

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    amaama1205

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    あめさん(@nemui_365_day)さんからリクエストいただいた《無印軸の両片思いアスキラ》、メンデル後あたりの設定です。甘々イチャイチャエチエチでもほろ苦く切ない系でもって言われたらもれなくほろ苦くなっちゃいましたシリアス芸人ですいません…
    (多分このあと最終回のアスランが迎えにきたところでアスランが告白するはずだけど私が書くと何故かキラが失踪しそうだったのでやめました笑)

    無印両片思いアスキラいつか戦争が終わったら、という夢を見ていた。全て終わったら友人達と共に戦艦を降りて学生に戻って、ゼミの課題がどこまで進んだとか、今日のランチは何にしようとか、そういう他愛のない会話だけをして一日を過ごす日々。軍の機密に触れてしまった身でどこまでの自由が許されるかは分からないけれど、それなりの功績が認められれば恩赦があるかもしれない。戦争が終わったとしたら恐らくすぐにとはいかずとも国交は正常化に向けて動き出してくれるはずで、そうなればオーブとプラント間の行き来もできる。舞い散る桜の花吹雪の中で交わした別離の苦しみなど二度と味わうことはない。会いたい時に彼に会える、そういう幸せが訪れる夢だった。
    今は誰もいない、エターナルの展望デッキ。ここで数時間前に見た彼の姿を思い出し、キラの目の奥がじわりと熱を帯びる。近頃は補給や打ち合わせと称してよくエターナルに現れる、つい最近自らの双子であると判明したばかりの女性に向けられた、彼の柔らな表情。気心が知れた相手にだけ向けられていたはずのそれがもう自分だけのものではないのだと思い知らされた気分だった。
    なんて汚い気持ちなんだろう、とキラは肩を落とす。彼女……カガリは、彼の事が好きなのだろうと見ていて思う。そうでなかったとしても時間の問題で、きっと彼もカガリの事を。そこまで考えたところでぎゅう、と胸の辺りが締め付けられるように痛んで、キラは浅く息を吐いた。何も悪い話では無い。それどころか喜ぶべき事なのだろうと頭では理解している。大切な親友と、これから実感を得ると共に大切になっていくであろう肉親が仲睦まじく過ごしている。相当気が早い話ではあるが将来的に二人が結ばれるような事があるとすれば家族としての縁も出来る。けれどそれに心と体がどうにもそれに追いついてこないのだ。
    妙に息苦しくて眩暈がする。デッキの手すりに添えていた手から力が抜けて、無重力下の体が寄る辺を無くして宙に浮いた。耳から音が遠のいて、視界からは徐々に色が消えていく。落ちる、と直感的に意識の消失を悟ったものの、メンデルでの一件以降あまり眠れていなかったことを考えればこんな形でも眠れるのはいいかもしれないとキラはその不快感に身を任せることにした。
    何も考えずにただ好きだと伝えることが出来たなら、どれほど良かっただろうか。ぐちゃぐちゃな感情と体を襲う不快感から溢れた涙が、粒のような形状を保ったままぼやけた視界にふわふわと漂っている。それを見つめて、キラはゆっくりと瞼を下そうとした。
    『……ラ』
    音が消えたと思っていた耳に、誰かの声が届く。誰か、ではない。それはずっと聞きたかった声だった。鼓膜を震わせるそれに、キラは恐る恐る殆ど閉じていた瞼を押し上げた。途端、手を掴まれ強い力で引き寄せられる。
    「キラ!」
    「……アス、ラン?」
    「どうした、胸が痛むのか!?」
    焦った様子のアスランの視線を目で追ったキラは、自身が軍服の胸元が皺になる程強く握りしめていたことに気付いてその力を緩めた。彼に掴まれた腕からじわりと熱が伝わって、そこで初めてキラは体が冷えていた事も知る。目も耳も正常に戻りいつのまにか息苦しさもない。離れていく何かを繋ぎ止められたような、そんな心地だった。
    「……だい、じょうぶ……何でもないよ」
    「何でもないわけないだろ!すぐにメディカルチェックを……!」
    そう言ってアスランはキラの体を抱えてデッキを出ようとする。そこまでの体格差は無いというのにそうされるのが無性に恥ずかしくなって、キラは慌ててアスランの体を手で押し返した。
    「ほ、本当に大丈夫だって!その……少し、疲れちゃっただけ」
    気にしないで、と声をかけてもアスランの表情は優れない。相変わらず心配性だな、と思うと泣きたくなる程に嬉しくなって、キラはそれを堪えようと唇を噛んだ。今はまだ、彼がここにいる。例え殺し合っても消すことが出来なかった感情が溢れてしまいそうだった。またじわりと浮いた涙を見てアスランは眉尻を下げて指の腹で拭った。
    「泣く程辛いんじゃないのか?そうじゃなくてもお前、最近メディカルチェック受けてないだろ。この前だって倒れたばかりなのに」
    「だって、元気だし」
    「全く説得力がない顔色で何言ってるんだ」
    「……本当に、大丈夫なんだ」
    僕は普通じゃないから、と言いかけてキラは慌てて口を噤んだ。メンデルで知る事となった出自の真実はまだ一部の人間しか知り得ない。その場にいたムウ・ラ・フラガと彼の報告を受けたマリュー・ラミアス。そしてキラ自身が一人では抱え切れずに漏らしてしまったラクス・クライン。いずれはアスランとカガリにも打ち明けなければならないと分かっていながら、キラはそれを先延ばしにしている。しかしアスランは薄々勘付いていて、メディカルチェックを避けている事やこの不調もそのせいだと確信を持っているようだった。
    「メンデルでの事、俺には教えてくれないのか?」
    互いの仲間を殺して、憎しみあって、死闘を繰り広げて、それでも今は互いの手を取って同じものを見ていられる事が嬉しい。反面、もし真実を知った彼が再び離れてしまったら。キラはそれが怖くて堪らなかった。人間はどうしたって異質なものを厭う。ナチュラルとコーディネイターがそうであったように、己と違うものから目を背けようとする。人口子宮を用いて造られた、最高のコーディネイター。アスランはそうではないと信じているけれど、そうでなかった時にきっと心は耐えられない。
    キラの無言を肯定と受け取ったのだろう、アスランは声を震わせながら呻いた。
    「……俺にも、言えない事なのか」
    「君には、一番言いたくない……かな」
    「……ラクスには、言えるのに?」
    「それ、は」
    「……っ、ごめん、キラを責めたいわけじゃないんだ」
    アスランが苦しげに顔を歪めて、それを片手で覆い隠した。幼い頃から変わらず彼は優しい。それに比べて僕は、とキラは気持ちが沈んでいく。
    「分かってる……でも、ちゃんと言うから。もう少し待ってほしいんだ」
    「……分かった、待つよ」
    本当に伝えたい言葉は、そんなことでは無い。君が好きだと。君がいないと寂しいのだと。もう離れたくないのだと。純粋な言葉だけを吐けたらどんなに良かっただろう。無邪気に大好きだと言えていた頃に戻れたらいいのにと思わずにはいられなかった。
    心の何処かで何かが、いっそ再会しなければ諦められたのに、と囁いている。そうすれば淡い恋心はいつか昇華され、汚れた感情を抱かずにいられたかもしれない。
    少しの沈黙の後、キラの腕を掴んだままだったアスランの手の力が強まった。
    「ねぇ……手、痛いよ」
    「怖いんだ」
    「アスラン……?」
    「キラが、何処か遠くに行ってしまいそうな気がして」
    「今更どこに行くっていうの……どこにも行けなくて、ずっとここにいるのに」
    戦いたくないと叫びながら多くの命を奪った。何処にも戻れず、今更逃げる事も叶わない。宇宙から地球へ、そしてまた宇宙へ。戦火と共に随分遠くまで来てしまった。展望デッキから見える風景には標も果ても無く、何処へ向かえばいいのかさえ分からない。そういう漠然とした不安を、アスランに気取られてしまっているのかもしれないとキラはアスランの視線から逃れるように目線を下へと流した。
    「キラ」
    「……うん?」
    「俺も、お前に言いたい事があるんだ」
    「なに?」
    「全部終わったら、言うから……それまで待っていてほしい」
    「終わる、かな……」
    「必ず終わらせる……だから、何処にも行くな」
    「うん……分かった、約束する」
    これくらいなら許されるだろうか、とキラは自らの額をアスランの額にこつりと合わせる。幼い頃、よくこうやって身を寄せ合って額を合わせて、次の日はこうして遊ぼうと約束を交わして眠った。突然のことに驚いたらしいアスランは、少し顔を赤らめながらもキラの体を抱き寄せる。
    「一緒に、終わらせよう……アスラン」
    「ああ」
    彼がそばにいるだけで無重力の浮遊感すらまるで揺籠のような安心感へと変わってしまう。心地いい微睡みに瞼が重くなって、けれど眠ってしまうのも惜しいような気がして。今だけはもう少しこのままでいさせてほしいと願いながら、キラは寄り添ってくれる温もりに身を委ねた。
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    amaama1205

    MOURNING旧題:ミレニアム女子会で針の筵にされるズゴッk…アスランの話

    アス→→→→→←←←←←←←キラ
    TS准将+体だけの関係をだらだらと続けている准将をどうにかしないといけないという使命感に目覚めるルナマリア、アグネス、ヒルダ計4名の女子会という謎軸。
    (准将は最高のコーディネイターたる遺伝子を遺したくないという設定ですが作者の私は准将妊娠しろって思ってます)
    一佐と准将いっそ早く結婚しろ「隊長ってアスランと結婚しないんですか?」
    意を決したように切り出したルナマリアの言葉に、キラはことりと首を傾げた。世界平和監視機構コンパスの主力艦ミレニアム。クルーが休憩に使用するラウンジに集まっていたのは女性モビルスーツパイロット達だった。准将、総指揮官、そしてヤマト隊隊長であるキラと、ヤマト隊所属のルナマリア、アグネス。そしてハーケン隊の紅一点ヒルダ。定期的に女子会と称して開催されるその集まりは元々ワーカホリックであるキラを諌める為にコンパス総裁ラクス・クラインが指示して定例化させたものだ。議題は持ち回り制で、プラントに新しくオープンしたカフェやら新発売のコスメの使用感やらと様々だが、この日はどうやら色恋らしい、とキラはコーヒーの注がれたマグカップを傾けながら問い返す。
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    amaama1205

    DONEあめさん(@nemui_365_day)さんからリクエストいただいた《無印軸の両片思いアスキラ》、メンデル後あたりの設定です。甘々イチャイチャエチエチでもほろ苦く切ない系でもって言われたらもれなくほろ苦くなっちゃいましたシリアス芸人ですいません…
    (多分このあと最終回のアスランが迎えにきたところでアスランが告白するはずだけど私が書くと何故かキラが失踪しそうだったのでやめました笑)
    無印両片思いアスキラいつか戦争が終わったら、という夢を見ていた。全て終わったら友人達と共に戦艦を降りて学生に戻って、ゼミの課題がどこまで進んだとか、今日のランチは何にしようとか、そういう他愛のない会話だけをして一日を過ごす日々。軍の機密に触れてしまった身でどこまでの自由が許されるかは分からないけれど、それなりの功績が認められれば恩赦があるかもしれない。戦争が終わったとしたら恐らくすぐにとはいかずとも国交は正常化に向けて動き出してくれるはずで、そうなればオーブとプラント間の行き来もできる。舞い散る桜の花吹雪の中で交わした別離の苦しみなど二度と味わうことはない。会いたい時に彼に会える、そういう幸せが訪れる夢だった。
    今は誰もいない、エターナルの展望デッキ。ここで数時間前に見た彼の姿を思い出し、キラの目の奥がじわりと熱を帯びる。近頃は補給や打ち合わせと称してよくエターナルに現れる、つい最近自らの双子であると判明したばかりの女性に向けられた、彼の柔らな表情。気心が知れた相手にだけ向けられていたはずのそれがもう自分だけのものではないのだと思い知らされた気分だった。
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