きみしにたまふことなかれ忍術学園を卒業後、家業を継いで炭屋で働きながら、桂男をしている庄左ヱ門。一年は組の友人たちを始め、忍術学園で知り合った先輩や後輩も時折遊びに来ていた。
そんなある日、とある女が訪ねてくる。つややかな黒髪で体の線が細く、はっきりした目鼻立ちの女だ。特別美人という訳ではないかもしれないが、気品ある美しい女だった。
「少し炭をいただきたいのですが。」
とかわいらしい声がする。その女を見て庄左ヱ門は唖然としてて何も言えず、じっと見つめるばかりだ。
「兄上、兄上!どうされたのです?」
「あ、あぁ、ごめんね庄二郎。ちょっと……その。」
庄左ヱ門は弟に呼ばれてはっと気づいて謝った後、少しばかり頬を赤くして
「見惚れてしまって。」
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