俺と好いしたい あぁ、ようやく!ようやく世一に会える。10歳の頃に会ったっきり会うことが叶わなかった俺の運命!これで側にいることができる。そう思えば、実の親から縁を切られようが、一人で生きていくことが確定しようがどうでもよかった。親はそんな俺を許さなかったみたいで、ありとあらゆる手を使って恋人をつくらせようとした。女や男、本当に色んな人が来た。どこからか入ってきて夜這いされたり、睡眠薬を飲ませられたりしたけれど、それを躱し続けて俺のところへ二度とこないようにと心を折ってやった。そして、数年間ずっと続いていたものも遂に終わりを迎えた。意見を変えようとしない俺にまとわりついたものは全ていなくなっていったし、周りの意見など別にどうでもよかった。世一さえいれば本当に何もかもどうでもよかったんだ。ここまでくるまでに、何もかもを終わらせるために、長い月日がかかってしまったのが心残りだが、これであの時我慢を強いられていた俺が救われると思えば幼い俺も許してくれるだろう。
そうして俺は、飛行機のチケットを取って、荷物をまとめてなにもかもを捨てるように家を飛び出していった。今までのことがまるで嘘みたいに心は軽かった。ミヒャエルの親は世一のことを酷く嫌った。一度しか会っていないのに酷い言われようだ。世一が日本人だから?年が離れているから?俺が一目惚れしたから?恐らく、それら全てであるのは見て分かった。日本に観光で行ったことを後悔しているようだったのを鈍感でも伝わるように、分かりやすそうにしていた。この姿で初めて会ったときは子供だったから端から見れば、変わったこだと思われたのだろう。世間体を大事にする2人にはそれが気にくわなかった。
「だめよ、あなたにはもっといい人がいるわ」
うるさい
「私の方がその初恋の子よりも良いに決まってる」
黙れ
「もう諦めたら?」
俺がそう簡単に諦めるとでも?
「駄目だ」
お前らは俺の何を知ってるんだ。何をいっても聞きやしなかった。そんなことだろうと知っていたから、分かってもらうつもりなんて端からなかった。
しつこいぐらいに追い詰めようとしてきたが、昔の、俺が猫だった頃、俺と世一が幸せだった頃を思い出しては奮い立たせてきた。あのときは言葉も通じなかったけど今なら、今世なら愛していると、大好きだとありがとうと伝えることもできるのだ。そんな幸運をそう易々と蹴るわけにはいかない。一人、置いていって逝ってしまったことを悔やんでるからその分、言葉で伝えたいのだ。
そうして、たどり着いた先には見覚えのある一軒家だった。そこに飾られている表札には、潔と書かれていた。よかった。住所が変わったらどうしようかと思っていたが、そこは心配しなくても良さそうだった。
手慣れた手付きでインターホンを鳴らす。初めてこの音を聞いたときはビックリしたが、それもいまでは懐かしいものだった。人の気配はするからいると思うけれど、あまりにも静かだからかなんだか嫌な予感がする。俺のこういった予感はよく当たる。もちろん外れるときもあるがほとんどそうはならない。
「世一?入るぞ」
声をかけてから覚悟を決めて見慣れた玄関へ入り込む。外観から分からなかったが、懐かしさで胸がいっぱいだった。日本のことは散々世一から学んできたし、自分で調べたりしたから問題はないだろう。靴を脱いで世一がいるであろう場所へと向かった。インターホン越しに声が聞こえたからいるはずだ。リビングや台所には目もくれず、走りたい気持ちを抑えながら歩いていく。
到着した、あるひと部屋の閉まっていたドアを開くそこには、