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    棚ca

    @CRtanaaaca

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    寝る前に鯉月のお話をしましょうか

    鯉月語り部 ママァ最終回後のベタな鯉月の話して〜!

     はいはい、仕方ないわね。時代は明治が終わる頃、世界は最悪の戦争へと向かう中でも、真心を持って右腕を務める月島を傍らに、真っ直ぐで芯の通った若き将校はどんどん立派に成長をしていった。その姿はまさに龍にならんとする鯉のようだったのだけれども、不思議と月島は鯉登に置いていかれるような、あるいは鯉登が遠い存在になってしまうような気はしなかったの。それは、日々が目まぐるしくて、そんな不安を抱える余裕がなかったからかもしれないし、鯉登が時折そっと後ろを振り返って月島がそこにいるか、確認していたからかもしれない。それに出世していく鯉登がより多くの人から慕われるようになっていく事を月島はとても誇りに思っていたのよね。だから、鯉登の結婚の話が出てきた時も「確かに、良い頃合いだろう」としか思わなかった。鯉登はその時には中尉になっていて、まだまだ昇格するであろうことが明白だったし、家族を持つべきだというのは至極当然の話だったから。
     ただね、鯉登はそれこそ「優良物件」で引く手あまただったから、嫁を貰うそうだなんて話が出た途端にワッと色んなところから連絡が押し寄せてきちゃってもう大変だったの。多くのお見合いを”捌く”状態になった。洋食に辟易した鯉登が帝国ホテルに一汁一菜を要求したり、相手の女の人に何故か月島が引っぱたかれたりのすったもんだの末に、ようやく一人、婚約をする人を見つけた。同じ薩摩出身の、お武家の娘さんよ。真っ白でふかふかしたほっぺがとても愛嬌のある子だった。
     常に目の前に問題が山積みだった月島はホッとした。また一つ、課題をクリアした、って。対して鯉登は、まるで実感が湧かないようでぼんやりとしていたの。結婚なんて、こんなもんだろうと思っていたはずなのに、酷く寂しい気持ちになることがあった。相手のことは気に入っているし、何も申し分なく思っていたから、鯉登は余計弱ってしまったわ。でも、それを月島に打ち明けられなかった。いつもは何でもとりあえず月島を呼んでいたのに……。ただ、月島も鯉登の様子がおかしいことには当然気づいていたから、心配した。時期的にも結婚のことだろうと検討がついていたから、月島はしばらくそっとしておいた。だって当人の問題だし、何より生涯孤独の月島に有益な助言ができるわけがないと思っていたから。
     でも知らんぷりもできず、ついじっと様子を窺っていたらある時、逆に鯉登から、どうした、月島? って聞かれちゃったのね。いやどうしたってこちらの台詞だが……と思いながらも、慎重に、いえ、不躾に見てしまっていましたかね、失礼したしました。しかし中尉殿? 浮かない顔をしているように見えるのです。私の気のせいでしょうか? と言った。鯉登はやっぱり浮かない顔で、ただ、言葉を見つけられずに口元をムニャムニャとさせた。否定もしたくないけれども言葉が見つけられない……。

    「月島は私に結婚してほしいか?」

     突拍子のない質問が鯉登の口から漏れ出た。月島も、それを口にした鯉登も想定外の言葉に心が揺すられたわ。動揺したままつい月島は言ってしまったの。いいえ、とね。

    「いいえ?」

     鯉登は目を見張ったまま聞き返した。

    「いえ! いいえというのは、いえ……違います」

     歯切れ悪く月島は言う。

    「貴方は家庭を持つべきです」
    「そんなことは分かっている」
    「……したくないんですか?」
    「したくない」

     初めてハッキリとした口調で鯉登は言った。

    「したくないが……したくない理由がない」
    「そんなでは男がすたりますよ、鯉登中尉。不安なのは相手方も同じなのですから、貴方が度量の大きさを見せなければ」

     宥める口調で月島は一般論を語り始めていたけど、鯉登は聞き流したわ。鯉登は既に気づいてしまっていたの、月島が思わず「いいえ」と答えたその瞬間に、自分の熱い気持ちに。
     後日、婚約は破棄されたわ。当然、とんでもないことよ。鯉登は土下座までしたらしいわ。でも、相手のお嬢さんは穏やかだったそうよ。きっと心のどこかで分かっていたんでしょうね、鯉登とは結ばれないことを。烈火のごとく怒り狂ったのは月島よ。自分を理由に婚約を破棄したのであれば殺してやるというような勢いだった。対して鯉登は平然としていた。だって鯉登は既に悩みに悩み抜いて、答えを出した後だったから。

    「生涯私の隣にいるのはお前だ」

     そう鯉登はキッパリと言い放った。

    「それと家庭は別でしょう?!」
    「そうかもな。だが私は違う。私は人生を日本のため、軍のため、そして部下達のために捧げるつもりだ。他の居場所などいらない」
    「我々のためと仰るのであれば尚更、家を守ってください!」
    「家門などどうにでもなる。分家もいるし、養子だってとれる。血に拘る理由などない……お前は知っているだろう?」
    「私と貴方では、何もかも違います……全て挙げていけば、日が暮れてしまうほどに」
    「構わないぞ、私の時間も、お前のものだ」
    「は……?」
    「ひた走る私をお前は生涯支えてくれるだろう? 既に月島は私にとってなくてはならない存在だ……私の人生もお前にやる。お前が私にくれているように。……お前にしか、寄越したくないんだ……」
    「そんな、私にはとても……頂くわけにはいきません」
    「受け取ってくれ、月島。……頼む、上官命令だなんて言わせないでくれ……」
     そして鯉登は月島をグイと引き寄せて……………………あら、もう寝ちゃったのね。ふふ……おやすみ(明かりをそっと消す)
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