2022/4/1月島軍曹殿

　窓の外を眺めれば桜の花びらが風に乗り、春の訪れを身近に感じております。桜舞う一方でまだ寒い日がある中、お障りなくお過ごしでいらっしゃいますか。お障りまくりですよね、すみません、体に色々刺さっていて全身から血を流している人にかける言葉を私は知りません。

　さて、本日は月島軍曹殿のお誕生日です。当時は祝う慣習はなかったようですが、是非お祝い申し上げさせていただくのと共に、軍曹殿の素晴らしい活躍について申し伝えたく、手紙をしたためています。

　月島軍曹殿は屈強かつ冷静沈着、加えて露語が堪能でおられる頭脳明晰さも持ち合わせています。鶴見中尉殿のため大いに役立ったことは言うまでもありません。生真面目で常に真っ直ぐな姿勢も、時には軍曹殿自身を傷つけることがありますが、それを含めて魅力だと思っています。

　尽くすばかりで、自身のことを大事になさらない軍曹殿のことが心配でたまりません。白米がお好きなのであれば、明太子と共に腹一杯召し上がって欲しいですし、長風呂を楽しまれるのであればご自身のペースで心ゆくまで浸かってほしい、そんなことを日々祈っています。

　「自分の役目・役割」「命の使い道」──天から役目なしに降ろされたものはひとつもない、巻頭に引用された言葉の通り、これらは作中でも大切にされている考えとみられます。月島軍曹殿の役割は何でしょうか？　私の情緒を乱すこと以外で、です。パッと浮かぶのは鯉登少尉のことです。彼の作中での成長は目覚ましく、それに月島軍曹殿が関与していないというのは苦しい主張になることでしょう。しかし、では月島軍曹は実際何をしたのか？　という質問になると、明瞭な解答ができないのも事実です。私が思うに、月島軍曹殿は常に「与えられた役割を」「生真面目かつ真っ直ぐに」遂行していたのではないでしょうか。その結果が軍曹という現在の地位であり、新米将校含む上官に忠義を尽くす経験豊富な古参兵の姿なのでしょう。役割をこなす月島軍曹殿の姿に鯉登少尉は上官としての器に目覚めることができたのではないでしょうか。そして、月島軍曹殿自身にその素質はあったうえで、それを最大限に伸ばしたのは鶴見中尉殿だと思っています。
えっちですね。

　そんな真心込めて仕える上官二人にそれぞれ殺意を向けたことがある事実も、とても好きです。強く、厳しく、真面目な貴方がただ機械的に動いているのではなく、甘い嘘で埋めたボロボロの心から血を流しながら過ごしているのだと思うと、それでも「人間として」生きているのだと思うと、その屈強な身体と精神に抱えた「脆さ」に愛おしさを感じます。

　また、外見に関しても「こうでなければ月島軍曹殿ではない！」と思っております。一番好きなのは全身のフォルムです。軍帽をしっかり被っていて目元が半分隠れる時があるところ、バキバキの肉体をフード付きのひざ丈コートで覆っているところ、基本着崩すことのない軍服、すけべすぎる腹の傷、ルーズソックスのような脚絆、全身好きです。無表情キャラの癖に（故に、なのでしょうか）あな救やハイライトで繰り出された顔面は強烈で、グッズでデフォルメ化される時は大体面白い顔になるという面も大好きです。

　以上の通り、月島軍曹殿のことを深くお慕い申し上げていますが、もう過去の回想とエピローグ以外の出番のないことを祈っております。理由は言わずもなです。正直、鶴見中尉殿と鯉登少尉との三つ巴で一地獄あるかと危惧していましたが、そこは免れて少し安心いたしました。何よりも今日という日を月島軍曹殿がご存命のまま迎えられたことを幸せに思います。どうか、幸せになってください。どのようにして、というのは分かりません。正直、月島軍曹殿の生き延びた先での幸せは私には想像ができません。その上でも、生きてほしい。この辺は野田先生の考えと想いにかかっていると思います。

　少し長くなってしまいましたが、私が伝えたかったことは──月島軍曹殿お誕生日おめでとうございます！　大好きです。益々の御活躍は無理にしなくて大丈夫です、早く元気な姿と、そして欲を申せば満面の笑顔をお見せいただくことができれば幸甚にございます──です。

　それでは、心より親愛と尊敬を込めて、お祝いとさせていただきます。

疲れたOLオタク
棚ca