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    86mayuri

    @86mayuri

    修帝。小説中心。稀に絵。
    フォロワー限定な物は短文のお遊びとかメモ感覚で使ったり原作から遠く離れるただのネタなのであんまり幅広く曝していないだけです。
    長編小説もここには一部の短文しか載せないので全文はpixivにまとめています。出来に拘らず思いつくままネタ中心に遊びで載せています。

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    86mayuri

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    体育教師の阿修羅×保健室の先生の帝釈天という前回テーマをお借りして書いた話の続き。高校の時の回想シーンなども。
    ゆるめの現パロなので会話多めの簡易文で内容がわかればというお遊び文です。

    ※阿修羅視点

    #修帝
    Asura x Taishakuten

    2 体育教師×養護教諭 修帝.





     次の休みは空けておけと強制めいた口調で伝えた言葉がどれほどの気持ちで言われたものか、あまり理解出来ていない様子の相手に、連絡先を交換させた。仕事用の番号なら知っているだろうと逃げられそうになったがプライベートの番号だとはっきり言えば、断るための理由を見つけられなかったらしい帝釈天も観念したようで大人しく番号を差し出してきた。
     高校の時は当たり前に皆が持っていたツールであったが、帝釈天は家の規則が厳しく持たせてはもらえなかったし自分の場合は生活にゆとりがなく親に負担をかけまいと、母親に必要ないと言って買わなかった。

     だから社会人になり自分の都合で行動し責任を持てるようになった今、いつでも彼と話せる状態にまで持ってこれたことに、強い安心感を覚えていた。





    「連休だから混んでいるようだな」
    「平気か?昔からあまり人混みは得意ではなかったな」
    「いや、大丈夫だ。そんなことを言っていては教員は務まらないだろう」

     入場券を購入するために二人は列に並んでいたが、財布を取り出そうとした帝釈天を阿修羅は制止する。自分が無理に誘ったのだからここは俺が持つと言うと帝釈天は躊躇したが最終的には引き下がった。
     時間を持て余して待っている間に何故自分が此処にいるのか未だ腑に落ちない顔の帝釈天を横から見下ろし阿修羅は眺める。

    「なんだ。私の格好に何か気になるところでもあるのか」
    「白衣姿以外のお前は新鮮だなと思った」
    「ああ。ジャージ姿ではない貴方も目新しくて見慣れない。……不思議な感じだ」

     若干目を反らし気味に言われてもそれは本当に見ての感想なのかと問いたい気もしたが。シャツに薄手のジャケットを羽織っただけの自分のシンプルな服装など今はどうでもよかった。黒のタンクトップに合わせた白いシアー素材の軽いニットが細身の彼によく似合う服装だなと思い感心して見ていたところだった。もっときっちりした服を着てきそうなイメージがあったから。ファッション雑誌辺りにでも自然に載っていそうなほど。
     大学の頃は学部が違うせいで会う機会がほとんどなかったから、彼がどんな服を好むのかも知らなかった。たまにすれ違っても常に忙しそうにしていたし殆ど会話も出来ないまま距離だけを感じていた。
     自分が知らない間に垢抜けすっかり大人びてしまった様子に、どこか寂しさも感じさせる。

    「今日は何故、ここに来たんだ?」
    「あの頃も一緒に行っただろ。バッティングセンターとか部活の後に銭湯とか」
    「貴方はまだ着任したばかりなのに。そんな時間の余裕があるのか」
    「まだ補佐でしかないからな。生徒の顔と名前を覚えなければならないくらいで思っていたより仕事が少なくて張り合いがないくらいだ」
    「そのうちクラス担任をすることになればそうは言ってられなくなるぞ」
    「じゃあ今のうちに存分に遊んでおくか」

     彼の苦言を前向きに聞き入れた後、窓口で支払いを終えると、二人分の入場券を入口で切ってもらい半券の一枚を彼に手渡した。

     中に入ると入場口付近は人で溢れかえり、はぐれないよう彼の手を引いて歩いたが少し進んで最初の展示ブースにまで来れば、人が流れに沿って動くようになり周囲の空間に少し余裕も出来る。
     理科の教科書でも見る馴染みのある魚から国内では見れないような巨大淡水魚まで展示されている。川を模した横長の水槽をまずは歩きながらゆっくり見ていく作りだ。

    「……カップルが多い気がする」

     まだ繋いでいたままだった手がするりと指をすり抜けて離れるとその後で帝釈天はそんな言葉を小さく口にした。

    「そうか?家族連れもたくさんいる。それに友人同士で来ている若者だって。……あ」
    「?」

     少し行った先のところから視線を感じた。目が合った途端に有名人でも発見したのかという勢いでUターンし駆け寄ってくる二人組を見つけてしまった阿修羅は無視してやるわけにもいかなくなる。

    「阿修羅先生と帝釈天先生!どうしてこんなところに?」

     前のめり気味に問いかけてくる女子二人。高校も3年生ともなれば社会人と見分けがつかないくらい大人びて、制服ではない私服姿の女生徒たちなど見逃してしまいそうだった。相手が寄って来なければ全く気付けないところだ。

    「今日は阿修羅先生と校外学習の研修に……」
    「俺たち実は高校の時からの同級なんだ。今日はプライベートで来ているから邪魔をするなよ?」
    「…………」

     しれっと誤魔化そうとした帝釈天の言葉を被せ気味にはっきりと言い切り、阿修羅は訂正した。

    「だから阿修羅先生ケガもしてないのにいつも保健室に遊びに行くんですね」
    「いや今回はちゃんと帝釈天先生に治療してもらったぞ」

     ジャケットの袖を捲ってこの前ケガをしていた箇所を見せ堂々と正当性を示す阿修羅に、治療などとそれほど大袈裟に言うほどのことはなにもしていないと静かに横で帝釈天が付け加える。

    「わかりました。じゃあ邪魔しないから一緒に写真撮って!」

     面白半分で一緒に回りたいと言われるのも面倒だったので、しょうがないなと返す。人々の流れの妨げにならないよう中央の柱の影に移動して帝釈天と共にそれに応じ、数枚の写真を撮った。自撮り棒なるものを駆使してポーズを決められ器用に撮っていくあたり慣れているようだ。
     服の配色も近くてお似合いのカップルみたいなどと冗談を言われながら帝釈天と二人だけの写真まで撮らされた。撮れたものを確認すれば、彼もさっきまで静かな顔をしていたのに笑顔を作るのが驚くほど上手い。

    「へへ。阿修羅先生と帝釈天先生の私服姿見れちゃったって学校でみんなに自慢しようっと」
    「私も〜」

     絶対売れるよねと言い合う二人の生徒の冗談に対し、横流しするなら追加の体力テストで腕立て伏せ100回だからなと付け加えると絶対に嫌ですと言って生徒たちは笑いながら大人しく去っていった。


    「なんであんなことをわざわざ言ったんだ」
    「隠し通すべきものなのか?履歴書を出しているし会話をしている時点で出身校くらい一部の先生も知っている。黙っていても生徒にもいつか知られることだろ」

     お互いの昔の話など根掘り葉掘り聞かれるのが嫌なのだろうか。知られたくなかったようだが保健室で一緒に食事を取っている時点で顔馴染みだと思われるだろうから、もともと隠せるようなことでもない。



     最初乗り気ではない様子の帝釈天だったが歩を進め多種多様な魚を見ていくにつれて興味を示し口数こそ少なくなっていったものの、とても熱心に見ていた。
     色とりどりの熱帯魚に魅入ってみたり、カワウソの餌やり体験ではかわいいと言って喜んでいたし段々と肩の力も抜けてこの状況を楽しめるようになっているようだった。

    「貴方が来たかった所じゃないのか。ちゃんと展示を見ているのか」
    「ちゃんと見ている。その上でお前が楽しそうにしている様子も同時に見ている」
    「…………」

     真面目にペンギンの生態について読み耽っている帝釈天を眺めていると怪訝そうな顔で問われる。
     自分にばかり視線が注がれているような気がして気になったのだろう。実のところ行く場所はどこでもよかった。だが時間を共有するにしても映画を見に行くとかでは前を見ているだけで話も出来ずにつまらないし、水族館か動物園辺りが妥当だなと思っただけだ。

     展示の魚たちとイルカやアシカなど定時で行われるショーも余すことなく見終えた二人は出入り口付近にある土産物が並ぶ店内まで足を運ぶ。
     愛らしいパッケージの箱菓子や子供が喜びそうなキーホルダーにリアルな海洋生物たちのフィギュアまで売っていた。海の生物を模したぬいぐるみの前まで来て、帝釈天が足を止めたことに気付き阿修羅は歩み寄る。

    「欲しいのか?」
    「いや。もう、ぬいぐるみを欲しがるような歳では」
    「あまり言いたがらなかったが、お前が昔からかわいいものが好きだったことは知っている」
    「もう大人なんだぞ。……笑わないのか」
    「笑わない。もう大人だから別に好きではないと言われたら逆にがっかりしたところだ」

     その言葉に迷っていた気持ちが少し前を向いたのか、彼は顔を近づけて眺めはじめた。

    「どれもかわいらしい」
    「なんなら全種類でもいいんじゃないか」
    「そんなわけにはいかない」

     少し人目を気にしているのか手に取る前に辺りを見回したのでさっきの生徒たちならとっくに土産を買い終えて出口から出ていったぞと教えてやると、帝釈天は中段に置いてあったラグビーボールほどのサイズのぬいぐるみを手に取る。
     フォルムを眺めて顔を確認し、これに決めたというように踵を返そうとした帝釈天の手から阿修羅はそれを掴んで取り上げる。
     会計のカウンターに突き進む阿修羅の後に続いて慌てて駆けてくる帝釈天を振り切りレジの台にそれを差し出した。

    「また貴方は!それくらい自分で……」
    「高校の時、購買の激辛カレーパンをよく差し入れしてくれただろ。それのお返しだ」
    「そんな昔のこと」
    「俺にとっては大事な思い出だからな」

     問答を微笑ましそうに聞いている店員に現金で支払うと、グラデーションが水色で綺麗な半透明のフィルムにリボン付きでラッピングまでされてしまい、突き返すことも出来ないであろう状態にまでしてもらった上で彼に手渡す。
     困ったような文句を言いたげな、それでも少し嬉しそうな赤らんだ頬を見てそれだけで満足を覚える阿修羅は笑顔を返すと、また彼の手を引いて歩きだす。



     水族館内の飲食スペースは混み合っていたので外に出て近くのレストランに入り昼食を取った。
     器が下げられて運ばれて来た食後の飲み物が置かれた後、店内も人が疎らで落ち着いて話が出来そうだと思った頃合いで阿修羅は口を開く。

    「で、どうしてそれを選んだんだ」

     紙袋の上部から顔を覗かせているパンダのような白黒の存在に目をやりながら彼に投げかける。イルカに似た形状だが一回り大きく、黒い背中とは違い腹側は白で目の近くも白色の。はち切れんばかりに綿が詰め込まれていそうな、シャチだった。
     どれもかわいいとは言っていたが最初から集中して熱心に眺めていたのはそれで。先ほどの水族館には残念ながらシャチは飼育されていなかったのだが、今日見たものに影響されたというわけでもないのに何故これに惹かれたのだろうと阿修羅は不思議に思っていた。

    「ただ大きいだけでなく強靭な筋力が発達したシャチは骨格も恐竜に近い。凶暴なホオジロザメにも負けないくらい強いんだ」
    「だから気に入っているということか?」
    「それだけじゃない。大学の時ホームステイ先でホエールウォッチングに参加する機会があって。シャチの背面型ブリーチングを間近で見たことがあったんだ。とてもダイナミックで美しかった」

     大学へと進学し滅多に見かけることがなくなった彼だが一定期間全くすれ違うこともなくなり、気になって人伝に聞くと外国に行っていると言われ鈍器で殴られたほどに衝撃が走ったのを今でも覚えている。
     そこまでは快活に話していたが少し言いよどみ、その先を迷うように少し間が空いた後で彼が口を開く。

    「それで。……その時、貴方のことを思い出した」
    「?俺を?」
    「貴方が跳んでいたのを、初めて見た時のことを」

     少し気恥ずかしそうだが、昔を懐かしむように彼は語る。それを聞きながらコーヒーの入ったカップを傾け阿修羅もまた昔のことを思い出していた。





     早朝にまでバイトを入れてしまったせいかまだ身体が順応しきれておらず少し眠い。食事を軽く取った後、静かな屋上で昼寝でもするかと階段を上がってきたところだった。
     そこには既に一人先客がおり、食事を終えたところなのか弁当箱を鞄に片付けようとしている。男くさい男子高には不釣り合いな、色白で明るい髪色の整ったな顔立ちの生徒だった。
     数日前にクラスに入ったばかりの転校生だ。こんな所で食事をとらなければならないくらい、まだ馴染めていなかったのか。邪魔をするのも悪いな。そう考えた阿修羅は声をかけることもせずもと来た階段を降りようとした。その時。

    「待って」

     意外なことにその転校生から先に、自分へと話しかけてきた。

    「昨日、貴方が跳んでいる所を見たんだ」

     跳んでいると聞いてすぐに理解が追いつかなかった。それが部活動の時間に自分がやっていた走高跳のことだと気付いてから視線だけを返すと、柔らかな笑顔が向けられていることに気付く。

    「すごく綺麗だった」

     綺麗、というむさ苦しい男所帯の高校生活では聞き慣れないような馴染みのない言葉に、阿修羅は目を瞬かせる。
     育ちが良いせいなのかこれが彼の感性なのか。ただ感じたことをそのまま口にしたような言葉に驚かされ、同時に妙に心が躍ったような気がした。

    「高跳に興味があるのか?」
    「いや、そういうわけでは」
    「一緒に来てくれ」
    「え?ちょっと……待っ」

     感じていたはずの眠気も吹っ飛んだ阿修羅は急に何かに突き動かされる心地のまま彼を強引に立ち上がらせると、手をひいて職員室を目指す。

     もともと難しい競技で人数を集めることが厳しく廃部になりかねない所だった。転校生で部活を決めかねているこの絶好のタイミングならと部活の顧問の所へ連れていき見学の許可を取った。
     そのうち流されるまま見学に来ていた彼に仮入部でもと勧めたが、ハードなスポーツは自信がないという彼の意向もありマネージャーという形で在籍してもらうことになる。

     伸び悩んでいた記録だったが、彼の情報収集力や理解力の高さは類稀で、跳び方の改善や調整の補佐として顧問の先生よりよっぽど専門的な知見を広げていってくれた帝釈天のおかげで、大きく飛躍することが出来た。単純に、本気で応援してくれる友人が傍で見ていてくれたから嬉しくて頑張れたということもあるかもしれない。

     良い記録が出たことで大会の出場回数も増えて学校内で走高跳という競技が注目されるようになったこともあるが。優しいマネージャーがいるらしいと潤いのようなものを求めて入部してくる生徒まで増え始め、結果的に部員も溢れて廃部の心配どころではない大所帯となる。
     帝釈天は自分が役に立っていることを喜んでいたしそのうち自然に部員とも打ち解けて、誰にでも平等に優しく接した。喜ばしいことであるはずだが、彼の周囲に人が群がるのを見ると自分が連れてきたのにと苛立ちのようなものを感じた。だが不機嫌になる心を見透かし傍へとやって来ては、あやすようにいつでも彼は労いの言葉をかけてくれる。
     そうしているうちに仲良くなり、いつの間にか親友のように一緒にいるのが当たり前になっていった。





    「だからなんだかとても愛着が湧いてしまって……」

     半透明の袋越しに黙って帝釈天を見上げている白黒の海洋生物と彼の間に妙な空気が流れ、互いにじっと見つめ合う。

     いや、それは俺じゃない。というか俺はそんな丸いフォルムではない。こっちを見ろ帝釈天。……と、叫びそうになったが、自分が買い与えた手前どうにも文句を言えなかった。

     疎遠なまま自分の知らない間に異国に行ってしまったが、それでも時折自分のことを思い出していたのかと思えば少し擽ったい気持ちにはなる。

    「貴方の服装、白いカットソーに、ライダースデザインのミリタリージャケットは黒だが」
    「ああ。インナーと上着でお前と色が逆だな」
    「白いワンポイントも入っているし今日の格好はちょうどシャチに似ていると思わないか。ほら、顔も愛嬌があるだろう?」

     こじつけのように似ていることにしようと自分にまで暗示をかけようとしてくる彼の感性は不思議で面白可笑しいが、やはりそうは思えない。

    「その理屈だと俺にも愛嬌があることになる」
    「昔の貴方はな。今は育ち過ぎて可愛げはなくなったかもしれない」
    「お前は輪をかけて素直じゃなくなったな」
    「恥も外聞も覚えてより大人になったと言ってくれ」

     お互いに皮肉を言い合ってから少し声を上げて笑うと、すっかり昔の自分たちに戻れたような気がした。

    「だがまぁ、今日は比較的素直だったからまだ会話も出来たしよかった」

     そう言った後で少し顔を近づける阿修羅は相手の目を覗き込む。

    「帝釈天。また仕事以外でも時間を作ってくれないか」
    「…………」

     それを聞き、どう答えるべきかを決めかねている瞳が自分を見つめ返した。

    「別に休みの度に一緒に出かけてほしいと言ってるわけじゃない。会う場所はその辺のカフェか図書館の学習室とかでも構わないしな」

     自分も分別ある大人だ。彼の負担になってまで友人を続けてほしいと言いたいわけではない。

    「実は体育だけではなく陸上部で本格的に走高跳の顧問をすることになりそうなんだ。昔のようにパーソナルトレーナーとして全面的にサポートしてくれとは言わないが。生徒の練習メニューを考えたり、たまに相談に乗ってくれないか?」
    「こんなに早く部活で生徒を受け持つなんて、凄いな。そういうことなら。もちろん私も貴方の力になるよ」

     自分に新しい役割が与えられることを聞き、彼は喜んでくれているようだった。

     おかわりを頼んだ彼のカップに紅茶が注がれた後で自分でも珈琲も頼むと、彼は角砂糖を投入し静かに混ぜ始める。
     そんなありふれた穏やかな表情を眺めているだけで満足出来ているのだと。

     理由をつけてでも繋がりを断ちたくない。離れていた間に得られなかった彼との時間を、これから埋めていきたい。

     今はただ、そんな些いな願いだけを抱いているのだと、そう思っていた。





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    86mayuri

    DONE体育教師の阿修羅×保健室の先生の帝釈天というテーマをお借りして書いた話の続き。現パロ。年の瀬デートネタ(付き合ってはいない)。高校の時の回想シーンなども。会話多め簡易文。
    今回は帝釈天視点寄り。回想シーンでモブ部員等が出て多少おふざけがあります。
    3 体育教師×養護教諭 修帝.




     皆、巨大な川の流れの一部となったように一定速度でゆっくりと、前へ前へと進んでいた。

    「またしてもお前を人混みの中に連れてきてしまった」
    「阿修羅は心配性だな。私は大丈夫だと言っただろう。それに言い出したのは貴方だが、私が行きたいと返したんだ」

     等間隔に並ぶ石灯篭はやっと六つ目をこえたというところ。つまり先ほどからあまり進んでいない。
     手持ち無沙汰な渋滞状況に痺れを切らしたわけではなかったが、隣の男を見上げて声を上げる。

    「ところで貴方はこの前、踏み切るタイミングと引けた腰に関して言及していたが。まず跳躍練習の前に助走の段階で流動的ではない生徒が多い気がする。貴方は初めから自然に身についていたと言っていたが彼らはほぼ初心者だ。その後の自然な流れを作るためには徐々に加速する動きを身につけるための基本のトレーニングをもっと増やして……」
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