大きなイルカ 彼女の声で伝えられる「お誕生日おめでとう」には、いつもより湧き上がる悲しさを拭う力がある。毎年プレゼントとともに祝ってもらっていると、確かにそう感じるようになってきていた。
今年も包みを開けてみると、出てきたのはかわいらしいイルカのオブジェ。デートのときイルカショーへ行った思い出が、喜びと一緒に湧き上がる。
「やった、みんなに自慢してこよ!」
「あっ、ちょっと待って琉夏くん!」
ぴょいと駆け出そうとしたところを呼び止められて振り向くと、プレゼントの贈り主は、なんだか神妙な表情をして立っていた。こんなときにそんな顔する理由、なんかあったっけ。
「前にイルカショー見たとき、クジラの話、したよね?」
「……あぁ……したね」
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