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    koji_033

    @koji_033

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    koji_033

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    利き小説で最初に書こうとしてやめた話。めちゃくちゃ書きかけの供養なので急に終わります。

    「これが最後になるとしたら、普段は言えないような大胆なことも言えてしまう気がしませんか?」

     浜辺の静寂を唐突に破ったその言葉に顔を上げると、煌々とした月明かりのもと、薄らと笑みを浮かべる男と目が合った。人を夜の散歩に誘っておきながらここまで一言も発することなく、こちらからの呼びかけにも砂を踏みしめる音で答えていた不遜な男が漸く口を開いたと思ったら、藪から棒に何なのだろうか。
     砂の入り込んだビーチサンダルを波打ち際でじゃばじゃばと洗いながら、燐音は溜め息混じりに質問を返した。
    「ンだよ急に。いきなり部屋に来て“散歩でもどうですか”なんて柄でもねェこと言うなと思ったら、だんまり決め込んだ後にそれかよ。おっきなライブが終わって、メルメルはおセンチになっちゃったんでちゅか〜?」
    「……」
     いつもなら顰めっ面で“死んでください”とでも言われそうな憎まれ口を叩いても、男――HiMERUは考えの読めない笑みをじっと湛えたまま燐音を見つめるだけだった。
     ほんの軽口を冷たくあしらわれる度に“そんな言い方しなくてもいいじゃないか”と不満に思ったことも何度かあるものの、無反応で返されるとそれはそれで虚しいものがある。寧ろ、今日の海のように穏やかな笑みをピクリとも崩さないあたりいつも以上に不気味ですらある。
     暫し思案した後、燐音は潮風にベタつく髪を掻いた。
    「……ほんとにどうしたよ。ライブ、楽しくなかった?」

     ――約半年かけて行われたCrazy:B初となる全国ツアー。今日はその最終日だった。全会場チケットは完売、SNSの評判も上々、正に大成功のツアーだったと言える。
     そのご褒美というわけではないが、今日はいつもより少しグレードの高いホテルで打ち上げを行い、そのまま宿泊する流れとなった。ただ、ライブの熱気も冷めやらぬままではなかなか寝付くこともできず、ちょっと外の空気でも吸いに――とホテルの部屋を出ようとしたところで、突然燐音の部屋を訪れてきたHiMERUと出会し、散歩へと誘われたというわけである。

    (ライブの話でもできるンじゃねェかと思ったンだけどな……)
     意識の高い彼のことだから、“楽しかった”だけではなく、次に向けての反省点についても話が出来ると思った。あそこのステージ移動がギリギリ過ぎて次の曲までに息が整わなかったとか、あの曲のあの部分で必ずダンスがずれるとか。直すべきところはきちんと課題出しをして、それでもやっぱり“楽しかったね”と、そんな話をしたかった。
     だから“海辺まで行きたい”という言葉に若干辟易しつつも、渋々付き合ってここまで来たのに。“最後”だなどという言葉を出されるなんて。
     こんな時はどう対応するのが正解なのだろう。選択肢は色々ある。一言“萎えた”と言って帰ることも出来るし、もう一度茶化してみてもいいし、無言を貫くという手もある。
     ただ、月明かりのみに照らされた夜の海というこの状況がそうさせるのだろうか、何かしらの言葉を掛けてやらないといけないような気もしている。ここで正解を引かなければ……例えば彼一人を置いて帰ってしまったなら、HiMERUはこのまま戻ってこないのではないかなんて。そんな漠然とした不安に駆られるのだ。
     ここはひとつリーダーらしく、この水面の月のようにゆらゆらと頼りない男に言ってやらなくては。
    「あんたにとっては明確な“最後”が頭ン中にあるのかもしれねェが、少なくとも俺っちはあんた一人の判断で勝手に終わらせてやる気はねェからな」
    「……」
     無言でこちらをじっと見つめる、まるで作り物のように美しいその姿は彼自身のものではない。彼が模倣する別の人間のもの。それでも、燐音にとっては目の前にいる彼こそがCrazy:Bの『HiMERU』だ。いつかCrazy:Bが終わるその時までずっと隣で歌っていたいと思う相手である。
    「あんたが俺っちに何を言わせたいのか知らねェけど、最後になんてならねェよ。だから普段は言えないような大胆なことなんて言えませ〜ん。何か俺っちの口から聞きたいことがあるンだったら、“最後”なんて脅し文句みてェなこと言わずに普通に言わせてみろっての」
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    koji_033

    PROGRESSいずれ燐ひめになるノンケの燐音×HiMERUが見たいなと思ってプロローグだけ書いてみたもの。筆が乗れば続きを書くし、乗らなければこのままかも知れないし…という感じです。
    ノンケ燐音×HiMERU「え、何? もしかしてメルメルって俺っちのこと好きなの?」

     どんな話の流れだっただろうか。たまたまレッスンルームに二人でいる時、唐突にそんなことを言われた。いや、別に唐突でもなかったか。何かしら天城がそう思うようなきっかけが前後の会話の中にあったんだと思う。ただその時の俺は頭が真っ白になっていたから、奴が半笑いで冗談めかして口にした言葉以外、何も思い出すことが出来なかっただけで。

    「……、」

     そんな状態じゃ当然自分がどんな顔をしていたかなんてことも覚えていない。“否定しなければ”と脳は指令を送っていたけれど、唇はぎこちなく開閉を繰り返し、細い息を吐くだけだった。ニヤニヤと意地の悪い意味を浮かべてこちらを見ていた天城は、そんな俺の様子に気付いてか、次第に笑みを引っ込める。その時僅かに奴の頬が強張ったのが分かってしまって、冷や水をぶっかけられたような気分になった。まぁ、そのおかげで却って冷静になれたんだろうけど。
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