連日列島のどこかで四十度前後の酷暑を超えた暑さが記録され、日没後がメインとはいえ冷めきらぬアスファルトや人々の熱気が毎度オレたちを汗だくにさせてくれた。
ところが週末にまとめて洗濯しようと思えば台風襲来と来た。直撃はしないものの年中無休を唄う八雲霊能相談所も臨時休業となり、オレたちは自宅待機だ。
窓を揺らす風と叩く雨を横目にオレは煙草をくゆらせる。日の出はとうに過ぎたはずだが、外は暗雲立ち込めあの夜よりも暗く感じる。
だが昨晩の報告を済ませて首を巡らせれば恋人が鼻歌混じりにコーヒーを煎れている。落ち着いたモスグリーンのエプロンをまとい、ゆっくりとドリップする様は一端のバリスタのようだ。
誕生日にねだられて買ったホームベーカリーで焼いたパンにハンドブレンダーでペーストにした甘藷と甘栗。特にペーストは最近ハマっているらしく様々な料理に活用されている。凛子には介護食の練習ではと揶揄されたがこちとらまだまだ現役、昨晩も大いに若さを発揮した。いや発揮しすぎたか。暁人は機嫌は良いが気怠げな雰囲気でベーコンエッグを皿に乗せてこちらに持ってくる。
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