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    ZANZOUdx0425

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    ZANZOUdx0425

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    pixivに上げた「faith」の続きのような、後日談のようなもの。ウン百年後とかの未来なのかな?人では無いクライヴとバルナバスの2人旅は続く。
    何十年かに1度、必ずジョシュアやみんなの墓参りとかにヴァリスゼアを回ってそうという話でした。

    #バルクラ

    たったふたりの。ドアベルが涼やかな音を立てて揺れた。
    いらっしゃい、とカウンターの内側に居る男が振り返る。
    そろそろ新しいものに替えようと考えていた少しくたびれた麻の服に、沼地に入っても安全な革のブーツ。ここらでは一般的な恰好をした男は、この宿の主人だった。
    ばあさんのばあさんの、そのまたばあさんのーーいや、叔母だったか?ーーとにかく祖先から受け継いだこの店は、長くマーサの宿と呼ばれている。
    母親がここの主人だったときはなんだか古臭いと感じたが、いざ自分が跡を継いでみると、マーサの宿だから安心だなと多くの人に言われ、案外悪くないものだな、と男は思っていた。
    料理はまだか、と声を上げる常連客を適当にいなして、近付いてきた二人の男に料理か、宿泊か、と問う。
    そこでハッと息をのんだ。

    宿を、と言う青い服を着た黒髪の男は、鈍色の鋭い眼光を宿した、どこか威圧的とも思える雰囲気を漂わせている。しかし隣の男を気遣うように覗き見たところ、あたりの空気が優しくて穏やかなものに変わった。
    その深くフードを被っている、ローブの下に赤いコルセットのような服を着た同じ黒髪の男は、体調が悪いのか俯いていて微妙に表情を窺うことはできないが、非常に整った顔をしていることが分かる。
    そして、その瞳がちらりとこちらを見上げた。
    その輝きの、なんと蒼いことか。

    隣り合う二人は神秘的というか何というか、兄弟のようにも、主人と従者のようにも、恋人の様にも、それ以上の何かのようにも見えた。
    隣にいるのが当然というか、元々ひとつだったかのように、目が離せなかった。
    どことなく品を感じさせる所作に貴族か何かと思うが、二人ともかなり体格が良く、傭兵なのだろうかとも考える。
    暫くぼうっとしていた宿の主人は、宝石、いや、クリスタルのようなその蒼い瞳が傾いたのを見て意識を戻した。

    「っご、ご宿泊ですね、2階の奥へどうぞ。体調がすぐれないようですので、食事をお運びいたしましょうか?」
    「いや、その必要はない」

    フェニックスゲートまであと少しだ、と青い服の男が言う。
    ずいぶん古い言い回しだ。自分自身も、年老いた行商人から一度だけ聞いたことがあるだけの。
    あのかなり古い建物のような何かは、近くの子供たちが召喚獣合戦ごっこをするたまり場になっているだけの場所なはずなのだが。
    青い服の男が、赤い服の男を支えて階段を上り始める。
    ふっと覚えのあるやり取りだ、と思った。
    遠い昔、母の傍で一連の同じようなことを体験した気がする。夢かと思ったほどの懐かしいようなにおいを思い出す。
    後ろ姿も何もかも、思い出したものと寸分変わらない。何十年も経った今、そんなはずは無いと思いながらも焦って男は呼び止めた。

    「あの、失礼ですがどこかで…」

    階段をゆっくり上る足がぴたりと止まる。

    少し間が空いた後、二人は顔を見合わせると、さあ、と儚く微笑んだ。
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