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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    ディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。

    #ディスガイア4
    disgaea4
    #フェンヴァル
    fenval

    【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何をまごついているのか。そもそも、2000年も生きておいて何を今更どぎまぎしているのか、自分のことながら情けない。

    とはいえ、口付け以上のこと……素肌に触れてみたいであるとか、身体を繋ぎたいという強い欲がある訳ではないのもまた事実だった。
    だが、喰えない主人の腹の内まで暴いてしまいたいと思わなくはない。敬愛するこの人に、あわよくば、全てを委ねてほしいと願わなくはない。そのためには、口付けだけではいささか足りないように思い続けてきた。

    「しつこいぞ、フェンリッ……んぐ」
    文句を垂れる主人の口を塞ぎながら、そんなに蕩けた顔で言われても相手を煽るだけだとぼんやり思う。悪魔らしく尖った耳をくすぐるように撫でると、ビクッと反応を見せた。色白い頰が染まる。
    これ以上のことを主人は果たして望まれるだろうか。そう考え始めると「戯れ」の最中、気もそぞろになった。この人のことだ、今この瞬間も俺に流されて無感情に口付けを交わしているだけなのではないか。

    そして、そんなネガティブな妄想の末に俺はおやすみなさいと、主人を寝床である棺桶へと誘導し、蓋を閉めてしまう。それがここ最近の戯れの常だった。
    果たして今日はどうなるだろう。主人は主人でなされるがまま棺桶に収まってしまうものだから、尚のこと先へ進めない。
    だってこれでは、俺ばかりが意識しているようではないですか、閣下。

    惜しむように唇を離すとつうと糸を引いた。濡れた小さな口元を親指で拭ってやる。
    「……考え事か」
    フゥと荒く息をする主人は艶っぽく、目に毒だ。悪魔らしく蹂躙してしまえ、とも思うがこの方を相手にはそうもいかない。力量差を考えてもそうだが、無理矢理この人に何かしようという気が起きない。……暴君時代の力を取り戻すためなら、無理矢理にでも人間の血は飲ませたいのだがそれは閣下のためを思ってのこと。例外だ。

    「あなたのことを考えておりました、ヴァル様」
    細い腕が伸びてきて、己の銀の髪に触れる。暴君と言われたあの頃の恐ろしさは何処へ行ったのか、穏やかな視線が向けられる。
    いや、昔からこの人はこんな目をしていたか。その眼差しが悪魔らしからぬ不穏を纏っていて、出会ったばかりの頃はどうにも不気味に映ったものだ。
    「目の前の俺に集中してはどうだ。俺の何を考えていたのか知らないが、妬けてしまうではないか」
    血染の帝王が可愛いことを言ってくれる。ドッと心臓の音がうるさくなった。青白い手首を引き寄せて反射的に誓う。
    「閣下、許されるなら……ずっとお側に居たいのです。今も、これからも」
    此処は裏切り反逆が日常茶飯事の魔界。魔の者たちの陰謀渦巻く場所ではあるが、俺の今この時の想いに嘘偽りはない。
    「そんなに簡単に約束じみた発言をするものではないぞ、我がシモベよ。いつもお前が口酸っぱく言っているだろう」
    「閣下の約束癖がうつったのかもしれません」
    責任を取ってもらいませんと、そう囁いて主人の小指に自分の小指を絡める。指切りげんまん嘘ついたら針千本飲ます……人間共は約束を交わす時、こう誓うそうですよ。そうか、よほど強固な意志で約束をするのだな。そんなやりとりの最中、どさくさに紛れて主人の白手袋を脱がせていく。ひんやりと冷たい素肌。しかし、悪魔にも血は通っていて、熱を持って接せば火照るのだと知っている。慈しむようにその指筋をなぞっていく。
    「……ン、」
    ピクンと肩が跳ね、気まずそうに目を泳がせる。暴君と畏れられたこの人が、こうして自分と必要以上に触れ合っているのは改めて考えると可笑しな話だ。

    「どうしたのだ、突然」
    この手はなんだと言いたげな、どこか不安そうな顔が俺に問い掛ける。
    「ヴァル様、私はあなたを慕っております。けれど悪魔である私は、閣下へこの想いの丈を伝える術を忠誠以外に持ち得ません。だから、その、それでも閣下にこの熱を分かってもらいたいと……つい触れてしまいました。申し訳ありません」
    片言に紡がれた、継ぎ接ぎで不恰好な感情の発露に自分自身で驚いてしまう。惚れた弱み、という言葉が頭をよぎる。お嫌でしたら今すぐにやめますから、と咄嗟に付け加えると重ねた手が緊張で汗ばむのがわかった。
    主人は一瞬面喰らったような顔をしたが、そうか、とぽつりこぼすと今度は真っ直ぐに俺を見た。この人の全てを見透かすかのような瞳に真正面から見つめられるのはいつぶりだろうか。

    見つめ合う、たった数秒の沈黙が、永遠のように、長い。

    「フッ……フフフフフ……!」
    「ヴァル様……?」
    「ならばよし!見上げた忠義だ、フェンリッヒ。俺もお前のその忠誠心に見合うだけの主人でいると約束しよう」
    自分のこの想いは拒絶されてしまうだろうか、それとも……そんな緊張感を一瞬にして吹き飛ばす、予想だにしなかった元気一杯の宣言に思わず拍子抜けする。ああ、閣下らしい……閣下らしいが暴君ともあろうお方が、まさかこのムードを読めていないわけではあるまい。いや、俺がそういう風には見てもらえていないと、そういうことなのか。それであれば完敗だ。
    重ね合わせた手と手をほどく。折れてしまいそうな華奢な指。どんな魔神も薙ぎ倒すこの凶悪な手が、どうしてこんなに愛おしいのか。

    「良い夢を、閣下」
    いつものように棺の蓋を閉じにかかる。今はまだこれで良いのだろう。主人がこの棺桶から起き出て、去ろうとする自分の手をとった時、その時こそは思うまま、抱きしめてしまおうと思うのだ。

    主人の部屋を後に、月明かりの反射する廊下をゆらり歩く。己の影が長く伸びてゆき、先細って薄光の中に消えた。魔界でも月の光は神秘を思わせ、悪魔の独白すらも誘うのだろう。

    ああ、この胸につっかえるものを吐き出して、それが何なのか確認して、早く楽になってしまいたい。

    頭の中に何処ぞの天使長が降りてきて言う。「それはまさしく、愛なのです!」
    ふざけるな。この想いをそんな気色の悪い言葉で定義させてたまるものか。閣下に対するこの気持ちは、もっと崇高なものであって、愛などとまやかしの言葉で括ることのできるものでは、到底ない。

    となると、はて、上手く言葉にならないこのもやもやは一体何だというのだろうか。





    棺からそろり抜け出ると、部屋には溢れんばかりの月光が差し込んでいた。
    これで眠れというのは無理があるだろう……ぽつり、呟くと不思議と顔が熱くなった。まだ胸の鼓動がこれでもかと喧しい。

    もう少し側にいてくれても良かったのだが──弛んだ口からこぼれ出た言葉に自分自身で驚いて、首をブンブンと横に振る。頭の中に無数の?マークが産まれ、支配されてゆく。この感情はなんなのだ?信頼か?それとも絆?
    どの言葉を取り上げてみてもどうにもしっくりこない。誰にこの感情を吐露したわけでもあるまいが、どことなく居心地が悪いのは何故だろう。

    今宵は満月。人知れず、プリニー共が生まれ変わる。
    この胸の内も誰にも悟られぬよう月が浄化してくれると助かるのだが、果たしてどうか。


    fin.


    +++++++++++++++++++++


    本当は悪魔にも愛はあるけれど、愛という概念を毛嫌いしたり苦手意識をもっている…というラハール殿下のようなあの感じがとても好きです。D4の執事閣下は精神的に成熟しているし、どうか分からないなと思いましたが自分の欲に素直になって書きました。

    自分の中のそれらしい気持ちに知らん振りしている、あるいは悪魔の自分に愛に該当する気持ちなんかあるわけないと思い込んでいたら大変可愛いなと思います。
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    last_of_QED

    DOODLEガラハイ🐺🦇【stand up!】
    お題「靴擦れ」で書きました。ハイドがストーカーに刺された過去を捏造しています(!?)のでご注意ください。

    ガラさんとハイドには、互いの痛みを和らげてくれる、一歩を踏み出すきっかけになってくれる…そんな関係にあってほしいです。
    【stand up】「ガラ、休憩だ」

     背後から名を呼ばれ、狼男は足を止めた。気配が背中まで迫って来るや否や、声の主はウンザリだとばかり、息を吐く。

    「休憩って……おれたち、さっきまでコーヒートークに居たんだよな?」

     両名は確かに五分前まで馴染みの喫茶店で寛いでいた。ガラハッドとゾボを頼み、バリスタ、それから偶然居合わせたジョルジと街の噂や騒動について会話を交わし別れたばかりだ。にも関わらず再び休憩を所望するこの友人をガラは訝しんだ。傾き始めた陽のせいかハイドの表情は翳り、どこか居心地が悪そうに見えた。

    「具合でも悪いのか?」
    「……ああ、もう一歩も歩けそうにない。助けてくれ」

     かつて、オークに集団で殴られようが、ストーカーに刺されようが、皮肉を吐いて飄々としていた男が今、明確に助けを求めている。数十年に及ぶ付き合いの中でも初めてのことで、ガラは咄嗟にスマートフォンに手を掛けた。「911」をコールしようとした時、その手を制止したのはあろうことかハイド自身だった。
    1434

    last_of_QED

    DONEガラハイ🐺🦇【As you wish, Mr.Hyde.】
    バレンタインのお話🍫Xにてupしたもの。記録用にこちらにも載せておきます✍️
    【As you wish, Mr.Hyde.】 今にも底の抜けそうな紙袋が二つ、どさりとフローリングに下ろされる。溢れんばかりの荷物、そして良く見知った来訪者を交互に見比べて人狼が尋ねた。

    「なんだこれ」
    「かわい子ちゃんたちからの贈り物だ。毎年この時期事務所に届く。……無碍にも出来ないからな、いくつかはこうして持ち帰るんだ」
    「マジかよ……これ全部か……?」

     愕然とする人狼を横目に、ハイドは手が痺れたと笑うだけだった。今日は二月十四日、いわゆるバレンタインデー。氏に言わせれば、これでも送られてきた段ボールの大半を事務所に置いてきたのだという。

    「さすがは天下のハイド様だ……」
    「まあ、悪い気はしない」

     ソファに腰を下ろし、スリッパを蹴飛ばしてしまうと吸血鬼はくじ引きのように紙袋へと腕を突っ込んだ。無作為に取り出したファンレター。封を開き便箋を取り出すと、丁寧にしたためられた文字の列をなぞった。一通り目を通した後で再び腕が伸ばされる。次にハイドが掴み取ったのは厚みのある化粧箱だった。リボンを解けば、中には宝石にも見紛うチョコレートが敷き詰められていた。どれにしようかと迷う指先。気まぐれに選んだ一つを口の中に放り込んだ時、ガラがおもむろに通勤カバンを漁り始めた。
    1853

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    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

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    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

    last_of_QED

    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLE主人に危機感を持って貰うべく様々なお願いを仕掛けていくフェンリッヒ。けれど徐々にその「お願い」はエスカレートしていって……?!という誰もが妄想した執事閣下のアホエロギャグ話を書き散らしました。【信心、イワシの頭へ】



    「ヴァルバトーゼ閣下〜 魔界上層区で暴動ッス! 俺たちの力じゃ止められないッス!」
    「そうか、俺が出よう」

    「ヴァルっち! こないだの赤いプリニーの皮の件だけど……」
    「フム、仕方あるまいな」

    何でもない昼下がり、地獄の執務室には次々と使い魔たちが訪れては部屋の主へ相談をしていく。主人はそれに耳を傾け指示を出し、あるいは言い分を認め、帰らせていく。
    地獄の教育係、ヴァルバトーゼ。自由気ままな悪魔たちを良く統率し、魔界最果ての秩序を保っている。それは一重に彼の人柄、彼の在り方あってのものだろう。通常悪魔には持ち得ない人徳のようなものがこの悪魔(ひと)にはあった。

    これが人間界ならば立派なもので、一目置かれる対象となっただろう。しかし此処は魔界、主人は悪魔なのだ。少々横暴であるぐらいでも良いと言うのにこの人は逆を征っている。プリニーや地獄の物好きな住人たちからの信頼はすこぶる厚いが、閣下のことを深く知らない悪魔たちは奇異の目で見ているようだった。

    そう、歯に衣着せぬ言い方をしてしまえば、我が主人ヴァルバトーゼ様は聞き分けが良過ぎた。あくまでも悪魔なので 7025