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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    12/4新月🌑【恋せよ者ども!】青い空に浮かぶのは、太陽だけじゃないでしょう。
    全年齢、CPなし。地獄の恋のお話です。

    #ディスガイア4
    disgaea4

    恋せよ者ども!【恋せよ者ども!】



     魔界において月は特別な意味を持つ。罪を犯した人間の魂、その成れの果て、プリニーは穢れを清める赤い月が自分のために昇るその日を今か今かと待ち望む。贖罪を果たした者だけが満月のもとで転生を果たし、また何者かに生まれ変わる。
     そのように待ち望まれる輪廻の象徴ではあるが、月の浮かばぬ昏い夜が一月に幾度か存在することに君は気付いていただろうか。そして、そんな時は決まって次の朝、ほの明るくなった空にようやく月が顔を見せることを。もし気付いていないと言うのなら、君はこれまで、孤独な夜を過ごしたことなどなかったのだろう。或いは、早寝の習慣があるのか、いずれかだ。
     今日は丁度、そんな夜だった。





     話しておきたいことがある。そう告げられて一同が集まったのは魔界、地獄の大広間。時計は零時をまわり、遠くでゾンビの咆哮が物悲しく響いたところだ。月光(つきひかり)のない夜に、辺りはしんと静まりかえっている。

     少女が口火を切るその瞬間を神妙な面持ちで悪魔たちは待っている。少女は長らく夢を見ていた。死んで、プリニーのなり損ないとなった彼女は今目に映るこれを夢だと信じて疑わない。弱冠中学生の自分が早々に人間としての生を終え、地獄に堕ちてしまったなどと微塵たりとも認めていない。

     そんな彼女の口から出た「話しておきたいこと」。何事かと悪魔たちは身構える。悪魔たちを相手に物怖じせず、晴れ渡る空のような少女。それが、たったの十四年で命を落としてしまう。言われてみれば気の毒だと悪魔たち、そして一人の天使はフーカの惑いを、不安を、分け合うように少しずつ案じていた。

     ごめんね、こんな時間に。ぽつりこぼす少女は、意を決したように顔を上げた。時計の秒針がチクタクと妙にやかましいのは何故なのか。誰かの喉が小さく鳴り、ようやく彼女の口が開かれる。フーカの話したかったこと。それは、

    「今日集まってもらったのは他でもないわ……恋バナ大会をするわよ!」
    「ラブの話ですね、お姉さま!」
    「散々意味深な雰囲気を醸し出しておいて恋バナ?! くっだらねー……!」
    「コイバナ? なんだそれは」
    「閣下、戻りましょう。このアホと付き合うだけ時間の無駄です」

     席を立つフェンリッヒの腕にフーカは必死に掴みかかる。触るな! と心底嫌そうな表情で狼男は大きく腕を振るが、少女はその腕をひしと掴んだまま、離そうとしない。

    「ね、お願い! プリンもエクレアも揃えたの! 深夜に恋バナは女の子の定番でしょ? いーっつも悪夢に付き合ってあげてるんだから、悪夢もちょっとは私に付き合いなさいよ!」
    「ヴァルっちさんには小魚とナッツのおやつがあるデス!」

     姉妹が小袋に入った乾き物をちらつかせれば、魚嫌いのエミーゼルが、しかしおやつという言葉に反応して渋い顔をする。

    「魚がおやつ? 美味しいのかそれ……」
    「知らないの? 学校給食の定番よ! アタシはあんまり好きじゃないけど」
    「で、何を語れば良いのだ? もぐ」

     早速菓子を噛み締めながらヴァルバトーゼは満更でもなさそうに問う。まんまと釣れたと隣で姉妹は小さくハイタッチをした。

    「閣下、餌付けされないでください」
    「まあ、狼男さんは吸血鬼さんの恋のお話……聞きたくはないのですか?」

     いつ何時も、それこそトイレにさえも主に着いて行動を共にするフェンリッヒ。彼が主人の恋心を気にしないはずがないことを知っていて、アルティナはあえて狼男へと尋ねた。

    「ああ、聞きたくないな。そもそも閣下の覇道に女など不要だ」
    「……そんなこと言って、本当は聞きたいんじゃありませんの?」
    「黙れ、泥棒天使」
    「あら、それなら無理することはありませんわ。聞きたい人たちだけでしましょうか、恋バナ」

     天使のからかいに狼男はいよいよ形相を変える。それも無理はない、恋バナ……とは似て非なるものだが、この二人の間にはヴァルバトーゼを巡って四百年続く因縁がある。けれども肝心の「吸血鬼さん」もとい「我が主」はアルティナにもフェンリッヒにも、それぞれに特別な想いを抱いている。そして、二人もヴァルバトーゼのそれを十二分に理解している。大切な人の大切な人。それをどうにかしてしまうほど、二人は子どもではなかった。
     故に三人は絶妙な三角関係を保っていた。しかし、その均衡は度々ひょんなことで崩れかかる。現に今もそうであり……二人の間に火花が散るのを少年少女は不安げに、あるいは面白そうに見守っている。渦中のヴァルバトーゼはといえば、これはまずいとばかりに口を挟む。

    「こ、の、ア、マ……」
    「アルティナ、あまりからかってやるな。仲間外れはいかん。それから……フェンリッヒ、お前の喧嘩腰にも非がある。ただの歓談だ、少しは付き合え」
    「閣下が……そう仰るのでしたら……」
    「良かったですわね、狼男さん」
    「良くない!」

     パチ、とフーカが手を鳴らす。一同の注目が再び少女へと戻る。

    「満場一致ね! じゃあ、恋バナ大会、さっそくアルティナちゃんからスタートよ!」
    「わ、私ですか?! 私は皆さんのお話が聞ければそれで……」
    「アルティナさんのラブの話、聞きたいデス……!」

     ほのかに頬を染めもだつくアルティナの心中を見透かして、話しづらければこれもあるわよ、とお酒をチラつかせるフーカ。ところが、吸血鬼が早々にひょいと取り上げてそれをたしなめる。

    「小娘、議員へのワイロならともかく、お酒は2000歳になってからだ。アルティナはまだ飲んではならんし、お前が勧めるべきものでもない」

     メンバー最年長、2542歳の悪魔は放つ。さすがは教育者、彼の言うことはもっともではある。しかし、その一言は倫理観とは別の、乙女への配慮について多大なる問題を生じさせていることに気付かない。

    「つまりアルティナにシラフで……それもお前の面前で恋を語れって言うのか……? まさに暴君……」
    「? して、フェンリッヒは何故うずくまっている? おい、しっかりせんか」

     アルティナとヴァルバトーゼの絶妙に噛み合わぬ、けれども微かに立ち込める恋の気配に防衛本能が働いたのか、気を失いかけているフェンリッヒ。そして死神エミーゼルの同情を孕んだ視線には気付かぬふりでアルティナはスポットライトを他者へと移そうと躍起になる。

    「で、デスコさんはどうですの? ラスボスが好きになる方というのはやはり相当な強さを持っているのでしょうね」
    「ちょっと、アルティナちゃん誤魔化しはなしよ! そんなだから全然進展しないんじゃない!」
    「デスコの好きな人……」

     あどけない表情でラスボスと呼ばれた少女は考える。そしてすぐに顔を輝かせ、言った。

    「デスコは……お姉さまが大好きデス。あと、デスコを生み出してくれたパパさんも……」

     小さい声で少し恥ずかしそうに、或いは自信なさげに話すデスコはラスボスではなく、間違いなく妹として、娘としてそこに在った。フーカは自分よりもずっと幼い妹を、後ろからぎゅうと抱き締める。

    「お姉さま?」
    「アタシも、好きよ。恋とは……違う気がするけど。明日、一緒にお出掛けでもしよっか! ショッピングして、スイーツをたんまり食べに行くわよ!」
    「素敵な姉妹(きょうだい)愛ですわ。姉妹水入らずでの魔界デート、満喫して来てくださいね」
    「まあそのデート代はプリニーとして汗水流して働くか、何かしらで用立てするかの必要があるだろうが……あてはあるのか?」

     彼女の働きぶりを良く知る教育係の狼男がそう問えば、図星にフーカは腕組みする。

    「……そうね、心を鬼にしてその辺の悪魔たちから寄付を募ってくるわ。可愛い妹のためだもの、仕方ないわよね」
    「それ強奪って言うんじゃないのか? 女ってやっぱりこえー……」
    「随分魔界に馴染んできたではないか、小娘。最早、人間界には帰れまい」

     くつくつと笑う吸血鬼は楽しげに、二袋目のナッツフィッシュに手を伸ばす。姉からお餅食感のチョコレート菓子を手渡されたデスコはもちもちと咀嚼しながら話のバトンを次のメンバーへと繋ぐ。

    「エミーゼルさんは好きな人、いるデスか?」
    「ぼ、ボク?」

     クリームソーダを飲む手を止め、彼は唸りながらストローをくるりとひと回しさせた。強欲の天使アルティナ、世界を滅ぼす最終兵器デスコ、そして今しがた悪魔から金銭の強奪を宣言したフーカ。三人の顔を前にして少年はぽそりと呟いた。

    「お淑やかな人がいいかな……」

     エミーゼルの正直な物言いに、女性陣が一斉に無言でニコニコと厳しい視線を送る。

    「小僧、口は災いのもとだぞ」
    「何も変なことは言ってないだろ!?」
    「まあ、強い女に振り回されるぐらいの方が上手くいったりするものだ。心を強く持て」

     男二人から生温い同情を寄せられてエミーゼルはなんでだよ! と涙目で訴える。

    「で、でも、確かに強い人は格好いいと思う。我が強いと言うよりも、我のある人。自分が何をなすべきか分かっている人……そういう人には憧れる……かな」

     一同は、少年の憧憬の影に父親ハゴスの姿を見て、柔らかい視線を送る。伏目がちに話すエミーゼルはしかしそのことに気付かない。けれど息子はいつか、自分では気付かぬうちに父の背中を越えていくだろう。

    「はい、じゃあ次! ヴァルっちのタイプってどんな人?」
    「……」
    「あれ、フェンリっち止めないんだ? まさかヴァルっちのタイプ、気になっちゃってるわけ?」
    「やかましい!」

     きゃんきゃんと喧しい二人を横目に耳を塞ぐヴァルバトーゼは一通り言い合った頃を見計らい、そろりと耳から両の手を離す。

    「タイプというのはどういうことだ」
    「どう言う人と一緒にいたいか、ってことよ!」

     しばらく考え込んだのち、吸血鬼は口を開いた。

    「吸血鬼という種族は個体数が少なく、群れで過ごすという習慣がない。それ故、基本的に一緒にいたいということはないのだが……それでも実際、共に過ごしたのはフェンリッヒぐらいだ。ざっと四百年以上になるか」
    「か、閣下……! 私も、後にも先にもお慕いするのはただ貴方様だけでございます……!」

     声が上ずり、尾は揺れ……喜びを隠せないフェンリッヒへ一同は気恥ずかしそうな、あるいはやれやれという視線を送る。フェンリッヒ、酒飲んでたか? いえ、これはシラフでしょう。平常運転デス。そんなやりとりの最中、フーカは手元のココアをぐいと飲み干す。カップの底で溶け切らなかったチョコレートがどろりと甘ったるい。こぼしたため息までもがまるで砂糖に塗れているようだった。

    「あーあ。もっと乙女チックな恋バナがしたかったのに。これじゃあいつもの展開じゃない……でも、良かった」

     何がだ? フェンリッヒの飛ばすハートマークを押しのけてそう問うヴァルバトーゼにフーカはとびきりの笑顔を見せる。彼女は、まだ中学生だ。そして、中学生のままで、いつかこの夢を受け入れる。

    「地獄にだって、まがいなりにも恋があるんだって分かったから!」

     女の子は好きなものに囲まれて、恋をしなきゃいけないの! そう言って風祭フーカはきらきらと笑った。

     彼女たちのどんちゃん騒ぎはその後も夜通し続いていき、フェンリッヒの反対を押し切ってパジャマパーティーへともつれ込む。やがてやって来たほの明るい朝。はしゃぎ疲れ、あるいは夜通しの気苦労で疲弊し、目を覚まさない悪魔と天使。そして夢見る少女のことを、白い下弦の月がそっと見守っていた。


    fin.
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    MOURNING世の中に執事閣下 フェンヴァル ディスガイアの二次創作が増えて欲しい。できればえっちなやつが増えて欲しい。よろしくお願いします。【それは躾か嗜みか】



    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
    吐精したばかりの下半身に再び指を這わせると、ただそれだけで熱っぽ 4007

    last_of_QED

    DOODLEディスガイア4に今更ハマりました。フェンリッヒとヴァルバトーゼ閣下(フェンヴァル?執事閣下?界隈ではどう呼称しているのでしょうか)に気持ちが爆発したため、書き散らしました。【悪魔に愛はあるのか】


    口の中、歯の一本一本を舌でなぞる。舌と舌とを絡ませ、音を立てて吸ってやる。主人を、犯している?まさか。丁寧に、陶器に触れるようぬるり舌を這わせてゆく。舌先が鋭い犬歯にあたり、吸血鬼たる証に触れたようにも思えたが、この牙が人間の血を吸うことはもうないのだろう。その悲しいまでに頑なな意思が自分には変えようのないものだと思うと、歯痒く、虚しかった。

    律儀に瞼を閉じ口付けを受け入れているのは、我が主人、ヴァルバトーゼ様。暴君の名を魔界中に轟かせたそのお方だ。400年前の出来事をきっかけに魔力を失い姿形は少々退行してしまわれたが、誇り高い魂はあの頃のまま、その胸の杭のうちに秘められている。
    そんな主人と、執事として忠誠を誓った俺はいつからか、就寝前に「戯れ」るようになっていた。
    最初は眠る前の挨拶と称して手の甲に口付けを落とす程度のものであったはずだが、なし崩し的に唇と唇が触れ合うところまで漕ぎ着けた。そこまでは、我ながら惚れ惚れするほどのスピード感だったのだが。
    ……その「戯れ」がかれこれ幾月進展しないことには苦笑する他ない。月光の牙とまで呼ばれたこの俺が一体何を 3613

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    last_of_QED

    Deep Desire【悪魔に愛はあるのか】の後日談として書きました。当社比アダルティーかもしれません。煩悩まみれの内容で上げるかどうか悩むレベルの書き散らしですが、今なら除夜の鐘の音に搔き消えるかなと駆け込みで年末に上げました。お許しください…【後日談】


    「やめ……フェンリッヒ……!」

    閣下との「戯れ」はようやくキスからもう一歩踏み込んだ。

    「腰が揺れていますよ、閣下」
    「そんなことな……いっ」
    胸の頂きを優しく爪で弾いてやると、我慢するような悩ましげな吐息でシーツが握りしめられる。与えられる快感から逃れようと身を捩る姿はいじらしく、つい加虐心が湧き上がってしまう。

    主人と従者。ただそれだけであったはずの俺たちが、少しずつほつれ、結ばれる先を探して今、ベッドの上にいる。地獄に蜘蛛の糸が垂れる、そんな奇跡は起こり得るのだ。
    俺がどれだけこの時を待ち望んでいたことか。恐れながら、閣下、目の前に垂れたこの細糸、掴ませていただきます。

    「閣下は服の上から、がお好きですよね。着ている方がいけない感じがしますか?それとも擦れ方が良いのでしょうか」
    衣服の上から触れると肌と衣服の摩擦が響くらしい。これまで幾度か軽く触れ合ってきたが素肌に直接、よりも着衣のまま身体に触れる方が反応が良い。胸の杭だけはじかに指でなぞって触れて、恍惚に浸る。

    いつも気丈に振る舞うこの人が夜の帳に腰を揺らして快感を逃がそうとしている。その姿はあまりに 2129

    last_of_QED

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    この飢えはなんだ、渇きはなんだ。
    どんな魔神を倒しても、どんな報酬を手にしても、何かが足りない。長らくそんな風に感じてきた。
    傭兵として魔界全土を彷徨ったのは、この途方も無い飢餓感を埋めてくれる何かを無意識に捜し求めていたためかもしれないと、今となっては思う。

    そんな記憶の残滓を振り払って、柔い肉に歯を立てる。食い千切って胃に収めることはなくとも、不思議と腹が膨れて行く。飲み込んだ訳でもないのに、聞こえる水音がこの喉を潤して行く。

    あの頃とは違う、確かに満たされて行く感覚にこれは現実だろうかと重い瞼を上げる。そこには俺に組み敷かれるあられもない姿の主人がいて、何処か安堵する。ああ、これは夢泡沫ではなかったと、その存在を確かめるように重ねた手を強く結んだ。

    「も……駄目だフェンリッヒ、おかしく、なる……」
    「ええ、おかしくなってください、閣下」

    甘く囁く低音に、ビクンと跳ねて主人は精を吐き出した。肩で息をするその人の唇は乾いている。乾きを舌で舐めてやり、そのまま噛み付くように唇を重ねた。
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    DOODLE【10/4】ヴァルバトーゼ閣下🦇お誕生日おめでとうございます!仲間たちが見たのはルージュの魔法か、それとも。
    104【104】



     人間の一生は短い。百回も歳を重ねれば、その生涯は終焉を迎える。そして魂は転生し、再び廻る。
     一方、悪魔の一生もそう長くはない。いや、人間と比較すれば寿命そのものは圧倒的に長いはずであるのだが、無秩序混沌を極める魔界においてはうっかり殺されたり、死んでしまうことは珍しくない。暗黒まんじゅうを喉に詰まらせ死んでしまうなんていうのが良い例だ。
     悪魔と言えど一年でも二年でも長く生存するというのはやはりめでたいことではある。それだけの強さを持っているか……魔界で生き残る上で最重要とも言える悪運を持っていることの証明に他ならないのだから。

     それ故に、小さい子どもよりむしろ、大人になってからこそ盛大に誕生日パーティーを開く悪魔が魔界には一定数いる。付き合いのある各界魔王たちを豪奢な誕生会にてもてなし、「祝いの品」を贈らせる。贈答品や態度が気に食わなければ首を刎ねるか刎ねられるかの決闘が繰り広げられ……言わば己が力の誇示のため、魔界の大人たちのお誕生会は絢爛豪華に催されるのだ。
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