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    last_of_QED

    @last_of_QED

    ディスガイアを好むしがない愛マニア。執事閣下、閣下執事、ヴァルアルやCP無しの地獄話まで節操なく執筆します。デ初代〜7までプレイ済。
    最近ハマったコーヒートーク(ガラハイ)のお話しもちょびっと載せてます。

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    last_of_QED

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    魔界の転生システムについて。
    執事閣下🐺🦇はじめまして、私の想い人。

    #ディスガイア
    disgaea
    #執事閣下
    deacon
    #フェンヴァル
    fenval

    はじめましてを何度でも【はじめましてを何度でも】



     転生。悪魔がより強大な力を得ることを目的として、代々魔界に伝わる禁忌術。現代となってはそのシステムは仔細解明され、下級悪魔ですら当然のように享受し、利用することの出来る術式となっている。最早確立されたこの仕組みを疑う者は魔界広しといえど、いないだろう。
     しかし、どんなシステムにも瑕疵(バグ)は付き物。転生して、本当にまた"自分として生まれ変われるか"……そんな不安が時折よぎると言ったら、貴方は笑うだろうか。

     此処は魔界、暗黒議会前。間も無く議会は閉会となり、重々しい扉が開くその時を迎えようとしている。曲がりなりにも暗黒議会を通すのだ。友好的だった議員の裏切り等の一定の不確定要素はあれど、力で捻じ伏せることがない限り、議会による決定は絶対。再び同じ者として転生出来ることは頭では分かっている、分かっているのだが。

     打ち付けるような雨の音がガラス越しにも聞こえてくる。哭の月に入ってからというもの、随分と長雨が続いている。晴れる夜はほとんどなく、ここしばらくは月の光を浴びていない。それ故、柄にも無く少しナーバスになっているのかもしれない。そんな俺の心持ちをよそに、携帯袋に格納していたはずのウンディーネの弓がひとりでに出て来て、浮遊しては雨を喜んでいる。

     きちんとヴァル様の隣に並び立てる俺に転生出来るのか。主人へのこの想いを一分も変わらず引き継いだままに生まれ変わることが出来るのか。此処に至るまでの全てを、忘れてしまうのではないか。
     転生を繰り返し、強くなればなるほど、そんな不安がよぎるようになった。閣下の執事としてではなく、ただの狼男として強く生まれ変わっても、そこになんの意味があるだろうか。

     議会の扉が解き放たれると禍々しい気配が突風を帯びて溢れ出る。今日は我が主人ヴァルバトーゼ様の転生の日。閣下のマントには念のため、多数の賄賂を忍ばせておいた。あらかじめ根回しも済んでいる、議員の買収は何ら問題なかっただろう。
     議会から颯爽と出てきたレベル1の主人が此方を見やる。議題は無事に可決されたらしい。俺を見るなりふっと緩められた穏やかな表情に、ああいつものヴァル様に転生出来たのだと密かに安堵する。

    「此度で何度目の転生だ、フェンリッヒ」
    「はい、これで13度廻りました。日に日に強くなられますね、閣下」

     俺はきっと何度生まれ変わってもこの人のことを思い出す。システムエラーで記憶が失われたとしても、過ごした日々をいつかはきっと取り戻す。けれど、閣下は。14度目も俺を記憶して生まれ変わってくださるだろうか。その確約はどこにあるというのだろうか。
     いっそ、全て忘れて血を飲めるようになってくれればそれでも良い。だが、主人が何もかも──俺のことを忘れても、血を飲まぬ約束だけは忘れること等ないのだろうという己の予感が、妙に腹立たしかった。

    「それにしても心配性だな?」

     最早転生程度でゴネる議会ではないだろう、金の延べ棒やら小判やら……重くて敵わんわ。そう言って主人がベルベットのマントをひらと翻せば光るアイテムの数々が重い音を立てて足元にこぼれ落ちた。

    「次はお前の番だが……フム、何か言いたげな顔をしているな」
    「……閣下、転生は絶対でしょうか。私はまた、貴方のシモベとして生まれ変わることが出来るのでしょうか」
    「どうだろうな。絶対的とまで謳われた誰かの力もいつか地に堕ちたように、絶対など、この世に在りはしないのかもしれんな」

     らしくないではないか。なんだ、何かの手違いでプリニーに成り果てるかもしれぬと怯えているのか? その時には俺が再教育してやろう。……そう愉快そうに笑う閣下は、間違いなく俺の知るヴァルバトーゼ様だった。

    「申し訳ありません、世迷言を」
    「なに、謝ってくれるな。それに、魔物に生まれ変わろうが、記憶を失ってしまおうが、はじめましてからまた始めれば良い。それだけの時間が、今の俺たちにはあるではないか」

     閣下の言葉は背を押されるような、時として腕を引っ張られるような、少なくとも人を前向きな気持ちにさせる不思議な優しさと強引さを持っていた。いつもこの人から感じるのは、くらむほどの眩しさだ。

    「さあ、行ってこい」

     閣下の手を取り、手袋の甲にそっと忠誠を誓う。記憶は失われるどころか、生まれ変わる度に強固なものとして魂に刻まれていくのだろう。転生システムを信頼したというよりも、主人の言葉に確信した。

    「行って参ります、閣下」





     雨が降り続いている。
     天から落ちてくる雫は世界中に恵みを与え、時に災厄を引き起こし、最後、箱の底である地獄にまで落ちてきて、灼熱の焔に蒸発する。蒸発したそれはこれまで経由してきた世の全てを含んで、再び天へと還っていく。そして今度は雲へと生まれ変わり、雨を生み、再び各世界に重みを持って落ちていく。つゆも変わらず来た道をまた、箱の底に落ちるまで繰り返し辿る。
     そこに今更何の疑いがあるだろうか。とある雨一粒がその摂理を逸れ、これまで来た道の一切を忘れてしまったと言うのなら。その時は、地の底で待つ地獄の業火が何度でも迎え入れ、これまで辿ったのと同じだけの回数、燃やし尽くしてくれるのだろう。

     議会への扉を開ける。重く軋む音が響けば物々しい表情の議員たちが顔も上げず、目だけでちらと此方を見る。
     俺はもう恐れることはない。幾度でも転生し、貴方の力となりましょう。また巡り会えるようにと小さく願い、評決を開始する。結果を待つ間の手持ち無沙汰にポケットに手を差し入れると、覚えのないレジェンドランクのイワシが入っていた。賛成多数で議題が承認されれば瞬く間に足元に魔法陣が展開され、その時が来る。

     外で雨の打ちつける音が響いている。
     私はきっと貴方と、何度でも巡り会う。


    fin.
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    last_of_QED

    DOODLEガラハイ🐺🦇【stand up!】
    お題「靴擦れ」で書きました。ハイドがストーカーに刺された過去を捏造しています(!?)のでご注意ください。

    ガラさんとハイドには、互いの痛みを和らげてくれる、一歩を踏み出すきっかけになってくれる…そんな関係にあってほしいです。
    【stand up】「ガラ、休憩だ」

     背後から名を呼ばれ、狼男は足を止めた。気配が背中まで迫って来るや否や、声の主はウンザリだとばかり、息を吐く。

    「休憩って……おれたち、さっきまでコーヒートークに居たんだよな?」

     両名は確かに五分前まで馴染みの喫茶店で寛いでいた。ガラハッドとゾボを頼み、バリスタ、それから偶然居合わせたジョルジと街の噂や騒動について会話を交わし別れたばかりだ。にも関わらず再び休憩を所望するこの友人をガラは訝しんだ。傾き始めた陽のせいかハイドの表情は翳り、どこか居心地が悪そうに見えた。

    「具合でも悪いのか?」
    「……ああ、もう一歩も歩けそうにない。助けてくれ」

     かつて、オークに集団で殴られようが、ストーカーに刺されようが、皮肉を吐いて飄々としていた男が今、明確に助けを求めている。数十年に及ぶ付き合いの中でも初めてのことで、ガラは咄嗟にスマートフォンに手を掛けた。「911」をコールしようとした時、その手を制止したのはあろうことかハイド自身だった。
    1434

    last_of_QED

    DONEガラハイ🐺🦇【As you wish, Mr.Hyde.】
    バレンタインのお話🍫Xにてupしたもの。記録用にこちらにも載せておきます✍️
    【As you wish, Mr.Hyde.】 今にも底の抜けそうな紙袋が二つ、どさりとフローリングに下ろされる。溢れんばかりの荷物、そして良く見知った来訪者を交互に見比べて人狼が尋ねた。

    「なんだこれ」
    「かわい子ちゃんたちからの贈り物だ。毎年この時期事務所に届く。……無碍にも出来ないからな、いくつかはこうして持ち帰るんだ」
    「マジかよ……これ全部か……?」

     愕然とする人狼を横目に、ハイドは手が痺れたと笑うだけだった。今日は二月十四日、いわゆるバレンタインデー。氏に言わせれば、これでも送られてきた段ボールの大半を事務所に置いてきたのだという。

    「さすがは天下のハイド様だ……」
    「まあ、悪い気はしない」

     ソファに腰を下ろし、スリッパを蹴飛ばしてしまうと吸血鬼はくじ引きのように紙袋へと腕を突っ込んだ。無作為に取り出したファンレター。封を開き便箋を取り出すと、丁寧にしたためられた文字の列をなぞった。一通り目を通した後で再び腕が伸ばされる。次にハイドが掴み取ったのは厚みのある化粧箱だった。リボンを解けば、中には宝石にも見紛うチョコレートが敷き詰められていた。どれにしようかと迷う指先。気まぐれに選んだ一つを口の中に放り込んだ時、ガラがおもむろに通勤カバンを漁り始めた。
    1853

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