党員との日常銀狼と盗賊の夜
月明かりも遮る鬱蒼とした森の暗闇に紛れてフェンリッヒと彼の二匹のクーシーたちは静かに移動していた。そして目的の地点である森の端まで来るとクーシーたちの足を身振りで止めて、木々の隙間からフェンリッヒがそっと様子を覗く。
眼前に広がるのは堅牢な要塞、よほど大事なものをしまい込んでいるのか建物の周りには高い塀が築かれ、おまけに定期的に悪魔の巡回があり、こんな夜更けであろうと隙が無い。おまけに事前の調べから魔法のセキュリティも完備していることが分かっている。何でもどんな侵入者であっても一瞬で見付かり、消し炭にされてしまうそうだった。なるほど手強い、しかしこれを落とさなくてはいずれ主の行く手の障害となってしまうことは明白だった。それなら退くわけにはいかない。
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