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    kanamisaniwa

    pixivメインに二次創作(刀剣乱舞、ツイステ、グラブル、FGO等)やってます。超雑食でオリキャラ大好き病を患う腐女子です。ポイピクにはかきかけだったりネタだけの文章を投げたいです。

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    kanamisaniwa

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    【ヒットマンパロdeベリファー】
    (※支部で書いてるパロの続き?です)

    空の世界で悔しくも特異点に敗北してから幾百月。ベリアルがただの人間として青い海と丸い大地に生を受けたとき、ベリアルは至極全うな健全な人間であった。
    "昔"、つまり空の世界での知り合いに会ってこの話をするたびにダウト!と叫ばれるのだが、事実なのだから仕方ない。それどころか、生まれたときは10年いきられないかもしれないと言われるほど病弱で、死神から命を守り長生きできるようにとの願いから悪魔に由来する『ベリアル』と名付けられ、優しい父と美しい母と平凡で退屈でそれゆえに大切な人生を歩み始めていた。嘘のような本当の話だ。
    そして、その時点では"堕天司ベリアル"の意識は覚醒しておらず、ただの人の子として毎日をいきていた。
    だが、そんな平凡な人間としての人生は突然奪われることになる。
    先祖代々の土地を狙ってきたマフィアに両親が殺されたのだ。無惨に銃で撃ち殺された両親の血塗れの死体の横で呆然とする幼いベリアルを、マフィア達はにやにやしながら眺め、
    「子供はボスに土産に」「いや売った方が金になる」「きれいな顔立ちをしてる、飼ってやっても」「どのみち獣(ペット)同然」
    とげらげらと笑いながら皮算用していた。
    そんな嘲笑を浴びるままのベリアル少年は、泣くことも叫ぶこともなく…つうっと唇の端を吊り上げた。

    (オーケイ、ヤろうじゃないか)

    そんな表情に気づかず乱暴にベリアルの腕をつかんで引きずるマフィア達にベリアルー堕天司ベリアルの意識を覚醒させた彼は、舌なめずりしながら内心で嘲笑した。

    (この俺を飼うだって?いいねぇ、馬鹿も突き抜けるといっそ愉快だ…俺を飼えるのは創造主(ファーさん)だけだってのに。く、くくく、さぁて、どこから崩してやろうか)

    狡知を司る獣の顔で、ベリアルは曇るばかりの空を見上げた。
    その日からわずか数年後、マフィア内外で大きな抗争が勃発しベリアルの両親を殺したマフィア達はもとより見て見ぬふりをした地域住民や賄賂を受け取って無視した警察をも巻き込んでその地域全体が紛争状態となり、やがて国全体に混乱が拡散、国家非常事態宣言が出されるまでとなった。
    その原因を作った少年は、その頃にはマフィアからちょろまかした莫大な財産ごと悠々とアメリカに脱出し、故郷の混乱を酒を片手にゲラゲラ笑いながらテレビ越しに眺めていた。

    それからベリアルは青年期をアメリカの犯罪組織やら地下組織やらを転々としたり南米の独裁国家に入り込んだりしながら、その飛び抜けた狡猾さを買われてありとあらゆる犯罪に手を染めた。まさに悪徳の獣の所業で、正規の警察やスパイ組織では捕らえるどころか姿を捉えることもできないベリアルは世界中のアンダーグラウンドで一目おかれる存在になっていた。
    かつて司った狡知そのままに、しかし手綱を握るものがない今、ベリアルはまさに獣同然だった。
    主人のいない獣。
    ベリアルは己をそう認識し、それゆえになりふり構わず本能だけで生きてきた。
    創造主が、ルシファーがいない。
    その一点ゆえにこの世界に価値など見いだせないベリアルにとって今の世界も人生も命さえ暇潰しの道具程度でしかなかった。
    だからこそ、飽きもせずに自分を捕まえに来たのか殺しに来たのかそんな特殊部隊との駆け引きの最中に人生最大の失敗をすることになった。
    世界最大のマフィアの私兵よりもアメリカ軍特殊部隊よりも手強いその部隊との駆け引きが長くなり、めんどくさくなっていっそトップを暗殺して混乱させようと意気揚々と"統括"とよばれた男のもとへ何人も騙して殺した末に近寄って。
    その男の横顔を遠目に見たとき、なにもかも放り出して叫んでしまったのだ。
    『ファーさん!!』
    と。その瞬間、追い付いてきていたらしい特殊部隊の一人に後ろから頭をわし掴まれ足払いをかけられそのまま床に叩きつけられた。やったのはかつての竜殺し、ジークフリートだった。
    顔面から叩きつけられ、流石にくらくらするベリアルをジークフリートは組伏せ、さらに追加で追い付いたパーシヴァルが腕をひねりあげた。
    完全に万事休す。
    そんなベリアルにこつこつこつ、と足音をたてながら近づいた男は、ベリアルがかつての創造主の名を呼んだ男は、ベリアルを見下ろしながら言った。

    『…まさかと思ったが、本当に君だったとは。ベリアル。残念だが、私は君が望む友ではない』

    創造主と同じ顔で同じ声で、しかしまったく違う男、ルシフェルだと認識して、ベリアルは自分のうかつさと敗北を認めた。
    が、転んでもただでは起きないのがベリアルだった。
    すぐに狡知の顔を取り戻したベリアルは、ルシフェルが率いる暗殺組織に拘束されている間、「そういえば某国の大統領機撃墜事件で思い出したことがあるんだけときかないかい?」などと過去に自分がかかわった悪事の一端を仄めかし、各国の情報部が喉から手がでるほどほしがるそれをちらつかせて自分の価値を上げ、そして最終的に苦い顔をするルシフェルと直接取引して暗殺組織の一部にちゃっかり収まった。
    ルシフェルを筆頭にお目付け役に抜擢されたジークフリートそのたあの頃の空で見た面々が嫌そうな顔をするなか、ベリアルは生まれてきて以来ではないかというほど機嫌がよかった。
    なにせあの空を生きた者が自分以外にいるということをベリアルはルシフェルを見つけてはじめて知ったのだ。
    それはすなわちベリアルにとって唯一絶対の創造主ルシファーもまたこの世界にいる可能性の証左でもある。
    これが祝福でなくてなんだろう?
    今も昔も神に中指突き立てる生き方をしている自覚があるベリアルは皮肉たっぷりにそんなことを思うのだった。



    暗殺阻止対象が普通の人間だったなら、適当な理由をつけて屋敷から連れ出してホテルにでも押し込み、ジークフリート達が暗殺部隊を始末するまでどこぞでお茶でもしていればいいのだが、対象が免疫不全患者で無菌室から出れない輩となると話はちがってくる。

    (あーあ、めんどくせ。とりあえずパニックルームにでも押し込むか。ここまで厳重に作り込んでんだ、そのくらいあるだろ)

    「おじゃましますよっと…」

    複雑、というより悪辣な電子ルームロックを多少時間をかけてしまったとはいえ手持ちの機器だけで解除したベリアルは悠々と室内に侵入した。

    寝室と思わしき部屋の中央には酸素ベッドが置かれ、半透明のカーテンの中で成人男性とおぼしき男が顔を伏せて横たわっているのが見えた。
    ベッドの周囲には点滴やらなにやらものものしい医療器具が並べられ、いかにも病人ですといった風景だった。

    (おいおい、これ暗殺されなくても遠くないうち死ぬんじゃないか?めんどくさいねぇ…)

    心底めんどくさい、と思いつつもベリアルは【R】と思われる男をなんとかしてパニックルームに押し込むべく声をかけた。

    「おーい、【R】さん。あんたこのままここにいたら殺されてしまうぜ?」

    「悪いけど担いででも…っ!」

    酸素ベッドのカーテンを捲って中腰で中を覗きこんだとき、ベリアルはそこに横たわっているのが人ではなく人形だと気づいた。
    その瞬間。
    ゴツ、と嫌な音をたてて背後から己の頭に押し付けられたそれ、十中八九銃口を感じてベリアルはそろりと両手をあげた。
    降参の意を示しつつ

    「迂闊、無用心、短絡、鈍感…嘆かわしい。俺が作った獣が、人に成ればこのざまか」
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    kanamisaniwa

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    三ヶ月後。
    アズール先輩からの提案で参加を申請したアジーム家雇用希望者の選抜試験当日、私はジャミル先輩、エリムさん、そして面白がってついてきたフロイド先輩(本当は諸々ド素人の私を心配してついてきてくれたのをちゃんと知ってる)と一緒に熱砂の国にあるアジーム家所有の別荘の隣に設置された試験会場控えにいた。
    エリムさん曰く、アジーム家所有の不動産の中では中規模ながら市街から遠くて使い勝手が悪く最低限の手入れしかしていなかった別荘で、確かに選抜試験をするには丁度良い物件だとか。なんなら爆発させても大丈夫ですよ、と言ったエリムさんの顔はわりとまじだった。
    そしてその別荘の隣に建てられた仮設の集合場所兼待機場所で簡単な説明を受けた。といっても事前にアズール先輩が収集してくれていた情報と内容はほぼ同じで、あえて追記するなら試験会場である別荘のあちこちにライブカメラもとい監視カメラが設置されていて、その映像はリアルタイム公開されるので別荘内の様子はもとより他の参加者の様子を逐次確認できること、そして本当に魔法でもなんでも使用可、建物への損害も免責するから全力で目標を破壊してみろ、という言葉が説明担当からあったことくらい。
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