ガイアがカーンルイアに付いた理由「なぁ、空。みてくれ、この国を。すべての神の恵みを拒否し、」
「この国そのものが罪。この国に生まれ落ちた時点で罪人だ。だが、俺は、俺達は生まれてしまった」
「モンドはジンが、アンバーが、リサが…ディルックが守る。璃月は鍾離先生が、シャオが守る。スネージナヤは、タルタリヤと…他の気骨のあるファデュイがいればなんとかなるだろ。じゃあ、カーンルイアは?」
「なぁ、俺の故郷は、誰が守ってくれるんだ?」
「カーンルイアの民は、アビスの魔術師になれる奴は幸運なんだ。肉体の維持すら出来ないのに神憎しでただただ怨嗟の言葉を吐き出すだけの泥みたいな奴、獣に堕ちて言葉どころか自分すら忘れた奴、歪な肉体をかかえてただ踞って七神とテイワットの民への呪詛を唱える奴…彼らが俺と同じ国に生まれた同胞だ。こんな俺の国を、俺の同胞を、守ってくれる存在はいないのか?
七神とテイワットの民への憎悪を捨て、
自己憐憫から抜け出し、
ただこの国を、同胞を守るために武器を取り、
この国にとどめをさすためにやってきた英雄達の前に立ちはだかる騎士はいないのか?」
「わかってる。そんな奴はいない。いるはずがない。
ここはもうなにもかもがどん詰まり。何処にも行けない、何処にも戻れない。この国そのものが罪。国民はすべからく罪人。救いなんか何処にもない。
でも、それでも、ただの一人もこの国を民を守る騎士がいないなんて…そんなの、あんまりにも俺達(カーンルイアの民)が哀れじゃないか」
「……だから、ガイアがその騎士になるの?」
「俺以外に誰もいないからな。しかたない」
「しかたない、って」
「愚劣の極み」
「幼き人の子にとって、親こそが神。貴様は神を呪い憎み否定しながら、己を神として信仰し恭順し従属せよと我が子に強要した。恥を知れ」
「"越権行為"が過ぎると警告しているんだ、"モラクス"」
「?!」
ぎょっとして鍾離が口を閉ざし、まじまじと斜め下を、無表情のまま歩を進めるウェンティを見つめた。
「ガイアはモンドの民、ならば僕の民だ。そしてカーンルイアの流儀に従うなら所有権も生殺与奪権もこの僕にある…もっとも、僕は本来自由を愛する神だから、そんな権利欲しくもない。けど、郷に入りては郷に従え、だ。余所の神が僕の民の所有権と生殺与奪権を主張するなら、真っ向から異を唱える第一の権利は僕にある。そうだろう、モラクス」
「……そうだな、出過ぎた真似をした。謝罪する」
「我が名は風神バルバトス、モンドを守護する七神の一柱。我が民ガイアを害する事は、絶対に許さない」
「ナニヲ勝手ナコトを!ガイアは我ラノ希望!カーンルイアの騎士!卑怯で薄汚イ神などに所有サレル謂れはナイ!!」
「その神の領地に幼子を捨てたのは誰だ!!!!」
「神(親)は決して我が民(子)を捨てることはない」