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    蒸し暑い夜の環壮

    微熱 寝苦しい夜だ。
     じんわりと肌に汗が染みてくる。隣で眠る彼は、涼しげな顔で寝息を立てている。
     シングルベッドで、成長期も過ぎた大人が二人して寝るなんて正気ではない。
     しかも、このベッドには人間二人にぷりん一匹も陣取っているのだ。薄っすらと開けた窓からは、夏の夜風が漂ってきた。
     隣で眠る恋人兼相方を時折、部屋に呼んでお喋りをしながら夜を過ごす。壁の方を向いて静かに寝ていた彼がくるりとこちらに寝返りを打つと、陶器のように白い肌がこちらを覗いた。
     いつもと変わらぬ顔であるのに、眠っているというだけで、こんなにも悪いことをしているように思うのだろう。
     睫毛長いな。
     お肌、つるつるだな。
     触ってもいいかな。
     その白くて柔らかそうな頬に、そっと手を伸ばして見るが、体温の低い彼は、俺が触れたら溶けて無くなってしまうのではないかと錯覚を起こしそうになる。
     彼を見つめるほどに心臓が、段々と大きな音を立ててうるさくて仕方がない。
     起きませんように、怒られませんように。男子高校生の好奇心をどうか許してください。神様にそうお願いして、もう一度、彼の頬をに触れようと手を伸ばした。
    「ねぇ、何しようとしたの?」
     ぱっちりと開いた彼の目に、ビクッと反応し、片手が床に落ちそうになる。
    「え、ちょ、起きてたん?」
    「寝てたよ。」
    「起きてんじゃん。」
    「何時だと思ってるの?」
     じとっとした目でこちらを伺う彼に触ろうとした、だなんて言えるはずもない。
    「もう寝る。」
    「さっき、何しようとしたの?」
    「寝るってば!そーちゃん、しつこい。」
    「ふーん。」
     拗ねたふりをして、ぎゅっと目を瞑りこのまま眠ってしまおうと思った。
     俺の頬に冷たい指先の感覚を感じると同時に、唇に温かさを感じた。それは一瞬の出来事で、俺が目を開けた時には犯人であろう彼は壁の方を向いてしまっている。
    「そーちゃん。」
     問いかけても返事はない。
     今度は俺の方から、彼の頬を突いて、それから上を向いた肩を押しやって天井を向かせた。
    「今度は、何?」
    「仕掛けたのはそっちじゃん。」
     彼のしっとりとしたおでこに唇を落として、それから頬、唇へとキスを落とした。
     白い彼の肌が、月明かりに照らされて白く、そしてほんのりピンクに染まる。
    「明日、オフだよ。」
    「知ってる。」
     暑い夜だ。
     微熱を持った指をそっと絡めた。
     
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