吸血鬼と人間の和平調印の場に、竜の一族代表のドちゃを届けるためのボディガードロナ君のうっすらラブコメ
喧噪の声すら届かないスピードで砂にした私を抱えた若者は縦横無尽に駆ける
(コイツの運動神経どうなっているんだ!?え・・もしかして今壁を走ってない?え)
腕に抱えられているとは言え、激しい上下運動左右移動に脳が揺られ、少々どころではなく酔う。
(う・・・本当に気持ち悪い)
『もうちょっと、優雅に運んでくれないものかね?』
砂になった状態であるのに、口からなにかが出そうになり苦言を呈せば
少々の間の後
「飛ぶから、しゃべってて舌かむなよ」
飛ぶという予備動作すらなく、それは一歩を踏み出した先に道がなかっただけのように
自然に落ちていく
『きゃあああああああああああああああ』
「うっせぇ」
10秒後にダン、という重い音とともに重力が戻ってくる感触
(うっそでしょ!?あの高さから落ちて大丈夫とか)
『・・君って実は人類の皮を被ったゴリラだったりしない?』
「うるせえ雑魚砂おじさん。おとなしく砂になっとけ」
『事後承諾すなぁぁぁぁぁぁあ』
(大幅に中略)
※まちにはいったときにはドちゃとロ君はチャラい格好に変装するといいよね
そう!あのDJみたいにさぁ!!
「こっちの国は夜でもまぶしいねぇ」
「お前んところは違うのかよ?」
私の前の席に陣取った若造はジュースをずぞぞぞと飲みながらサングラス下にある瞳は興味の色をともして聞いてくるその素直さがどうしようもなく可愛い。
「私たちは闇でも目がきくし、それに安全面を考えれば屋敷内だって薄暗くしておいた方がいいからね。ん、ちょっと薄いなぁ」
すすった廉価なミルクに舌を出せば
「わがまま言うなっつーの」
少しだけ血がにじんだ指先で唇を拭われる
「これならどうだ?」
(略)
※調印式会場に着いたーーー!って時
「お前のせいで!!!!!!」
叫び声振り返れば
ドンという細身の男を腕で抑えるようにしたロナルド君の、その腹から甘い匂いと花弁のような血液が空に舞った
「ッ!!ロナルド君!!!!」
一瞬の事だった
細身の男と一緒にどさりと地面に倒れた彼から命の赤が流れ出すその光景に
駆け寄ろうとした身体を、腕を握られて動きを封じられ
「離してください!!彼が!!!彼が!助けなければ!!!」
「卿、落ち着いて」
目の前でロナルド君に控えていたのだろう衛生兵が群がり、男を取り押さえるとともに
止血を施していく怒号のような指示が響く
広がる血液がじわじわと染める地面の面積が増えていくたびに焦燥が募るのに
一向に握られた腕から逃げることすらかなわない
目の前で
あの子が
血を流しているのに!!!
「離して!なんでそんな!彼は貴方の仲間でしょう?!あのままじゃ彼が!」
「卿が、今しなければいけないのは、アレに追いすがることではございません」
そうして
予備動作もなく、男は振り上げた手を下ろせばドスという音とともに
砂になっていく私の身体
「貴方を守るために砂になったうえで運ばせていただくことをご了承ください」
『くそったれ!!!!』