※怪我をしたことを隠すカイくん編
大丈夫大丈夫
丸くなって眠っていりゃ、そのうち治るんだから
あの人が守れなくなるような怪我じゃなけりゃ、全部全部大丈夫。
はぁ、と口から出る息は思ったよりも熱くて
(明日までにはどうにかさせねぇと。三春さん・・勘がいいから)
延々と明日の過ごし方のシミュレーションをしてみても、熱のためなのか朦朧とした頭では上手くいかなくて
はぁ、身体の熱がにげるようにとため息をこぼせば
ガチャリと隣の部屋から誰か・・というかこの場合は三春さんしかいないのだが
「センパイ・・どうしたっすか?」
ヤバいっと思ったのは一瞬だった
一瞬で、今起きたばかりの寝ぼけた声が出せたことに安心をしたのに
「カイザー君。右手出して」
ずかずかと俺が寝てるソファに寄ってきた三春さんは、有無を言わさない感じで
俺の手を握れば
「熱っつ!!え?熱まで出てんじゃん!!」とか「脈拍も早いって」とか「マジでこの怪我で動いてたの?」と一通り苦言を言いながら冷えピタを貼り、わきの下に凍ったペットボトルを当てたり、傷口に消毒液とガーゼ、とてきぱきと処理をしていく
「気づいてたんスか?」
「隠したいんだろうな、ってことも分かってたけど、何か?」
「バレバレじゃねぇっスか」
隠したかったのに
アンタを守るためについた傷なんて全然平気なんだから
「くそぉ。なんで気づくんっスか」
寝ころんだまま、怪我をしていない腕で目を覆えば
さらり、と細くて骨ばった指が髪を梳く
「うん。君が隠したいことは分かってたんだけどさ。でも俺がそれじゃ嫌だよ。」