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    菫城 珪

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    菫城 珪

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    オルセイ与太話

    オルセイSS 日々激務に追われる中、明日は待ちに待った待望の休みだ。
     足りない睡眠時間を補う為に存分に寝ようと思っていた俺はご機嫌で自分の寝室にいた。ふかふかなベッドには俺の好きな花やハーブをブレンドして作ってもらったサシェを仕込んである。肌触りの良いシーツにふわふわな布団も準備万端、安眠対策もバッチリだ。
     死ぬ程寝倒してやるぞー! と意気込みつつも眠る前の支度に髪をといていると、急に背後からのしりと熱が乗っかって来た。
     驚く間もなく腹に熱い腕が回された事で直ぐにその熱がオルテガだと気が付く。どうやら気配を消してこっそり入って来たらしい。猫科の動物か。
    「どうした。急に後ろから抱き着いてくるから驚いたぞ」
     俺の肩口に顔を埋めたまま黙っているオルテガの頭を撫でてやりながら櫛を置く。最近、こうして甘えてくる事が増えた気がするのが少し嬉しい。やはり甘やかされるだけよりも俺も甘やかしたいからな。
    「……今日」
    「うん」
     ぽつりと呟かれる言葉に返事をしながらゆっくりと彼が話すのを待つ。どうやら何か嫌な事があったようだ。
    「お前の噂をしている連中がいてな」
     おや、風向きが悪い気がする。俺の話題となるとそいつは穏やかではない。
    「それで?」
     努めて冷静に聞き返してやりながら少し硬い宵闇色の髪を撫でてやる。ふぅと吐き出された熱い吐息が首筋をくすぐるからつい体が震えてしまった。それに気がついたのか、オルテガがくつりと小さく笑う。
    「それが随分と下卑た話で聞くだけで非常に不愉快だったんだが……たった今どうでも良くなった」
    「なんだ、そんな中途半端な」
     気になる所で話をやめられて、最後まで話せと文句を言おうとしたが、腹に回った腕が不埒に這い回るのを感じて思わず口をつぐんだ。すり、と指先が臍の辺りを撫でて脇腹を伝う感触に背筋がゾクゾクする。
     は、と小さく息を吐き出せばオルテガの手が来ていた寝巻きの中に侵入してきて胸の方へと這い上がり、不埒な動きをし始めた。抵抗しようと服の上から彼の腕を掴むが、腕力で敵う筈もなく。逆にかりと指先で胸を刺激されてびくりと体が跳ねてしまう。
    「お前を穢す妄想を吐いている連中がいたんだが」
    「だからっ?!」
    「実物とは程遠い妄言だと思い直してな。彼等の話すお前は随分と下劣な様子だったが……実際のお前は想像も及ばぬ程美しく乱れる」
    「んん……っ」
     胸を捏ねくるように弄られて少しでも快楽から逃れようと背を反らせるが、背後から捕まってる以上逃げられない。そもそもがっつり抱き締められていて身動きすら怪しいこの状況。
    「もう寝るところだったのに……!」
     このところ仕事に追われて睡眠不足気味だったところにやっと来た待望の休みで、今夜は早寝して寝倒すつもりでいたのにいきなり頓挫しそうな俺は涙目だ。
    「早寝は諦めて少しばかり付き合ってくれ」
     甘い声でそう宣いながらオルテガが俺の後頭部にキスを落とす。オルテガのお強請りに弱い俺は思わず唸り声を零した。本当にこの男ときたら…!!
     これまでも少しで済んだ試しがないので今夜も間違いなく少しじゃ済まないだろう。それでも、甘えてくる恋人を甘やかしたい方が優ってしまった。
    「……明日はこき使ってやる」
    「仰せのままに」
     唸りながら呟いた恨み言は、背後から聞こえて来た嬉しそうな声音に取って喰われてしまうのだった。
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    じゅれ

    TRAININGbrnr盗賊団時代の日常のようなお話。えちちはないけどこの後してほしい。ネ口は面倒くさければ面倒くさいほど良い。
    夜寒を凌ぐには 次に狙っている宝物。今練っている作戦。誰を連れていき、どう立ち回らせるか。勝算の程度。危惧すべき点は何か。決行にあたるおおよその日程、等々。厨房の大テーブルに地図を広げて、ブラッドが語る。活力に満ちた、耳馴染みの良い低音だ。饒舌さからその自信の程も伺える。自ら危ない橋を渡ろうとする性分なのは苦手だが、生き生きとして、愉しそうにしているこいつを見るのは、結構好きだ。
     昼間よりもぐっと冷え込む冬の夜、敢えて起きている物好きはそうそういない。見張りを任された奴以外はそろそろ大人しく就寝しているだろう。そんな夜更け、明日の朝飯の支度を兼ねて食材を処理していた所にやってきたブラッドは「ちょっと耳貸せ」と言った。あいにく手元は忙しかったので、「耳だけでよけりゃ、いいよ」と返し、作業の片手間、男の声に耳を傾けた。楽観的な希望的観測ではなく、きちんと計算立てられ、緻密に企てられており、しっかりと現実味がある。ブラッドの作戦が失敗に終わることは、予想外の事態ーー例えば、他の北の魔法使いとバッタリ遭遇するとかーーを覗けば、まずない。それは決行前にかき集められる情報の範疇を越えている事象だから、もはや運としか言いようがないものだ。それでも、その万が一を想定して思案している所は、やはり抜かりがないというか、俺も含め、皆が安心して付き従う所以なのだと思う。
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