十万円の彼 寒さと空腹、貧血と頭痛と身体の痛みと、そんな全ての体調不良と共に目覚めた場所は、全く知らぬ地だった。
ここはどこだと足を引きずって彷徨い歩いて歩いて歩き、何かにつまづいて転んでしまう。
体力も精神も全てが限界で起き上がれず、気絶するように瞼を閉じてしまった。
そして次に起きた時は、また見知らぬ場所。
手足に枷をはめられ、猿轡をはめられ、劇場の壇上のような場所に転がされていた。
観客席のような場所には若者から老人まで、不思議な格好をした男女が座っている。人間が多いが、数人、吸血鬼もいた。暗い観客席に座る人達の顔までハッキリ見える事に違和感を抱く余裕もなく、クラージィの横に立つ男性が何かを話す。
「 」
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