タイトル未定 ぬらぬらと。
リノリウムの床をべったりと濡らした跡が這う。
ずるり、べた。ずるり、べた。
ホラーじみた音を立てて這うのは、辮髪の大男だ。
脂汗で全身を濡らしながら、腹から流れる血をそのままに、常夜灯の幽かな明かりを頼りに床を這う。
ぜえぜえと息を切らしながら、歯を食いしばり文字通り[[rb:汗血 > かんけつ]]を流しながら這いずっている。今にも気絶しそうな意識を、歯を食いしばって、撃ち抜かれたばかりの腹の痛みで、どうにか引き上げて這っている。
そうまでして、一体どこへ行こうというのか。
昼間、同僚である乾に聞かされた話が原因だ。
「タケミっちが……?」
「ああ。マイキーにやられたらしい。相当な重傷だ。死者も出たらしいが、花垣は無事だ」
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