別離 どこか適当な死に場所を見つけて人目を避けて死ねればいいとも思って始めた冒険だった。出会いと別れを繰り返して自分より先に死ぬもの、何かを遺して逝くもの、それらに託されたものが知らず知らずに増えていった。傷と皺の増えた彼の頬を彼女の指がそっと撫でる。適当なところで見切りを付けて貰いたかったが、思っていた以上に粘り強く永く彼女は付き合ってくれた。申し訳ないなと言うと今更と微笑まれる。良い旅だった?尋ねてきた彼女にお陰様でと返す。満足気に頷いた彼女の悔いはない?という問いに短く息を吐いた。残して逝くのが悔しい、と伝えるのは狡いと思うが最期の我儘だと許してほしい。