Recent Search
    You can send more Emoji when you create an account.
    Sign Up, Sign In

    mitotte_kazu

    @mitotte_kazu

    自機ルガオスとエタバン相手のヴィエラとかよそよその話とかNPCよその話とか置いとく場所。
    リアクションとても嬉しいですありがとうございます

    ☆quiet follow Yell with Emoji 💖 👍 🎉 😍
    POIPOI 82

    mitotte_kazu

    ☆quiet follow

    暁月辺りでオルシャに降り立った頃ぐらいの🦍と🐇さんのお話

    #ディンエラ

    観光※捏造を含みます


     初めて降り立つ土地の空気の中で微かに潮の香りを感じ、海に面した土地なのだと再認識する。きょろきょろと興味深そうに周囲を見渡すヴィエラをルガディンは眺めていた。同じ海に面した都市でもリムサロミンサとはまた異なる空気だと目を細めた彼と、見上げてきた彼女の視線がかちあう。
    「……初めて来るとこでしょ?なんでそんな落ち着いてるの」
     可愛くない、と唇を尖らせた彼女に苦笑する。
    「初めてといえば嘘になるか」
     港から微かに見える巨大なエーテライトに視線を移した彼が小さく呟いた。不思議そうに首を傾げた彼女から、なんでもないと目を逸らす。教えてくれるまで離れない、と抱き付いてきた彼女をやんわりと引き剥がしながら、彼は溜息を吐いた。
    「……巴術師の時に、学者などの交流会で少し滞在しただけだ」
     大した事じゃないと引き剥がした彼女が再度抱き着いてくる。それじゃあさ、と目を輝かせた彼女が見上げて来た。
    「案内してよ、オールドシャーレアン」
     案内、と鸚鵡返しをしたルガディンにヴィエラが力強く頷いた。彼の隣まで移動し、覗き込む彼女が首を傾げてくる。
    「綺麗な展望とか、美味しいお店とか、知らない?」
    「知らん」
     躊躇も考え込むこともなく即答した彼に嘘ぉ!と彼女が声を上げた。長期間の滞在でもなければ観光もしていない、と付け足した彼に彼女は悲壮な表情を浮かべる。
    「……そんなに娯楽に貪欲に思われても応えられる自信がないぞ」
     彼が釘を刺すと、そんな訳ないでしょ、と服を掴んできた彼女に揺さぶられた。溜息混じりにあー……と彼が呟き、口を開く。
    「限局的かつ偏っていてもいいなら」
    「もちろん!」
     ぱ、と手を離して親指を立てた彼女の前で、揺さぶられた勢いがまだ残っている彼が微かに首を振り、頭を抑えた。

     まずは、と連れてこられたラストスタンドの眺めの良いテラス席に二人は腰を下ろす。
    「どれがオススメ?」
     向かい合う形でメニューを広げたヴィエラが耳を揺らしながらルガディンに尋ねた。メニューに目を走らせ、視線を彼女に向ける事なく彼が口を開く。
    「俺がこういう所に来ると思うか?」
    「ううん全然」
     間髪入れず返した彼女がごめん、と添えると彼の指がメニューを差した。
    「ハンバーガーが美味いとは聞いた」
     後は知らん、と口を閉ざした彼に、彼女はにんまりと口角を上げる。甘いのも欲しいな、と呟きメニューを持ち上げた彼女に食える量だけ頼めよ、と彼が釘を刺した。
    「そっちも手伝ってくれるんでしょ?」
    メニューから目を離さず言い切ったヴィエラに、何か言い返そうと口を開きそのまま黙したルガディンへとねぇ、と彼女が声をかける。
    「これ、どっちにする?」
     両方美味しそうなんだけど、と真剣な表情の彼女に、苦笑して両方頼めばいい、と彼が返した。
     テーブル一面に並べられた注文の品を眺めたヴィエラはばかの食卓だ、と楽しそうに呟く。愚者の食卓とはオールドシャーレアンで形容するには些か皮肉のようにも思える。栄養も胃袋の容量も考慮せずただ食欲の赴くまま頼んだように思える量と内容に彼は苦笑して頷いた。店員に声をかけて持ってきてもらった取り皿に食べたいものを取り分け、二人は手を合わせる。
    「ん。このスープ、美味いな」
    「このお芋のやつも美味しいよ」
     感想を述べながらフォークやナイフを進めていく。ふふ、と笑った彼女に彼が視線を向けた。
    「一人だったら、こんなに沢山堪能できないねぇ」
     ケーキを一口頬張り、幸福そうに微笑んだ彼女に彼も同意し、マグカップを傾ける。
    「ディンは一人でも食べられそうだけど」
    「それはそうだが」
     ひどい偏見だと付け足しながらカップを机に置き、頬杖をついて彼女を眺めた。パンや副食、デザートを少しずつ堪能していた彼女がそろそろ限界かも、と取り皿を机の中央に動かす。満足したか?との彼の質問に満面の笑みで答えた彼女が食べきれなかった分に、ルガディンは手を伸ばした。
    「マジで全部食べちゃった……!?」
    「食うだろう」
     残すぐらいなら、と空になった皿を重ねながら、彼が付け足す。
    「これでもグリダニアのしがない農村の出だぞ」
     残すぐらいなら頼まない、と合わせた手を開いて重ねた食器を返却する場所を探すように周囲を見渡した。目的地を見つけたように立ち上がった彼に、ふぅん、と呟いた彼女が続いた。
     美味しかったねぇ、と満足そうに呟いたヴィエラにそうだなとルガディンが同意する。
    「美味しい店、知ってたじゃん」
    「ここに来る人は大体知ってる所だぞ?」
     誇らしげに披露する程でもない観光名所みたいなものだと苦笑した彼に、卑屈だなぁと彼女もつられた。
    「それでも連れてきたいって思ってくれたのが嬉しいんだよ」
     無邪気に微笑みかけられてぐ、と彼が言葉を飲む。小さく溜息を吐き案内を強制されたのもあるけどな、と心の中で呟くと、何か言った?と彼女が彼の腕に抱き着いてきた。特に何も、と返した彼にまだ彼女の視線が向けられる。
    「……まぁ、気になってたラストスタンドに行くいい切っ掛けになったな、とは」
     思ってる、と頬をかいた彼に彼女はにんまりと頬を緩めた。でっしょお、と嬉しそうに返した彼女がどこか楽しそうにまた彼を見つめ、ん?と眉を顰める。
    「……行くきっかけ?ってことはここに来るのは初めてだった?」
     少し待ってみるも彼からの返答はなく、彼を見上げると景色を眺める様子で誤魔化された。その反応から図星だとわかった彼女はふふふ、と笑いながらそっかぁ、と呟く。
    「賢人パンそのまま食べてそうだもんね」
    「いや流石にあれは食べなかった」
     景色を眺めたままの彼が答えてきて、思わず彼女は笑ってしまった。
    「私は食べちゃうだろうなぁ、話のネタにもなるし」
     歌うように呟いたご機嫌な彼女の頭を撫で、彼は無言で首を振った。それだけで何かを察した彼女は悪戯っぽく笑う。
    「じゃあ、その時はディンにも手伝ってもらうね」
     勘弁してくれ、と彼は苦笑したが、多分その機会には先程のように完食してくれるんだろうな、と彼女は思った。

     図書館では書物に触れる許可は降りていなかったが、館内を見て回る許可は得られた。所狭しと並べられた本棚にぎっしりと収まる背表紙を眺めながら、二人は相手の耳元で小声で呟く。
    「こういう所なら幾らでも居られる」
    「わかる」
     時折気になる題名やデザインなどに足を止め、もう片方にやんわりと手を引かれるのを繰り返しながらじっくり図書館内の空気と書物の背表紙を堪能して二人は外へ出た。
    「気になるやつ、読みたかった……」
     しょんぼりと耳を垂らしたヴィエラに頷き、まぁ機会があれば、とルガディンは慰める。機会ねぇ、と恨めしそうに呟いた彼女に、苦笑した彼がその先を歩き出した。微かに首を傾げながら彼女はその後をついて行く。時々彼の様子を伺おうと歩みを速くすると、すかさず彼も足を早めてきた。むぅ、と微かに頬を膨らまし半ば意地になって早歩きで彼に着いていく。討論のモノペトロスと呼ばれる東屋横を通過しかけて、彼が足を止めた。疲れたか?と一度声をかけてきたがいーえぇ!と返すヴィエラの勢いに圧倒され、苦笑しながらまた歩き出す。
    「わ……!!」
     そうして辿り着いた開けた崖の上からは、広大な海とサリャク象を夕陽が紅く照らしていた。すごい、と感嘆する彼女から彼は視線を風景に移す。ここ?と尋ねてきた彼女に彼は頷いた。
    「喧騒から離れてて、程よく森と海が堪能出来る良い場所だと思っていてな」
     好きな場所だと付け足す。綺麗だね、と呟いた彼女に彼は再度頷いた。以前来た時よりも綺麗に思えるのはきっと勘違いではないだろう。ふふ、と嬉しそうに笑った彼女に振り向くと、海と落ちていく夕日を背景に彼女が微笑む。
    「良い場所、教えてくれてありがとね」
     大した場所ではない、と返そうとしてそれはこの景色に失礼かと思い、無言で頷いた。これから先同じような機会があるとしたら、それに
    応えられるように気を付けておかないとな、などと考えながら、しばらく二人で景色を眺めていた。


    Tap to full screen .Repost is prohibited
    Let's send reactions!
    Replies from the creator

    mitotte_kazu

    PASTヴァレンティオンを満喫している🦍と🐇の短いお話
    贈呈 毎年恒例になりつつある、海都でのヴァレンティオンの催事場巡りに今回も付き合っていた。ヴィエラに付き添っていただけの当初に比べて多少慣れてきたルガディンも、露天を覗き見比べる余裕が出来てくる。
    「これは今年の新作か」
    「そう〜!去年から定番になったこっちも美味しいよ!」
     少しわかってきたと思っていたが、やはり彼女の知識量などには勝てない。真剣な顔で次の店の品定めをする彼女の手から、戦利品の入った紙袋を苦笑しながら受け取った。ありがと、と身軽になった身体で手早く会計をすませる彼女を遠巻きに眺めていた。
    「ここの好き」
     何軒目かを巡っていた時に彼女が呟いた店のチョコレートや包装に見覚えがあった。以前貰ったものだな、と何気なしに視界に入った価格を二度見して、目を剥いてしまう。横に書かれた説明を流し見て、ブランド物のククルビーンを手間暇かけて加工してウルダハで販売している有名店だとようやく把握できた。通りで高価で美味いはずだと1人納得している横で、また真剣な表情で陳列されている商品を吟味している彼女が頷いた。これとこれください、と慣れている彼女の指がチョコレートの上を滑っていく。彼女が選んだ商品が丁寧に包まれていくのを眺めながら、パッケージまで可愛いな、などと思った。
    805

    related works

    mitotte_kazu

    PASTヴァレンティオンを満喫している🦍と🐇の短いお話
    贈呈 毎年恒例になりつつある、海都でのヴァレンティオンの催事場巡りに今回も付き合っていた。ヴィエラに付き添っていただけの当初に比べて多少慣れてきたルガディンも、露天を覗き見比べる余裕が出来てくる。
    「これは今年の新作か」
    「そう〜!去年から定番になったこっちも美味しいよ!」
     少しわかってきたと思っていたが、やはり彼女の知識量などには勝てない。真剣な顔で次の店の品定めをする彼女の手から、戦利品の入った紙袋を苦笑しながら受け取った。ありがと、と身軽になった身体で手早く会計をすませる彼女を遠巻きに眺めていた。
    「ここの好き」
     何軒目かを巡っていた時に彼女が呟いた店のチョコレートや包装に見覚えがあった。以前貰ったものだな、と何気なしに視界に入った価格を二度見して、目を剥いてしまう。横に書かれた説明を流し見て、ブランド物のククルビーンを手間暇かけて加工してウルダハで販売している有名店だとようやく把握できた。通りで高価で美味いはずだと1人納得している横で、また真剣な表情で陳列されている商品を吟味している彼女が頷いた。これとこれください、と慣れている彼女の指がチョコレートの上を滑っていく。彼女が選んだ商品が丁寧に包まれていくのを眺めながら、パッケージまで可愛いな、などと思った。
    805

    mitotte_kazu

    PASTバレンタインなのでチョコ渡す🐇さんとチョコ食べる🦍の短い話
    片割 この海の街にもイベントの余波が来ているようで、浮ついた雰囲気が漂っていた。幸せそうな人を見るのは嫌いではないが、この空気の中独り歩くルガディンはどこか居た堪れなさを感じていた。
    それでもイベントのおかげで普段ならあまり手を出さないようなチョコレートが並んでいる店頭を眺めるのは楽しいものだった。買ったところで勿体なくて食べられないのは目に見えているし、貧相な自身の舌はどれを食べても美味しく感じるのだろう。折角だからと思いつつ平凡な板チョコレートを手に取る。と、掌からチョコレートが消えた。目線を掌から上げるとルガディンから取り上げたチョコレートを興味深そうに眺めるヴィエラがいた。

    「買うの?」
     握ったチョコレートをひらひら翳しながらヴィエラが首を傾げた。まぁ、とルガディンが頷くとふぅんと数回頷いた彼女がそれを棚に戻す。買うと言ってるのに、と棚のチョコレートに伸ばされた彼の手をヴィエラの手が掴んだ。ルガディンが何なんだと困惑している間に人気の少ない通りまで引っ張り出される。されるがままだったルガディンの離された掌にちょこんと小箱が載せられた。どこか見覚えのあるデザインの小箱をしばらく眺めてから、目の前のヴィエラに視線を向ける。にんまりと意味深に笑った彼女が覚えてる?と首を傾げた。ルガディンが数回頷いて開けても良いか了承を得ると、勿論、と微笑まれた。
    903

    recommended works

    mitotte_kazu

    PASTバレンタインなのでチョコ渡す🐇さんとチョコ食べる🦍の短い話
    片割 この海の街にもイベントの余波が来ているようで、浮ついた雰囲気が漂っていた。幸せそうな人を見るのは嫌いではないが、この空気の中独り歩くルガディンはどこか居た堪れなさを感じていた。
    それでもイベントのおかげで普段ならあまり手を出さないようなチョコレートが並んでいる店頭を眺めるのは楽しいものだった。買ったところで勿体なくて食べられないのは目に見えているし、貧相な自身の舌はどれを食べても美味しく感じるのだろう。折角だからと思いつつ平凡な板チョコレートを手に取る。と、掌からチョコレートが消えた。目線を掌から上げるとルガディンから取り上げたチョコレートを興味深そうに眺めるヴィエラがいた。

    「買うの?」
     握ったチョコレートをひらひら翳しながらヴィエラが首を傾げた。まぁ、とルガディンが頷くとふぅんと数回頷いた彼女がそれを棚に戻す。買うと言ってるのに、と棚のチョコレートに伸ばされた彼の手をヴィエラの手が掴んだ。ルガディンが何なんだと困惑している間に人気の少ない通りまで引っ張り出される。されるがままだったルガディンの離された掌にちょこんと小箱が載せられた。どこか見覚えのあるデザインの小箱をしばらく眺めてから、目の前のヴィエラに視線を向ける。にんまりと意味深に笑った彼女が覚えてる?と首を傾げた。ルガディンが数回頷いて開けても良いか了承を得ると、勿論、と微笑まれた。
    903