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    namu3333333

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    ・CPなし(おさなな4人)ですがアサプラ工場の同ラインで生産しております
    ・アーサー本体入隊~殲滅戦前くらい
    ・色々捏造

    【#rstmワンドロワンライ】そっくり 講義の後に教師へ色々と質問していたら、思っていたよりも時間が過ぎてしまっていた。顔を青くして教師を送り、プライドは大急ぎで教科書をまとめると侍女に行き先を告げて自室を飛び出す。
     ぱたぱたと早足に回廊を進む。途中すれ違った侍女に危ないですよと注意され、ごめんなさい! と謝ってからは小走りにならないギリギリの速度を攻めていた。もはや一人競歩である。
     ティアラと約束した時間から随分と遅れてしまっている。今日はお互いの講義が終わったら、ステイルとアーサーの稽古場に顔を出すつもりだった。ステイルにも朝食の席で伝えてあるし、アーサーも待っているかもしれないのに!
     焦るほどに遠く感じる宮殿の外、ようやく目的の場所へ辿りついたプライドは扉の前でぴたりと足を止めると軽く上がった息を数秒かけて整える。プライドの呼吸が落ちついたのを見計らって、扉前に立っていた衛兵がにこりと微笑んで彼女に代わりドアのノックした。
    「プライド第一王女殿下がお見えです」
    「どうぞ」
     即座に返ってきた答えを受け、衛兵が扉が押し開ける。
     最初から扉のすぐ脇に立っていたのか、あるいは瞬間移動して来たのか、扉の内側からはすぐにステイルがひょこりと顔を覗かせた。額にうっすらと汗をかいて頬を上気させている。稽古着の手元にはタオルが握られていて、休憩中だったことが察せられた。
     ステイルは笑顔で姉を招き入れると衛兵に礼を伝えてからドアを閉める。
    「姉君、遅かったですね。何かありましたか」
    「心配かけちゃってごめんなさい。気になる点を色々質問していたらあっという間に時間が経っていて……」
     肩を竦めて謝るプライドに、ステイルはほっと安堵の息を吐いて微笑んだ。
    「そうでしたか。プライドは勉強熱心ですね」
    「ほとんど脱線だったんだけれどね。ステイルは休憩中?」
    「はい。先ほどティアラが来てから……」
     話しながら稽古場の中央へ目を向けるステイル。プライドもその視線を追うように部屋の奥へ目をやり、ぱちくりと瞬きをした。
     壁際に設えてあった丸椅子に座ったティアラがにこにこと楽しそうな笑みをこちらに向けている。その背後にはアーサー。
    「お姉様! お勉強お疲れさまですっ」
    「こんにちは、プライド様」
     ぺこりと慇懃に頭を下げたアーサー……の手元は、ティアラの頭にかかっていた。正確には、長く伸びる柔らかな金髪の先へ。
     ティアラの背に立ったアーサーは、どうやら彼女の髪をいじっているようだった。プライドは目を丸くして、たたっと二人に駆け寄るやいなや、キラキラと紫の双眸を輝かせる。
    「まあ!」
     いつも編み込みをした後頭部を覆うように背へと下ろされているティアラの金髪が、アーサーの手によるものなのだろう、両耳の下で二つのおさげに結われている。しかも単純な二つ縛りではなくそれぞれが綺麗に編まれ、毛先には可愛らしいレースのリボンが括ってあった。
     プライドは瞬時に前世の知識を思い起こす。フィッシュボーンというやつだ。知ってはいても自分でできた試しなどない。
     ちょうど両サイドのリボンを結び終えたアーサーがティアラの頭頂部をぽふんぽふんと優しく撫でた。
    「終わったぞ。これでどうだ」
    「えっ、え! どうなってます? お姉様、どうですか!?」
     頭に手を回しつつ自身もくるくると回るティアラ。ドレスの裾が空気をはらんでぶわりと膨らむのを「落ちつけ、鏡を持ってくるから」とプライドの後ろに立っていたステイルが窘める。
     プライドは――思わず全力でティアラに抱きついた。
    「ひゃ!?」
    「かかかかわいいいい! すっごく可愛いわ! ティアラもアーサーも天才だわ!?」
     胸元に引き寄せたティアラのせっかくの髪型が崩れないよう気をつけながら猫の子をあやすように撫で回す。姉の突然の奇行に最初は目を白黒させていたティアラだが、ややもすれば照れくさそうに「えへへ……」とはにかんだ。やだもうわたしの妹天使すぎる!
     稽古場に置いてあった大きな姿見(素振りをする時など、自身での所作のチェックが本来の用途だろう。足元には車輪がついていた)をがらごろと引いてきたステイルが、ほら見てみろ、とティアラを鏡の前に引き寄せる。
     普段とはすっかり趣の変わった自身の姿に、ティアラは琥珀色の瞳をぱっと輝かせて飛び上がる。ぐるりと振り返りアーサーに向き直ると「アーサー! すっごいですっ! とっても可愛いですっ」と彼の腰元に飛びついた。
    「お、おお、ンな喜んでくれンなら良かった」
     アーサー本人も若干狼狽えつつも嬉しそうだ。ぎゅうぎゅうとしがみつくティアラを引き剥がすのには苦戦しているようだけれど、あんなに愛らしいティアラに密着されたら離したくない気持ちもよく分かる。
     アーサーがティアラを振りほどくのに難儀している内、ステイルが状況をざっくりと説明してくれた。


     曰く、ステイルとアーサーはティアラが稽古場に顔を出したタイミングで休憩を入れることにした。
     アーサーが汗を拭うついでにひとまとめにしていた髪を解き、鏡も使わず手早く綺麗に結び直す様を見て、ティアラは彼に慣れているのかと尋ねる。アーサーは、自分の髪は長年やってきているしひとつに縛っているだけだから簡単だし、そうでなくとも、実家暮らしの間はよく近所の子どもの髪をいじってやったりしていたと教えてくれたのだと答えた。それがティアラの好奇心をいたく刺激するとは思わずに。
    「や、実家の小料理屋では裏方でしたけど、ガキど……小せえ子どもらは遊び半分で裏に来ちまったりして。あとは畑仕事中に邪魔しに来たりとか……。ンで仕事ついでにちっとだけ面倒見てたンすけど、転んだ拍子に髪が解けちまう女の子とか割といて、泣かれるンで、やむなく結び直してやってたり……。そしたら調子に乗って、あの髪型が良いとか、こういうのが良いとか色々注文つけてくるようになって……」
     まるで悪事の釈明をするみたいにあわあわと言い募るアーサーだが、プライドもティアラも話を聞いていたく感動してしまった。頼まれたからやってあげちゃうなんて普通にすごい。うすうす気づいていたがアーサーはかなり手先が器用なのだろう。
     そう言うとアーサーはぶんぶんと首を振って顔を赤くした。
    「ティアラのそれはっ、だいぶ簡単つか、俺もまあまあ上手くできると思ってるやつで! 王女様がして良い髪型かどうかとかは、分かんねぇンですけどっ」
    「えっダメな髪型とかあるのかしら……?」
    「俺もそこまでは……」
     ステイルに顔を向けると、困ったように眉を下げられてしまった。そういう不文律的な習慣は王族本人より侍女たちの方が詳しいかもしれない。
     首を捻る姉兄を後目に、ようやくアーサーから離れたティアラがふんふんと勢い込んで言う。
    「アーサー、お姉様も同じにしてくれませんかっ?」
    「はァっ!? いやちょっ」
    「えっ! 良いの!?」
     アーサーの驚愕とプライドの歓声がほとんど同時に発され、また同時にぷつりと途切れた。
     二人はそろりと顔を見合わせる。それから、
    「いやあのプライド様が良いなら俺は全然」
    「ごめんなさいはしゃいじゃって、アーサーが迷惑なら」
    「……」
    「……」
     また、沈黙。
     しばしの逡巡を経て、プライドが先に口を開いた。
    「……アーサーさえ良かったらすっごくすっごくやってほしいのだけれど……」
    「……承知しました……」
     耳元を赤く染めたアーサーが、どこか観念したような素振りでこっくりと頷く。プライドの背後で、ぶくくっ……と笑いを咬み殺すような声が漏れ聞こえた。
    「でも、良いンすか。おお俺みてぇなもんがプライド様の御髪に」
    「もちろん!! アーサーなら髪くらい、いつだって全然平気よ」
     躊躇いがちに問うてくるアーサーに全力の笑顔で答える。勢い良く発された肯定を受けて急激に緊張してしまったのか、アーサーは顔を真っ赤にしてピンを背筋を伸ばした。
     すっと一歩前に出てきたステイルが何やら楽しそうな顔でアーサーの肩をぽんと叩く。
    「プライドがそう言っているのだから、気にしなくて良いだろう」
    「おま、他人事だと思って……!」
    「ふふ、兄様も見てみたいのねっ」
     ステイルの手を振り払って睨みつけるアーサー。
     振り払われたステイルの腕を取ってティアラが可愛らしく微笑むと、彼も目元を赤く染めてふいっと顔を逸らした。


     ティアラに代わって丸椅子に座って数分。
     よほど集中しているのかアーサーはほとんど無言で指を動かし続けていた。時折首筋に指先が触れるのが少しくすぐったくてぴゃっと首を竦めてしまうと、その度びくりと手を止めては「集中……集中……」と呟いていたけれど、それ以外はもくもくと作業を続けているようだ。
     姿見の中の自分の姿を見てプライドはわくわくと胸を高鳴らせる。普段はティアラ同様背に流してばかりの髪がするすると編まれていくのは見ていてとても新鮮だ。
     アーサーの手指は魔法のようにさくさくと動いている。普段は剣を握る指はプライドのそれと違って大きな関節が目立つ。大きな傷は見当たらないけれど、よくよく見れば細かな擦り傷、切り傷が至るところにあって少し心配になってしまった。痛くはないかしらと手を取りたいけれど彼の作業を止めるわけにもいかず、ぐっと胸の内で耐える。ステイルの細長くて骨ばった指とも、父上の大きな手とも少し違う手を見ているのは不思議な気持ちだった。
     なんだか落ちつかなくて視線を彷徨わせると、鏡の中のティアラと目が合ってにっこり笑われてしまう。ティアラの耳下から垂れる愛らしいおさげが揺れて稽古場の窓から差す陽光をちかりと反射してきらめいた。
    「で、できました……」
     不意に大きく息を吐いたアーサーがプライドの背から一歩離れる。
     ティアラとおそろいの二つ分けにされた編み髪。毛先にはプライドが元々付けていた幅広のリボンが結ばれている。
     か、……かわいい……!
     プライドは口許を両手で覆ってぷるぷると身体を震わせた。背後ではティアラが「素敵です!」とぴょんぴょん飛び跳ね、ステイルは頬を染めて「とてもお似合いです」と勢い込んで頷いている。
    「器用だな。侍女に遜色ない……とは流石に言わないが、綺麗に仕上げたものだ」
    「そりゃァ本職の方々には及ぶわけがねぇけど。つか、稽古の倍疲れた……」
     うっすらと額に滲んだ汗を拭うアーサー。緊張疲れだろう、ちょっと申し訳ない。けれど申し訳なさの倍の倍も嬉しくて、プライドは顔だけで振り返って満面の笑みを浮かべた。
    「アーサー! ありがとうっ!!」
    「ッ、は、いっ!」
     アーサーは背筋に電流が走ったかのようにびくりと全身を強ばらせた。恐縮させたかしらと思いつつ、また改めて鏡に向き直る。
     アーサーが結ってくれたのはどちらかというとカントリー調というか、素朴で柔らかい雰囲気のアレンジだ。元々のビジュアルが可愛らしいティアラには抜群に似合っていたがヴィランルックの自分にはどうなのか……と若干及び腰でもいたが、派手すぎないデザインが功を奏したのかしっくりと馴染んでいた。
     少しだけほつれていたところを修正しようとアーサーが片方のおさげを手に取る。ちょいちょいと指先でつついて形を整え、ふと「……ティアラとそっくりすね」と独り言つように呟いた。
     その言葉にプライドとティアラが同時に目を瞠る。
    「えっ本当!?」
    「ほ、ほんとですかっ?」
     軽い気持ちでこぼした言葉に予想外に大きな反応が返ってきて、今度はアーサーが驚いたように瞠目して後退る。その一歩引かれた分を詰めるようにティアラがぐいぐいと押していった。
     プライドも思わずがたんと立ち上がって踵を返すとティアラに並んでアーサーに詰め寄る。
    「そっくりって、お姉様と私がですか!?」
    「お、おう!? 髪がよ……ツヤツヤで、途中からちょっとだけ巻きが入ってて、細くて猫の毛みてぇに柔くて。触ってて、色違いなだけって感じだ」
    「そ、そ、そうなの……?」
     プライドが両手で頬を挟んだ。もう自分でも自覚できるくらいふにゃふにゃの顔で、指に触れる口角はくっきりと釣り上がっている。
     どうしてそんな反応をされるのか本気で分からないようで、困惑を露わにするアーサーを尻目に、姉妹はひしと抱き合って喜びを分かち合った。
     どうしよう、ものすごく嬉しい! 口許がゆるむのも目尻がだらしなく下がってしまうのも止められない。そんな姉を振り返ってティアラが小さな顔いっぱいに喜色を浮かべる。
    「お姉様、すっごく嬉しそうですっ。とってもとっても、とっても可愛いですもん!」
    「ふふ、髪型も嬉しいのだけど、ティアラと似ているだなんて初めて言われたから嬉しくって……!」
     だって本当にそんなことは誰に言われたこともないのだ。
     ティアラは母上に似て可愛らしく優しい雰囲気だけれど、私は父上に似た鋭い目つきと毒々しい深紅の髪に紫の瞳。父上似ということ自体は自分でも気に入っている点だけれど、悪役然とした容姿にはやはり物申したいという気持ちはあった。ラスボスとはいえ、年頃の女子、なので。
     つまるところ母似でない……つまりティアラとも似ていない自分のビジュアルにほんの小さなコンプレックスがあるのだ。
     そんなことを遠回しにぽしょぽしょと零した途端「え?」「はっ?」「そんなことありませんよっ?」と異口同音に三人から異議ありの声が上がった。
    「姉君とティアラはよく似ていますよ。努力家で、いつも明るくて、芯が通っていて……」
    「お姉様はお母様とそっくりです! お二人ともすっごく優しくて賢くって、素敵な女性で、憧れですっ」
    「プライド様もティアラも、女王陛下にすごく似てます。あんましっかり顔見たことはねぇけど……笑い方とか、楽しそうにしている時の雰囲気とか。てかさっき、本当かって迫ってきたティアラとは完全に同じ顔してましたし」
     自分を取り囲む三人めいめいが意気盛んに物申してくるものだから、プライドは頬を真っ赤に火照らせてしまう。心臓がどこんどこんと激しく打ち鳴らされている。喜びで息が詰まりそうだ。
     湧き上がる感情に身を任せて両腕を思いきり伸ばし、三人まとめて強い力で抱きしめた。
    「もうっ、うれしい……ありがとう! 三人とも、大好き!」
     ティアラがきゃあと耳元で黄色い声を上げる。ステイルとアーサーは声こそ出さなかったが、一瞬引き攣ったように身を震わせたあと同時に耳を赤く染めてプライドの腕の中でぎこちなくはにかんで見せてくれた。
     もう少し自信を持っても良いのかしら。大好きな妹とお揃いの髪を胸元で揺らして、プライドは満開の笑みを咲かせた。
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    namu3333333

    DONE・アサプラ(未満)
    ・アーサーが近衛騎士になってすぐくらい
    ・色々捏造
    【#rstmワンドロワンライ】ピンチ「では、姉君。申し訳ございませんが、少々お待ちください」
    「全然大丈夫よ。ごゆっくり、ね」
    「アーサー、よろしくな」
    「おう」
     ひらひらと手を振ってステイルに笑いかけると、義弟はぺこりと恐縮したように頭を下げて背後のドアの向こうへ消えて行く。護衛で城から付いてきてくれた衛兵も一人その後ろに続いて行った。
     城下町の中央市場。ここは訪れる大半が中級層の住民で、警邏の衛兵もあちこちに立っており城下街の中でもかなり治安の良い地区にあたる。目の前の活気ある光景にプライドは我知らず口許を緩めた。


     定刻通りに切り上げた視察の帰り、買いたいものがあるというステイルの言葉で一行はこちらに立ち寄っていた。
     王族のプライドたちにとって欲しいものがある時は宮殿に商人を直接呼ぶ場合がほとんどだが、機会があればやはり直接店に足を運びたいという気持ちはある。昨日交わした雑談の中で、ステイルが足りなくなりそうなインクや便箋があると言うので、それならばこの機会にとスケジュールを調整し、こうして文房具を取り扱う専門店にやってきたところである。
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