黒い内着を纏った魏嬰はすらりと肢体が強調され、腰の細さが艶めかしく、白い手足や首筋がハッとするほど目を引いて、隠さなければと衝動が走るほど。
時々、間違えて私の内着を着るときは少しばかり大きな衣にその華奢な身体が隠されて可愛らしい。楚々とした風情に華やぐような笑顔に胸がいっぱいになり、我慢をするのが大変である。
いつも隣に居る知己の内着について悶々と考えながらも手は書簡の返事を過たず綴っている。早く終わらせて魏嬰に会いたいという思いから身に付いた技だ。
夜狩の振り分けをしながらふと昔、見た内着を思い出す。
素直になれなかった時分に見た赤い内着。
暗い中、焚火の火に浮かぶ紅。水に濡れ、身体に張り付いたそれが目に毒だった。再会してからこちら、その色の衣服を纏うことはない。
思い出してしまえばその色を身に着けた魏嬰を見たくなった。
手早く仕事を片付けて彩衣鎮へと降りる。
私用で雲深不知処を出るなど魏嬰に会わなければ考えられなかっただろう。
必要なものは全て揃っていたし、供されたのだから。
幾度か訪れた仕立て屋に足を向けた。
魏嬰は衣服に頓着をしない。
色味などには好みがあるがそれが動きやすければ布の質がよろしくなくても気にせず身に着ける。
それは彷徨っていた幼少期に由来するのか、前世の終わりに由来するのかは分からない。
だが、少しでも着心地のいいものを身に着けて欲しいし、身体に合ったものを与えたかった。
用意してあるものを勝手に着るので魏嬰の衣服は私が自由に用意できるものであった。