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    burukare

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    burukare

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    現代AU セクピスパロ 龍狐

    ぬくぬくと布団に潜り込んで居たというのに突然、剥ぎ取られてしまった。
    「なにすんだよっ!」
    「うるさい!お前、入学式の日くらいちゃんと起きろ、魏無羨!」
    「別にいいだろ~新入生の登校時間は遅いんだし」
    枕に懐いていると呆れたような江澄の声が降ってくる。
    「父さんにブラインドを掛けて貰えなくても俺は構わないけどな」
    その言葉に慌てて起き上がる。
    「え、おじさんもう出ちゃう?」
    「知らん」
    「ちょ、江澄っ!」
    さっさと部屋を出ていく江澄に慌てて身支度を整える。採寸の時に着たくらいの真新しい制服を着てみんなの気配のするダイニングへと飛び込んだ。
    「おはよう、阿羨」
    「まったく、騒々しい。少しは落ち着けないのかしら」
    「阿羨、おはよう」
    まだおじさんが居たことにほっとしながら、挨拶を返す。おばさんに小言を言われるのはいつものことなので気にしてはいけない。
    席に着き、姉さんが用意してくれた朝食に舌鼓を打つ。
    「今日のご飯も美味しいよ」
    「沢山食べてね、阿羨」
    「うん」
    呆れた顔でこちらを見てくる江澄も姉さんの手料理が好物なので気にしてはいけない。
    「今日から阿澄も阿羨も高校生か。早いものだね」
    「まったく、阿澄はともかく、お前はあの学校でうまくやっていけるのかしら?」
    おばさんは口では突き放すようなことを言うけれどそれには心配が含まれている。
    俺が今日から通う学校は斑類が多く集まる学校だからだ。
    猿から進化した猿人と他の生物から進化した斑類。人口の三割程を占める斑類は階級社会だ。重種は力もセックスアピールも強いが繁殖力は高くなく、そのためブリーリングなどのセックスビジネスがまかり通っている。猿人は斑類を斑類と認識出来ないのでただモテるやつが居る、という認識なのだろう。
    魏無羨はその中では上の方の階級になる。半重種というやつだ。狐の魂元を持つ。江澄は虎。江家は猫又の家系だ。白虎の江家と重種の家系として有名なのだ。魏無羨はそこの養い子である。両親が死んで父の親友であった江楓眠に引き取られたのである。母が狐で父は猫又だった。
    「その前に犬神人のくせに犬が怖い時点で無理があるだろ」
    「うるさい!俺は狐であって犬じゃない!」
    「狐はイヌ科だろうが」
    「違う!」
    そう、魏無羨は犬が嫌いだ。どんな小さな仔犬でも叫び泣く程度に嫌いだ。
    「阿澄、阿羨、喧嘩しないで」
    「わかったよ、姉さん」
    「わかりました、姉さん」
    大人しく食事に戻る。
    今日の入学式にはおじさんとおばさん、揃って来てくれるということだ。
    まだ出掛けるには早いみたいで、あの脅しは江澄の嫌がらせだろう。
    姉さんは大学の授業があると残念そうだった。
    「阿羨、ほらおいで」
    「いつもすみません」
    食事を終えるとおじさんに呼ばれる。
    頭に手を当てられブラインドを掛けて貰う。
    これで、おじさんよりも強い重種でもなければ魂元は見えなくなる。
    そう。犬が嫌いで、犬神人の魂元に耐えられない俺は強制的に見えなくしてもらっているのだ。
    魂元を見せるのは恥とされているが驚いた時など一部が出てしまうことがあるのだ。その度に悲鳴を上げて逃げ回るわけにはいかない。
    そんな訳でおじさんにお願いをしているのだった。
    江澄は犬のどこが怖いのか、と呆れた様子だがそれでも犬が居れば庇ってくれるし、どこかに遠ざけてくれるので優しいやつだ。猫又の癖に犬派とかいうやつではあるけども。
    ブラインドを掛けて貰い、成魂を使う。成魂とは魂元を偽装する術だ。
    半重種ともなれば何だかんだ狙われやすい。だが、この国で狐はあまりよく思われていない。随分昔に狐の魂元持ちがなにかしたのが原因とも言われているがよく知らない。狐はあまり認めたくないが犬神人の中に入れられているので狐のことを気にしない犬神人が寄ってきてしまう可能性が高いのだ。そんなことは耐えられない、と猫又の中間種に偽装しているのが常だった。
    「行ってきます!」
    江澄と一緒に家を出る。
    おじさんとおばさんは入学式の時間にあわせて後から来るとのことだった。
    「クラスが一緒だといいな」
    「お前と一緒だと苦労しかないからごめんだな」
    「あー、でも忘れ物した時に借りに行くには別のが楽だよな」
    「忘れるな」
    なんて話をしているうちに学校に到着する。
    クラス分けを確認すれば江澄は隣のクラスだった。
    「離れたなぁ」
    「ふん、清々するな」
    憎まれ口を叩く江澄と校舎内を歩いていると前方に美人が居た。
    男なのは見てわかるが美人としか言い様のない美貌。身長も高く、すらりとしま体型で背筋はぴんと伸びている。どこも弱々しさを感じさせない立ち姿に目を奪われる。その男が同じ教室に入ろうとしているのを見て魏無羨は嬉しくなった。
    「なぁなぁ美人さん、名前なんていうの?同じクラスだよな?俺は魏無羨。仲良くしようよ」
    軽い足取りで近付いて声を掛ける。おい、と江澄の声がしたが新しい交遊関係を築くのは大事なことだろう。
    「……君は」
    「ん?」
    何かを言いかけて口を閉ざすから気になって首を傾げる。
    さらりとした髪は校則に合わせてか肩までの長さで切られているがもっと長くても似合うだろう。きっちりと着こんだ制服はどこにも乱れがなく、几帳面な性格を匂わせている。
    「私に構うな」
    そう言って教室に入ろうとするから慌てて肩を掴む。そうするとその手を払われた。
    パンッと音をさせたことに男自身が驚いているようだった。
    「えー、構うなって同じクラスだろ?なら、少しくらい親しくしたほうがいいだろ?一年間同じクラスで関わらない方が無理がある」
    「必要ない」
    「頑固だなぁ。どうせ名前なんてすぐにわかっちゃうのに」
    じっと睨むような視線に顔が弛む。
    美人は怒っても美人だ。
    「……藍忘機」
    「藍家の若様か!」
    その名前に聞き覚えがあった。
    藍家といえば龍の――西の方では人魚と言われるらしい家系だ。その直系に男児が二人、同年代に居ると聞いていた。藍家などまずお目にかかることがないと思っていたので驚きも一入だ。
    「なる程な。人を寄せたくないのはそれでか。それなら安心していいよ。分かると思うけど、俺、大事にされてるから」
    わざと思わせ振りなことを言う。
    龍なんて重種以上にプレミアで、斑類のなかでも頂点に居る。
    そうなれば子種だけでもという軽種は多いだろうし、言い寄られることもあるだろう。
    性モラルが低いのが斑類とはいえ、個人的な性質はまた別。藍忘機は見るからに真面目ちゃんで、潔癖そうだ。
    ブラインドを掛けられてることはすぐに分かるだろう。ブラインドは雄が自分の雌が他に目移りしないように掛けるものだ。なので、掛けられてる時点で囲われていると見なされることが多い。
    それを利用して安心しろと笑い掛けたのだった。
    「……恥知らず」
    「どこが?俺らくらいでブリーリングしてるやつ結構いるだろ?それから言ったらずっと慎ましいぞ?」
    ぐっと眉間に皺を寄せ、足早に教室に入っていった。その様子に思わず腹を抱えて笑っていると肩を音がするくらいに叩かれた。
    「ったぁ!!何すんだよ!」
    「うるさい!初日から問題を起こすな!」
    「どこがだよ!ただ、仲良くなろうと話しかけただけだろ!」
    「藍忘機を揶揄しただけだろ!藍家と揉めでもしたら面倒だろうが!」
    「っても、同じクラスなんだし、仲良くなった方がいいに決まってるだろ?」
    「お前とあいつは合わん!」
    ふんっと鼻を鳴らして言いきる江澄に下唇を突き出す。構うなと言いながらも名前を教えてくれて、ちゃんと答えてくれた藍忘機は仲良くなれる相手だ。それに、あれで怒るような相手なら本人はきっと身持ちも固いに違いない。
    軽い態度を取っているが魏無羨自身はブリーリングなどとは無縁だ。過去の事例から嫌悪していると言っていい。そんな訳で藍忘機の態度には好感しかなかった。藍忘機が魏無羨に対してどう思っているかは別として。
    「俺は仲良くなりたいから仲良くするさ!」
    「っ……勝手にしろ!」
    江澄が自分のクラスに向かうのを見送って教室に入る。
    あの存在感である。藍忘機はすでに遠巻きにされていた。都合がいいと隣の席を陣取る。
    「なあなあ、藍哥哥、連絡先交換しようぜ?」
    「しない」
    「なんで?何かあったときに連絡取れたら便利だろ?それに、休みの日に一緒に遊びに行ったりしようよ」
    背筋を伸ばして前を向いて座ってる藍忘機に話し掛けるがこちらをチラとも見やしない。
    「藍忘機、無視するなよ~」
    「……必要ない」
    「えー?でも、授業でグループ課題とか出された時とか困るだろ?俺ならそういう下心はないし、安全だと思うけどなぁ」
    頬杖を付いて藍忘機を見る。少しだけ瞼を伏せているのは考えているのだろう。影が出来そうな睫毛まで美しいというのは凄いことだ。この顔で微笑めば国が傾くかもしれない。
    「下心がない」
    「うん。別に重種やプレミア種の子が欲しいとは思わないし、藍家の恩恵に預からなくてもそこそこいい暮らしはしてる。むしろ、お前んとこと親密になったらガチガチに縛られそうで向いてない」
    「向いてない……それなら何故私と友になろうと?」
    「んー?面白そうだから!」
    思ったままを伝えると藍忘機は目をぱちりと瞬かせた。驚いたのか少しだけ開かれた唇にあどけなさを感じる。
    そういう表情を見るのが楽しいのだとニマニマとにやけてしまうのが止められない。
    動かない表情が動くのが、感情の発露を見つけるのが楽しい。
    他の誰にも出来ないことを出来たら、それはとても嬉しいことなのではないかと思う。
    呆れたのか何も言わなくなった藍忘機を見るのだって飽きたりはしなかった。
    先生が教室に入ってきて説明をするのを聞き流しながら藍忘機とどうやって仲良くなるかを考える。特に何かを期待して入学したわけではなかったがこれからが楽しみになった。


    一般的には豪邸と呼ばれるだろう自宅に帰りようやく息が出来るような気がした。
    深く息を吐き出すのと同時に名前を呼ばれる。
    「忘機、帰っていたのか」
    「ただいま戻りました」
    兄が顔を覗かせていた。
    なにかと多忙な兄をこの屋敷内で見るのは二週間振りくらいかもしれない。最後は入学式の日だ。
    「お茶を煎れようか」
    「はい」
    穏やかな笑みを浮かべる兄に頷いた。着替えておいでと言われたので急いで部屋に戻り着替える。
    リビングに戻ると兄が丁寧な手付きでお茶を注いでいた。
    「学校はどうだい?」
    「問題ありません」
    学業に付いていけないことはないのでそう答えたら笑われた。
    「それにしては随分と疲れているようだ」
    慣れぬ環境で気疲れはしているかもしれない。
    人型を取るのが遅く、学校には通っていなかった。
    勉強は兄が見てくれたり、あとは家にある蔵書を読んで学んだくらいだろう。
    それが急に他人の集まる場所に放り込まれたのだから仕方ないことだろう。
    「友達は出来たかい?」
    穏やかな兄ならばともかく、と思ったところで言葉を呑む。彼は友達になろう、と声をかけてきた。無視をしても何かと話し掛けてくる彼は友と表現してもいいのだろうか。
    「……よくわかりません」
    「誰か親しくしてくれる人が居るのかな?」
    「クラスメイトでひとり、声を掛けてくる者がいます」
    視線が彷徨う。彼をなんと表現していいのかがわからない。
    「クラスの中心にいつも居るのに私に声を掛けて……黙殺しても構いもせずずっと話し掛けてきます」
    「そうなのか」
    「授業態度は不真面目なのに内容は理解していて、優秀なようです。身のこなしも軽く、あれを文武両道と言うのでしょう」
    「おまえのいい友になりそうだね」
    にこにこと笑う兄の言葉に何故かチクチクと痛みが走る。
    いつも笑って、こちらに冗談ともつかない話を投げ掛けて、冷たくあしらっても気にも掛けない。誰とでも愛想よく話をするけれど、意思表示ははっきりしている。スキンシップも多く、隣のクラスの江晩吟たちとよく肩を組んでいるのを見掛けた。ブラインドを掛ける相手がいるくせに、と思いもするが斑類は艶聞に事欠かないのでままあることだとも聞く。だが、その姿を見るたびに苛立ちが沸く。慎みは大事だろう。
    「……兄上はブラインドを掛けたいと思ったことがおありですか?」
    突然の言葉に兄が目を見開いている。
    一度飛び出してしまった言葉を消すことは出来ない。
    固く口を結んでこれ以上余計なことを言わないようにする。
    「そうだね……私はそのように思う相手にまだ出会っていない。それが幸か不幸かはわからない。だが、父は……掛けようと思ったのだろうとは思うよ」
    その言葉にハッとする。
    両親との縁は薄く、父とはまともに会ったことがなく、母とも月に一度会うくらいだった。それは人型をうまく取れなかったせいもあるが、母を誰かに会わせることを父が好まなかったためでもあった。
    既に鬼籍に入った二人ではあるが伯父の話を聞くに父は随分と愛が重い人物だったらしい。
    「おまえの友はブラインドを掛ける方なのかな?」
    「いえ……」
    「おまえの歳で、と考えると随分と早熟な子なんだね」
    兄は私のことをよく把握している。躊躇った言葉に彼がブラインドを掛けられていることが分かったようだ。
    どこか落ち着かない気分で口を開く。
    「だから、私になんの下心も持たない。仲良くしたいから声を掛けたのだ、とそう言われました」
    「その人は随分と頭がいいんだね。私たちのようなものの苦労を知っている。おまえの様子を見るに本当に仲良くしようと声を掛けるだけなのだろうね」
    嘘は吐けないので素直に頷く。
    魏無羨は本当に挨拶に始まり、休憩時間には授業の内容についてや私の持っている本について話し、グループ課題のたびに声を掛けてくれる。家族以外から話し掛けられることが少ない上に、笑顔を向けられることに慣れておらず、その度にひどく心臓が痛む。
    「忘機、私はおまえが自由に生きることを望んでいる。折角、学校に通えるようになったのだから友を作って、遊んでおいで」
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