いかないで最終電車のアナウンスが聴こえる。黄色い線の内側にお下がりください、という声を無視して、燐音と一緒に電車を待っていたHiMERUは、燐音を置いてゆっくり歩き出した。一瞬だけこちらを振り向き、燐音に向かって何かを呟いたが、肝心の内容はアナウンスにかき消されて聴こえない。燐音は咄嗟に手を伸ばしたが、HiMERUはそのままふわりと線路の中へ消えていった。
すぐさま電車が横切り、大きなクラクションの音が鳴り響く。何が起こったのか分からなくて、汗が止まらない。血の気が引いて呼吸が荒くなり、どんどん目の前が暗くなっていく。考えるのが怖くて、燐音はその場で意識を手放した。
……
「……!!はぁ、はァ………」
悪い夢を見て目が覚めた。はぁはぁと息を荒らげたまま、燐音は上半身を起こした。時計を見ると、まだ深夜の2時だった。変な時間に目が覚めてしまったと溜息をつくが、やけにリアルな夢だったせいか冷汗が止まらなくて、もう一度眠る気にはなれなかった。
8731