疲れていた。
ここ数日、やたら妖に取り巻かれたり学校の行事が立て続けにあったりと、ゆっくりなにもしない時間があまりに少なかった。
考えを整理する時間もない。夜も妖に起こされるので身体を休める時間もない。
布団に入るとすぐに朝が来てしまう。意識がなくなっているらしい。それくらいには疲れているようだった。
夏が近づいて日が延びた夕方、まだ陽は高く白く、空は青い。
久しぶりに学校から早く帰って来れて、まだ家に帰らなくても迷惑をかけるような時間でもない。
こんな空の下で転がって昼寝をしたらとても気持ちいいだろうなと思った。
―――通学路から少し外れてしまうが、人気のない野っ原がある。
たまにはゆっくりしてもいいよな、と気が付いたらそこに向かっていた。
「なんだ、ひょろひょろがいると思ったら夏目か」
「うるさいひょろじゃないって言ってるだろ」
「なんで本当のことを言われて怒るのかわからんな」
たどり着いたそこには思った通り人気はなかった。
風が程よく吹いていてくつろげそうだった。しかし、朝に少し雨が降ったせいか地面が少し濡れておりここに転がると制服が汚れて塔子さんたちに心配されるかもななどと考えていると、聞きなれている声に呼び戻される。
「先生、なんでこんなところに」
先生が茂みからもふ、と出てくる。
もちろん約束したわけでもなかった。先生とは偶然にここで出会ったのだ。
「何しに来たんだ?」
「それはこっちの台詞だ。まさか道に迷ったんじゃあるまいな」
「違うよ、昼寝でもしようかと思ったんだ。でも」
地面が濡れてて。
と、ここでいいことを思いついた。
「先生も、いい天気だし、ここで一緒に昼寝していこう」