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    uni_no_ko

    @uni_no_ko

    雑多 / 腐 / 練習、メモ、短文
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    uni_no_ko

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    途中

    #腐向け
    Rot
    #夏目友人帳
    natsumeFriendshipAccount
    #斑夏
    spottedSummer

    ★ちゅーしないと具合悪くなる話 週末。
     学校がないので目覚まし時計で起きる必要がない。
     いつもより夜更かしをして、いつもより朝少しゆっくり起きようと考えていた週末だった。のに。

    「先生、ちょっと」
     吐き気。
     気道に何か詰まったような、息苦しさで咳き込み目が覚めた。
     咳が治まると口の中に酸っぱい唾液と、泡のようなものがせりあがってきて口をぎゅっと閉じる。ここで出したら大変なことになる。ゆっくり飲み込んで。
     戻すならトイレに行こうかとも思ったが、脱力してしまっていて起き上がれそうにない。
    「いるか」
    「んにゃ」
    「具合悪い」
     返事はなかった。
     何時かはわからないが、まだ部屋は暗い。加えて体調不良もあるせいか、部屋を見渡しても視界がはっきりせず先生がどこにいるのか見えなかった。
     足元から、たしたしと小さくて重い足音が聞こえる。……足元で寝ていたようだった。
     横になったままのおれの顔の横まで来て、のぞき込んでくる気配。うっすらと丸い顔が見えたが自分の涙のせいか視界が滲んでよく見えなかった。
     ふす、と鼻息が聞こえる。ため息だろうか。
    「人間は弱いな」
     これは人間だからというより、なんらかの妖のせいでと言い返したかったがそれよりも早く頬にくすぐったい髭の感触と湿った冷たい鼻か口かの感触があって、呼吸が楽になっていくのが分かった。
     おれが苦しいのがすぐわかって、話すより先に助けてくれたのだろう。

     未だに、慣れないし意味もわからないが、キスされると体調が良くなる。よくなるというか、元に戻るというか。
     とにかくこの意味のわからない症状に悩まされている。
     先生がその妖のことを耳にしたことがあったおかげでなんとかやっていけているが、そうでなかったらと思うと……いや考えたくはない。今も苦しい思いをしたばかりだった。
     最初はこの行為も恥ずかしいものだしそんなことをしてもらうくらいなら我慢できるとすら思っていたが、この症状の軽減方法がそこまで厳格なルールではないようだったので、解除方法がわかるまでは対処療法を行っていくということで決議された。

     キスをする部位はどこでもいいこと。
     自分以外の生き物ならなんでもいいこと。
     「ため」ることができること。ただ、これは目に見えないのでどれくらい貯まっているいるかが不確かである。
     他はまだわからないことが多いが、ひとつ言えるのはこの「体調不良」の度合いがそれなりに重たいことだ。
    「よくなったか」
    「ちょっとずつな」
    「何か、ないのか」
    「あ、ありがとう」
    「違う」
     おれからしたら吐き気もなくなって、呼吸もスムーズにできて、体調はよくなっているのだが、これも、目にはっきりとは見えないので口頭で答えるしかなかった。
     我慢することは苦ではないが、さすがに立ち上がれなくなったときは他人に助けてもらわざるを得ない。
     そうなった今、先生に助けを求めることは必要だと分かっている。これがもう数回続いているせいもあって、よくない傾向だとわかってはいるものの遠慮もさほどせず頼ってしまうようになっていた。

    「本当によくなったのなら、お礼があるだろ」
     やれやれ、と溜息をつかれる。
     おれが元気になったかどうか、最近先生は見てわかるらしい。
    「饅頭かあ」
    「饅頭じゃなくてもいいのだ。おいしいものを寄越せ」
    「……また日が昇ってから考える」
     めまいも耳鳴りも、吐き気もなくなったので起き上がれそうだったが用事はない。
     布団を引っ張り首元までしっかり被る。
     おやすみ、と先生に声をかけると返事こそなかったが、のそ、と腹の横あたりに寄りかかる温かい感触があった。ゆっくりと息をしているのが分かる。
     満たされたような気持ちになり、急激な眠気に襲われ、そのまま深呼吸をしてすぐ眠りについた。



     朝、目を覚ますと身体の軽さに感動すら覚える。
     昨晩の嘔気など夢だったようにすっきりとしていて、ここ数日の中では一番と言い切れるほど体調がよかった。
     学校が休みなので目覚ましもかけていなかったが、いつも起きるのとほぼ同じ時刻に自然と目が覚めたわけだが、さほど眠くもなかった。
    「起きたか」
     声がして、自分の布団の上を見たが、いない。
    「お前の寝相が悪すぎてそんなところで寝られるか」
    「悪くない」
    「いつか知るときがくるぞ……」
     定位置の、座布団の上に丸くなっている先生を見つける。
     久しぶりにすっきりした目覚めなのでもしかしたらあの症状がなくなったんじゃないかと錯覚したが、おそらくそうではないだろう。おれはなにもしていない。先生がなにかしない限りは。
     ―――先生が、なにかした?
     
    「もしかして、先生なにかしたのか?」
    「しらん」
     そっぽを向いている。でも、何か知っていそうな顔だった。
    「本当に知らないのか」
    「なにかとは、なんだというのだ」
     ちら、とこちらを見て笑った。やっぱり何か知っているし何かしたんだろう。
    「具体的に、お前が考えている何か、とやらを言ってみろ。合っているかどうか答えてやる」
     にいと目が細くなる。
     先生が、おれに、寝ている間にキスを、それも沢山したんじゃないかなどと。口には出せなかった。
    「いじらしいな」
     それが、どういう意味かと聞き返すことも出来なかった。
     

     
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