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    uni_no_ko

    @uni_no_ko

    雑多 / 腐 / 練習、メモ、短文
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    uni_no_ko

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    斑夏←田 の図

    #夏目友人帳
    natsumeFriendshipAccount
    #腐向け
    Rot
    #斑夏
    spottedSummer
    #田夏
    summer

    ★ちゅーしないと具合悪くなる話⑤「先生、具合わるい」
    「ん」
     なめらかに、夏目の口に触れる。ぬる、と夏目の口から何かが離れていくところだけやけに鮮明に見え他はピンとがずれたようにぼけて見えた。
     何を見せられているのか、一瞬わからなかった。
     
     あまりにも当然のようにそれが行われて、終わる。
     はあ、と苦しそうに息を吐いた夏目の顔色はさっきよりだんだんと良くなっていき安心したところだというのに、もう何回か見たことがあるはずなのに見てはいけないものを見た時のように胸の辺りが重い。今度は俺の具合が悪い気がする。
     悪いことをしたわけじゃないのに、とてつもなく悪いことをしたような。取り返しがつかないことをした時のように。息を吐くのも躊躇われる。これは、なんという感情なのだろう。

     力が入らず呆けているとそれを見つけた夏目がこっちを見て手を伸ばしてくる。
    「田沼、どうしたんだ」
     目が合う。
     赤い。
     頬と目が赤い夏目と、目が合った。
     

     学校が午前で終わるというので遊びに行こうという話になった。
     なのにおれたちは、遊び慣れていないせいかいざ遊ぶとなると何処で?何を?となってしまう。
     それを見かねた夏目のうちのにゃんこ……先生が、「やることが決まらないのなら美味いものでも探しに連れていけ」と、そういうことで普段は行かないような電車で数駅先まで出かけることになった。

    「和菓子じゃなくともよい、たまには洒落たもんでも良いな!」
    「勝手だな……」
     呆れたように言う。
     人が猫と話している不思議な状況におれはもう慣れたが、他の人はそうではない。
    「話したいなら、人の格好をしろ」
     
     渋々ながらもにゃんこは人の姿で俺たちと一緒に電車に乗った。
    「そうやって並んでいるのを見ると本当に……」
     そっくりだった。
     夏目と、にゃんこが化けている女性は、本当にそっくりで双子と言われても信じるような外見であった。
     その姿で。その口で。
     ―――ここでこれ以上考えるのはやめよう。
     おれは電車の外を眺めることに専念することとした。


     目的地の駅に着くと、夏目は少し険しい顔をしていたが反してポン太(人型)はまるで夏目の生気を吸ったかのように元気だった。
    「いくぞー!」
     と、今時見ないような片手をあげたポージングをしてから結構な速さで走り去って行った。どうやら場所は知っているらしいので無理に追いかける必要もないだろうと今は夏目に合わせることにする。
    「大丈夫か」
    「ああ、まだ大丈夫だ」
     ふう、と細く息を吐きだしている。
     腰を少し前にかがめており、苦しそうに見えるのは間違いではなさそうだったが夏目はおれに頼ることなくポン太の後を追って道を進み始めた。
     頼ってくれてもいいのに。
     いつもそう、思っているが夏目の、俺に対する優しさがそうさせないのだろう。「迷惑をかけてはいけない」と強く思っている。
     迷惑ではないと言い続けてもこれはなかなか通じないようなので態度で示していくしかないようだが。
    「駄目そうなときは、そうなる前に言ってもらえると嬉しい」
     先を歩きだした背を追いかけて横に並ぶ。倒れないようにすぐ横を歩く。……おれがいけるのはここまで。触れるか触れないかの距離をとった横を歩くだけ。まだあのにゃんこに全然届かないことを思い知らされる。
    「先生もいるから、大丈夫だ、ありがとう田沼」
     こうしてトドメを刺されたので、ただ笑うしか、出来なかった。


    「遅い!」
     と、店の前でふんぞり返っているこのキレイな女子は、いつも酒臭くて飲んだくれているぼってりしたあの猫が化けたものだが。夏目に似ていることを飲み込んだ今余計にキレイに見えた。
     夏目は友達だと、分かっているつもりだが。
     ある症状が出るようになってからというもの夏目を意識せざるを得なくなってきてしまった自分のことも分かっていた。
     普通の友達がしないようなことをしているからか、それに対し何とも言えない感情を抱きつつある。
     背徳的、とでもいうのか。
     だめだと分かっているのにもっと見たいししたいと思ってしまって、夏目のためではなくこれはもう自分の感情に任せた自分のための行為だと理解していた。それを伝えたら拗れることも。
     ただこれが「好き」なのか「独占欲」なのかわからないので自分も下手に動くことが出来なかった。

     考え込んでいると脛を思い切り蹴られてそれどころではなくなる。
    「いって……」
    「辛気臭い顔をするな! ケーキに失礼だ!」
    「おれには失礼じゃないのか蹴りは」
     女に蹴られたはずなのにものすごく痛かった。中身が妖だからだろうか。とにかく痛いそこを撫でる。
    「まったく辛気臭いやつらばかりで」
    「やつら?」
     言われるがままに店に入り、どうやら洋菓子店だったそこでケーキを買って外に出てきたところだった。後ろを見ると、夏目がさっきより白い顔をしていることに気付く。
    「夏目?」
    「ごめん田沼、ちょっと気持ち悪い」
    「おれもすぐ気づかなくてごめん」
     考え事をしていたせいで夏目から少し離れていたようだ。
     見れば、白いしさっきよりふらついている。腰を支えようとすぐ隣に着くが、夏目はふんぞり返っている女子―――ポン太のほうに顔を向けた。

    「先生、具合悪い」

     ん、と短く返事をした女子は、する、と夏目の前まで来て小さく口を開いた。その口から赤い舌が見えそれが夏目の小さな口に飲み込まれていく。目を逸らしたいのにそう出来ずそれを見続けてしまった。
     息をするのも忘れていて、口が離れたのを見てから二人に気付かれないようにゆっくりと息を吐いた。


    「俺にはそんな風に頼ってくれないのに」
     そう思って止められなかった。
     気が付いたら家に帰ってきていて先の衝撃が緩和される前に家に辿り着いてしまったようだ。きっと会話もして帰ってきただろうにほとんど記憶もないなんて何か余計なことを言っていないかそれも心配になってきた。

     夏目は、隣にいたおれではなくポン太を選んで助けてもらった。
     効果に違いがあるのかどうかなど詳しいことはおれには分からないが、もしそうだとしても隣にいるおれよりあちらを選んだことに衝撃を受け今ここまで悩んで気が付いたら家、気が付いたら夜になっている。
     これは。
     もう、他の言葉では表せない気がした。
     他ではなくおれを選んで欲しかった。キスしてあげたかった。
    「まじかぁ……」
     誰かに相談できたらよかったのに。誰にも相談できずこれはただの独り言になるだけだ。
     ゴールのない迷路のようだ。入ってはいけなかったのに。
     寝るまでに何回溜息をついたのかわからないくらい、息を吐き続けた。


     「そのような」、行為とは縁のなさそうな夏目が、真昼間の木陰で他人と舌を絡ませているあの姿が何度も思い出されて止まない。
     思い出して、勃起した。
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