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    おわり

    @owari33_fin

    アズリドとフロリドをぶつけてバチらせて、三人の感情をぐちゃぐちゃにして泣かせたい

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    ミーティア3️⃣ Az-25『宣戦布告』

    「オレに、金魚ちゃんを自由にする力をください」
    「クソ野郎! そんな理由で頭を下げんじゃねぇ!! 一生に一度の、テメェの人生を左右することを、そんなやつのために選んでも、絶対にお前は気分じゃなくなったら飽きて放おり出すにきまってる!!」
    「しない。今度こそオレは、金魚ちゃんを見失ったりしない」
     フロイドの真っ直ぐな目が、父親を見つめる。
     その顔に、コイツがあの時の事をどれだけ後悔して、思い悩んで、ハーツラビュルに転寮していったかを僕に理解させるに十分だった。
     なのに、リドルに手を貸し逃した僕を疑い問い詰めることもせず、卒業後、世界を回ってリドルを探し。リドルと再会して、すべてを知り、なのに隠していた僕に、あんなふうに笑って、ああ言えたフロイドに、僕が同じ立場なら、同じことが出来ただろうかと、考えてしまう。
    (本当に僕は、昔とちっとも変わってない、まだダサくてグズでノロマなタコのままだ……!)
     男は自分の前で土下座するフロイドの言葉を聞き流すつもりなのか「お前がどれだけ馬鹿か今理解した。底なしの馬鹿だ。手に負えねぇ……」と怒りの籠もった顔で、自分の息子を見下ろしていた。
     そして僕は、そんな男とフロイドの間、フロイドを庇うように前に立った。
    「アズール?」と、フロイドがなんでぇ〜? とでも続きそうな間の抜けた声を出す。いや、本当に間抜けなのは僕だ。勝てる見込みもない、絶対的な王者の前に、特に作があるわけでもないくせに割って入り、こうやって怒りを買っている。
    「オイ、アーシェングロットのクソガキ、お前、自分が何やってるかわかってるのか?」
    「ええ、ええッ! 自分がどれだけ馬鹿な事をしているかわかっていますとも!!」
     オクタヴィネル寮長に就任された時、寮服に合うようデザインして作った杖を、僕はとっさに魔法で引き寄せ手に構えた。ナイトレイブンカレッジでは幾多の障害を共に戦い。卒業しても何かあった時のために、パーティーに行く際は持参し持ち歩いた杖だ。それを男に突きつけるということは、この圧倒的強者への宣戦布告と同じ意味でしかない。
     しかし、フロイドが……あの、絶対に自分の欲のためにしか動かない男が、他人の力にすがろうとしてまでリドルたちの自由のために動いている。それなのに、リドルの夫で、子供たちの父親の僕が率先して動かないでどうする!
     僕が杖を構えていると、カートに紅茶を乗せたジェイドがニコリと笑ってこの場に戻った。
    「僕がいない間にこんなに面白いことになっているなんて……一体何があったんです?」
     チッっと、舌打ちした男は、ジェイドに「コイツら二人、さっさとここからつまみ出せ」と命令し、ジェイドがツカツカと僕たちの元にやってきて、くるりと父親に向き直る。
    「父さん申し訳ありません、状況は全て分かるわけではありませんが、僕もどちらかと言うと、フロイドとアズールに付きたいと思います。だって、そちらのほうがどう考えても面白いでしょう?」
    「俺の息子は、二人揃って馬鹿だったのか……もういい、お前ら二人に継がせるぐらいなら、新たに稚魚を作って、一から育てたほうがいい」
     男が、ゴキゴキと首を鳴らし、スッと拳を構えた。
    「ちっとばかし揉んでやる、三人で来いよ」
     その言葉の通り、僕たち三人が攻撃に出れば、男は簡単に僕のウォーターショットを避け、近距離からのフロイドの蹴りやジェイドの暗器による攻撃も全て防ぎ、僕たちはカウンターで簡単に吹っ飛ばされた。男の前では、僕たちの攻撃はお遊戯の様なものだ。簡単に弾かれ、気が付いたら三人、何度も床に転がされていた。殴られた痛みで起き上がるにも呼吸すらまともに出来ない。
    「クソガキどもが……」そう吐き捨てた男は、一体あのリドル・ローズハートのどこが、お前らをここまでさせるんだと、理解し難いと頭を押さえた。
    「金魚ちゃんは……スゲェ強くてさぁ……頭おかしいぐらい真っ直ぐで、いつも何に対しても全力で向かってくるんだ。オレがなんかやって、皆んなが適当に返すようなことにも、全部、一つひとつ拾って、馬鹿みたいにさぁ、真面目で、炎みたいに熱くて強くて、魔力がなくなっても、金魚ちゃんは誰よりも強かった」
     フロイドが腹を押さえながら立ち上がる。
    「そうですね、リドルさんは本当に面白くて、苛烈で……リドルさん以上に面白い人間は陸でも海でもそう簡単に見つからないでしょうね」
     ジェイドが殴られて切れた唇の血を拭うように手で擦り立ち上がる。
    「当たり前です」フロイドとジェイドに同意し、僕も杖に掴まって立ち上がる。
    「あれだけ僕が努力しても勝てなかったリドル・ローズハートがくだらない? あなたはリドルさんと直接会った事がないから分からないんです。エネルギーの塊のようなリドルを知ればそんな事を言えなくなる。あの人はそれぐらい強烈な、一度見たら絶対にそんな事が言えなくなるような人だ。リドル・ローズハートを紙で書かれた表面的な事しか知らずに評価するなんて…… 僕がボスなら、彼ほどの人材なら従業員に任せたりせず、時間を割いてでも自分の目で見て判断を下します」
     僕たち三人に畳み掛けるように挑発され、グッと怒りが込み上げるも、男はさすが、この組織を束ねるボスという事か、その怒りを飲み込み一瞬で冷静さを取り戻した。しかし、膨れ上がった怒りはきっちりエネルギーに変換されたのか、その圧だけですっ転びそうだ。
     室内ということもあり、大きな魔法を行使していない僕は、いざとなればこの部屋が壊れる程度の魔法を使う事も考えた矢先、名乗りも無しに部屋のドアが開いた。
    「ウフフ、フロイドさんは本当にパパによく似ましたね」
     背中に流した真っ直ぐの豊かな黒髪を腰まで伸ばし、オリーブ色の目尻の垂れた大きな瞳をした極上の美女が、高いハイヒールの踵をコツコツと鳴らし部屋に入ってきた。女にしては長身で、ハイヒールを履いていなくとも僕より背の高い女を見て、目の前の男が一瞬で戦闘態勢を解いた。
     おまえ、ママ、母さんと、三人から違う呼び名で呼ばれたその女は、一瞬で指先の爪をグッと伸ばし、自分の夫の喉元に押し当てた。
    「アナタ、わたしに言いましたよね? オマエの障害になるものは全て俺が潰してやる。そして、オマエが望むことも俺が全て叶えてやるって。その時の言葉が本当なら、わたし、叶えてほしいの……だめ?」
     小首を傾げる女は、甘えた声音で夫にお願いを突きつける。男の喉に押し当てられた爪が食い込み、血が一筋流れている。そんな痛みも、男にとっては自分の最愛の女から与えられたなら、振り払うこともせず従順に受け入れてしまうようだ。
     クソ……と苦々しく悪態をつく男は、妖艶に微笑む女にキスをして、その髪に指を入れ、口付けを深くする。そして、十分に味わったところで唇を離し、僕たちに向き直った。
    「一度そのリドル……いや今はリデルだったか、まぁどっちでもいい、そいつに会わせろ。お前らがそこまで言う男なら、俺も一度会って確かめたい。ただ、しょうもねぇやつなら、その場で殺す」
     リドルを殺すと言われギョッとした僕を置いて、フロイドはいつもの軽さで「あは、いーよ」と返事をするものだから、僕は焦った。
    「ちょ、フロイドオマエ何を勝手に」
    「金魚ちゃんは魔力がなくたってあんなに強くて面白いんだから、オヤジなんかに簡単に殺されたりしねーよ。それに、オレもアズールもいるんだし。いざとなったら本気でオヤジをぶち殺して、ファミリー分捕っちゃえばいーじゃん」
    「今し方、ここまで手も足も出せずに負けて、そんなことよく言えるな」
     目の前のこの男が、一体どういう意図があってリドルに会わせろと言ったかもわからないのに……この先本当にどう転ぶのか、僕自身全く分からない。
    「ジェイド、今すぐ輝石の国へ、すぐにプライベート・ジェットが使えるように手配しろ」
     言われてすぐ、まだ痛むだろう身体より、この先の展開に心躍らせたジェイドが、ニタリと唇の端を持ち上げて「かしこまりました」と笑う。
    「アーシェングロット、お前も責任持って着いてこい」
    「分かりました、元よりそうするつもりです」
     僕も男に了承し、頷いた。きっと今が、この先の未来がどうなるかの本当の正念場なんだろう。この男を丸め込んでanathemaへ対抗する力を得るか。はたまた負けてゲームオーバーになるか……
    (ゲームオーバーにだけは、絶対にさせるもんか)
     スマートフォンで、空港に電話をかけ、運転手を手配したジェイドが「準備できました」と父親に言い。僕は先ほど数時間かけてやってきた道のりを、また戻ることとなるその前に、ジェイドの胸ぐらをフロイドと共に掴んだ。
    「二人とも、怪我をしているんです無理はなさらない方がいいですよ」
     焦るジェイドに「おかまいなく」と言い、フロイドも「そうそう、逆にオレらからジェイドに、し〜っかり、お礼しなきゃって……あはっ!」と声を上げ。僕たちは取り敢えず一発、ジェイドに向かって“あの時のお礼”をするべく、拳を振り下ろした。
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