寿司食う話白川は気持ちの良い金の使い方をする。感謝や敬意を金で示す方法を知っている。物に見合った価値を支払うべきと、本気で考えている。
そのせいか、滅多に旬との食事に大衆向けの店を使おうとしない。
物への価値と同じように、旬や旬との関係の価値として、配される食事の質はともかく、特別な理由でもない限り廉価な大衆食堂は似合わないと思っているらしい。
だからいつものように家に招かれて少しした後、訪ねてきた出前から受け取ったものを見て、旬は少しだけ首を傾げた。
「こんなに食べ切れるか?」
「残ったら明日も食べるから、気にしなくていいぞ」
それっぽい模様の印刷されたプラスチックのトレーは、広いはずのテーブルの短辺を直径とするくらい大きい。そしてそこにみっしり詰められた握り寿司。驚くべきは、さらに四分の一ほどの大きさで一口大の細巻が詰まったトレーが別にある事だ。いくら健啖な成人男性二人とはいえ、食べ切れる量ではない。
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