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    pimankoubo

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    pimankoubo

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    ワンドロ
    お題お題『スーパー・コンビニ・買い出し』
    #kbdnワンドロ

    #kbdnワンドロ_162

    #キバダンワンドロ
    #キバダン
    #kbdn

    とあるモブの話 私はモブ。
    どこにでもいる至って普通のモブである。
    私はナックルシティのコンビニで働くフリーター。
    あのブラックナイトよりさらにブラックなこのコンビニに勤め始めて早3年、本当はかの名門ナックルジムのジムトレーナーを目指して田舎から出てきた筈だった。
    しかしはじめて採用試験を受けたとき最初は順調にいけたのに最終の試験でポカをやらかした。
    その次も、さらにその次も……3度目の正直になったかもしれない今年はまたポカをやらかすのが怖くて応募さえしていない。
    これはもう、潔く諦めた方が良いかもしれない。
    諦めて田舎でりんご農家を継いだほうが将来は楽かもしれない。
    そんな事を考えながら今日も今日とて連勤記録を伸ばし続けている。
    相棒のアップリューとオンバーンはそんな私を可哀想なものを見る目で見てくるが、私にはジムトレーナーの才能がなかったのだ諦めろと良く良く言い聞かせた。
    レジに立ちながらボーッとしていると入店音と共に二人の男性が入ってきた。
    「いらっしゃいませ~」
    とりあえず形だけの声かけをしまたボーッとしていると
    「こら、ダンデお前そっちはデザートコーナーじゃないから」
    とどこかで聞いた名前が聞こえた。
    「すまないキバナ」
    「こんな狭い店内で迷子とかやめてくれよ」
    「流石に無理だろこんな所で迷子なんて」
    「……デザート買いに来て雑誌コーナーに直行したお前が言うか?」
    そんな事を話しながら、ばかでかい男が二人仲睦まじくデザートコーナーに向かっていく。

     今うちの店では食欲の秋、スイーツフェアなるイベントが行われていて、二人はそれが目当てのようだった。
    「キバナ、キバナ!」
    「何?」
    「ヌメラが……ヌメラが!!」
    「えっ」
    「「かわいい」」
    ヌメラの形をしたケーキを眺めてニコニコと笑うばかでかい男達はなかなか異様な光景だが、他人のプライベートに干渉してはいけない。
    見て見ぬふりを決め込んだ。
    一応これでもジムトレーナーを目指していた身。
    二人の正体なんてすぐにわかったし、なんなら大ファンだぶっちゃけサイン貰いたい。
    だがしかし今は業務中。
    いくらフリーターと言えども仕事に私情は挟まない。
    そんな事を考えながらボーッとレジにたつ。
    しかし意識は二人に向いてる。
    明らかにプライベートの二人は分かりやすく甘い空気を回りに振り撒いていて見ているとなんか……こう、胸がときめく。
    何かが目覚めそうなくらいにときめく。
    二人はスイーツを大量にかごに入れ
    「キバナの選んだプリン俺も食べたい」
    「俺様もダンデが選んだシフォンケーキ食べたい」
    「分けっ子しようぜ」
    「さんせー」
    そんな事を話しながら店内を移動してレジへ向かってくる。
    間近で見る二人は更にでかく迫力しかない。
    かごの中身をピッピッとスキャンしていると
    「君トレーナーなのか?」
    と声をかけられた。
    驚いて顔を上げれば黄金の瞳とかち合った。
    「えっ、あ、はい」
    「だと思った」
    「なんでわかったんですか?」
    そう問いかければ私のバトルの時はバンドで隠れている手首を差し
    「日焼け。ここだけしてない」
    そう言って笑った。
    「あ、本当だ」
    そう言って隣の青い瞳まで私を覗きこんでくる。
    「……てか、お前去年、一昨年もジムトレーナー採用試験来てなかった?」
    「そうなのか?」
    「うん…………なぁ、お前の相棒達は元気か?」
    そう言って二対の瞳に見つめられ、なんとなく居心地が悪くなる。
    「元気……ですけど」
    「じゃあ、今年もお前の挑戦楽しみにしてるな」
    そう言って青い瞳が細められた。
    「キバナがそこまで言うなら相当素晴らしいトレーナーなんだな」
    ガラルの未来は明るいぜ!
    そう言って笑顔を向けられれば、実はもう諦めようと思ってて……何て言えなかった。
    「あぁ……はい」
    そう曖昧に答え再び手を動かす。
    「あ、袋はあるから大丈夫です」
    そう言ってドラゴンストームが手際よく袋へ沢山のスイーツをしまっていく。
    「じゃ、頑張れよ」
    そんな事を言って二人は店を出ていった。

    「……………………こんなことあるんだなぁ」
    ガラス扉の向こう側しっかりと手を繋いで遠ざかる二人組を眺める。
    少し行った所で紫の髪を揺らしたオーナーが振り返り店内へ帰ってきた。
    「え、」
    まっすぐレジまで来たオーナーは
    「すまないスプーンを貰い忘れていた。二本貰えるだろうか?」
    と私に言う。
    「!!あぁ、すいませんうっかりしてました」
    そう言ってスプーンを二本差し出せば、それをなかなか受け取らず私の手首を見ている。
    「なにか?」
    何か粗相をしてしまったかと不安になった私に
    「日焼けの跡がわかるほど君は相棒達と歩んできたんだな」
    とオーナーがいった。
    「趣味でダイマックスなしのバトルをする人は沢山いるし、バトルタワーに来て力試しでダイマックスのバトルを楽しむ人も沢山いる、でも君のように日焼けの跡が残るほど、腕に傷が残るほどの人はあまりいない。よっぽどポケモンを、バトルを愛してるんだなキバナと俺と一緒だな」
    ようやく私の手からスプーンを受け取ったオーナーが更に言葉を続ける。
    「努力は必ず報われない。でも、努力をしないやつが報われるチャンスすらないんだぜ?」
    それじゃあ、頑張ってくれ
    そう言って今度こそ店を出ていったオーナーは手に持ったスプーンを掲げて片割れの元へ走り去っていった。
    揃った二人は今度は腕を組んでなにやら楽しそうに会話しながら小さくなり消えて行った。

     私はモブ
    どこにでもいる至って普通のモブである。
    いや、普通のモブだった。
    その日私はコンビニの店長に退職届けを叩きつけ、その他のバイトも辞め、フリーターをやめた。
    次の年の春、私は先輩方と揃いのメガネをかけ新しい場所で日々をすごしている。
    ついでにあの日の胸のときめきが忘れられず、職場内の、上司とオーナー二人を見守る会の会員になったことも付け加えておこう。




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