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    キクイモ

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    キクイモ

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    夜宮ラムネ(@ramune_hs )さんに対する二次創作小説です。

    炭酸少女と電池切れ 人が見たら乱雑と言われてしまうような部屋の中で、私はようやく二度寝から覚めた。
     スマホを確認するとラインに通知が入っていた。どうせクラスのグループラインのものだ。念のためスマホを機内モードにして既読をつけないようにして、内容を確認する。そうしたら何と、みんなでカラオケに行く話になっていた。私の返答待ちのような形だ。
     ……いいや、寝ているふりをしてしまおう。私はそのままスマホを投げる。たまたまクッションに落ちたスマホが『ぼふ』と間抜けな音を立てた。
     
    『ラムネっていつも元気だよねー』
    『ラムネが落ち込んでる姿とか想像しにくいよねー』
     
     私はそんな風に言われる事が多い。
     元気一辺倒で、人好きのする、天真爛漫なクラスの中心人物。
     きっとそれがクラスの––––いや、クラスに限った話じゃなく、私を知っている人全員が私に抱いている共通認識だろう。
     けど、それは半分正解で、半分不正解。
     普段の明るい姿も、もちろん私だ。キャラを作ってるつもりはない。
     だけど、今の電池が切れてしまったような状態も、また私だ。
     それでもきっとみんなが抱いている『夜宮ラムネ』とは違うだろうから、今の姿はクラスのみんなにはとても見せられない。単純にみんなと接するだけの気力が無いからというのが理由の一つだけど、正直幻滅されてしまうのが怖いというのが一番怖い。……今の私も、私なのにな。
     でも、ネットの世界は好きだった。一番私らしく居られた。だから、ネットを通じて何か形にできればと、Vtuberのオーデションに応募した。でも結果は……
    「最下位かぁ……」
     心の中に溜まってしまったモヤモヤを少しでも和らげたくて、ぼそっと呟く。
     気持ちを吐き出したかったのに、改めて言葉にしたらさらに気持ちが落ち込んでしまった。
     それはそうだ。一位になる自信があったとか自惚れるつもりはないけれど、でも最下位だ。ヘコむさ。そりゃあヘコむ。動く気力もおきなくなるさ。
     救済措置として高評価が千票獲得できればデビュー出来る敗者復活戦が決まったけど、これで千票集まらなかったら私はどうしたらいいんだろう。
     何よりも怖いとか、そういう気持ちの方が強い。そんな気持ちのまま、配信の告知をSNSに投稿する。そしてまた、倒れるように横になった。そのままぐるぐる、ぐるぐるとよくない事を考えているうちにまたスマホが短く断続的に震えた。
     どうせまたグループラインろうと、げんなりしながらスマホを確認する。すると––––
     
    『うおぉぉぉぉ!! 絶ッッ対行くぜぇぇ!!!!』
    『炭酸ちゃん絶対行くぞ!!』
    『遅れるけど参加はします! 楽しんでいこう!』
     
     目に入ってきたのは、さっき私が投稿した配信告知についた、そんなコメントだった。それだけではなく、リツイートも、いいねも、沢山ついていた。
    「あはっ……」
     思わず、笑みがこぼれた。
     電池切れのような状態だった胸の中が、何かで満たされたような気がした。
    「よっし! やろうか!」
     ひとり気合を入れて、配信準備に取り掛かる。
     
     電池が切れていようとも、私は私だ。
     私は、私の事を応援してくれるみんなを、楽しませたいんだ。それだけなんだ。
     
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