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    ユウキ

    @mahoyakuaka
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    ユウキ

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    水族館デートする晶フィ
    ※ナチュラルに逆トリ・同棲設定

    ##晶フィ

    ずっと傍にいるから 揺らめく波に身を任せてゆらゆらと水中を漂う魚の群れ。壁一枚隔てられた向こう側で優雅に舞う色とりどりの魚の群れを眺めながら、俺はついついその光景に見入ってしまう。視界いっぱいに広がる青の世界と、その隅に映るフィガロの姿に心が幸せで満たされていくのを感じた。
     今日、俺たちは朝から水族館へと足を運んでいた。この世界の文化に興味があるらしいフィガロは、時折こうして「この場所へ行ってみたい」と要求してくるのだ。そうして、決まってその隣には俺がいる。フィガロ曰く「せっかくだしきみと二人で楽しみたいじゃない」とのことで、それが飾らない素直な言葉だとわかっているからこそ俺はいつも喜んで彼に付き合っている。今回はイルカショーを見てみたいと言うから、よく晴れた日を選んで彼の願いを聞き入れた。
     ショーが始まるまではまだ時間に余裕があるため今は二人で館内を散策している。この水族館ではペンギンの散歩が見られるらしい。他にも海月の展示コーナーや深海魚のエリアなどがあるらしく、興味津々といった様子で辺りを見回すフィガロがなんだか可愛く見えて笑ってしまう。この世界のことを知る度に、フィガロは毎回新鮮に興味を示していた。
     (綺麗だなぁ……)
     そんな中、大水槽を見つけてふと立ち止まる。日々の疲れなんて洗い流してくれるようなゆったりとした落ち着いた雰囲気に、心身ともに心地よく癒される。
    「……すごいな、本当に海の中にいるみたいだ」
     大水槽を眺めながら呟くフィガロの横顔を見て俺は思わず息を止めた。薄暗い室内で水槽の前に立つ彼の姿が、水中の光を反射して一層鮮明に浮かび上がっていたからだ。
     青い光に照らされる群青色の髪は深い海の色によく似ている。翡翠の瞳に淡く漂う紺碧の波がやけに神秘的で、美しくも儚げな光景に思わず目を奪われる。きらきらと、ゆらゆらと。あなたに映る景色はただただ美しくて。どこか切なくも幻想的なその光景に、俺はいつの日か彼に聞いたムーンロードの話を思い出していた。
    「……フィガロ」
     目を離したらすぐに消えてしまいそうで怖くて、なぜだか胸が苦しくなった俺は気付けば彼の名前を呼んでいた。
    「うん? どうかした?」
    「あっ……な、なんでもないです! ごめんなさい」
     ふと我に返り、彼の腕を掴もうとして咄嗟に伸ばした手を慌てて引っ込める。不思議そうな表情で首を傾げるフィガロに「本当に、なんでもないですから」と曖昧に笑って誤魔化した。
    「そう?」
     いつも通りの優しい微笑みを返されれば、それ以上は何も言えない。なんとなくばつが悪くなった俺は大人しく空間を包み込む静寂に身を委ねた。
     二人きり佇む水槽の前はまるで他の空間から切り離されたかのように静けさを纏っていて、ぽつぽつとまばらに聞こえてくる話し声や足音がやけに遠くのものに聞こえた。世界に二人きりだと錯覚してしまうような静けさは、彼の「賢者様」と俺を呼ぶ声で打ち破られた。意識を目の前の現実に引き戻されて俺はハッと目を見開く。
    「次は向こうを見に行ってみようか」
     フィガロはそう言ってイワシの群れがいる水槽に向かって歩き出した。俺も慌てて彼の後についていく。彼の足元に浮かび上がる影を見つめていないと本当にここにいるのかどうか不安になって、無意味な不安に駆り立てられた視線は自然と地面に吸い込まれていく。もう一度彼に触れようと伸ばした手をゆっくりと、ゆっくりと下ろす。
     (……寂しそうに見えるのは、俺の気のせいなのかな……)
     いつもみたいに鷹揚としたペースで歩く彼の背中を追い掛けながら、ぼんやりと一人そんなことを考えていた。

    ****

    「わあっ、すごい……!」
     平日の昼間にもかかわらずイルカショーはたくさんの観客に囲まれて賑わっていた。華麗に水しぶきを上げて天高く飛び跳ねるイルカの姿に魅せられる。綺麗な曲線を描いた空中にはきらきらと光る水の結晶が舞っていて、惚れ惚れとするその美しさは息をするのさえ忘れてしまうほどだ。
     太陽の光を反射して揺らめく水面が夢のような時間を連れてきてくれる。気付かれないように横目でフィガロの様子を窺うと、彼も同じように目の前の光景を見つめていた。
     (フィガロ、嬉しそう)
     いつものにこやかで人好きのするものとはまた少し違う、心の底から楽しんでくれているような笑顔だった。そんな笑顔を見て俺の方まで幸せな気持ちになる。嬉しそうな横顔をちらちらと眺めながら、俺はやっぱりこの人のことが好きなんだなぁ、なんて一人頬を緩ませる。
     楽しんでくれてるみたいでよかった、と視線を前に戻そうとした瞬間、俺の視線に気付いたらしいフィガロがふっと微笑みかけてきた。じいっと見つめられてしまい、どぎまぎと視線を泳がせる。フィガロはそのまま俺の手の上に自分の手を重ねた。
    「……ッ」
     重ね合わせた手を通じてドキドキと跳ね上がる鼓動の音が伝わってしまいそうで手のひらが急激に汗ばんでいく。微かに空いた距離が途端にとてももどかしく思えて、ほんの少しだけ彼との距離を縮める。
     触れ合った肩の温もりは、ずっとくっついていたらこのまま溶けてしまいそうなほどだった。

    ****

     ショーが終わって屋外の休憩所に立ち寄る。青々と茂る木々と噴水以外には、まばらな人影しかない。
     空いている席に座って一息つく。外はまだ明るくて、じりじりと照りつける日差しに今が夏であることを実感する。日差しは強いけれど風があるからそこまで暑すぎることはない。まさに絶好のお出掛け日和だった。
    「楽しかったね、賢者様」
    「はい! ……あはは、でも、すごく濡れちゃいましたね」
    「大丈夫だよ、きっとすぐに乾くさ」
     イルカショーが終わった後、俺たちはびしょ濡れになっていた。特にフィガロはかなり濡れていて、髪の毛がぺったりと額や頬に張り付いている。それを手で軽く払い除ける仕草はいつもより少し幼く見えて、それなのに揺れる度ぽたぽたと滴り落ちていく雫はどこか色っぽく見えた。
     ずっと見ているとなんだか緊張してきて、ぱたぱたと扇ぐ服の隙間から見える白い肌や露わになった首筋から慌てて目をそらす。視線のやり場に困ってしまう、と正直に言えば、きっと彼はまたいつもの調子で俺をからかってくるのだろう。そういった扱いをされるのも実はそんなに嫌じゃないけれど、やっぱり、好きな人の前では格好つけていたいという気持ちもあった。
    「だっだめですよ! 風邪引いちゃいます」
     誤魔化すように自宅から持参してきたタオルを手渡すと、フィガロは俺とそれとを交互に見つめた後「じゃあきみが拭いてくれる?」と何やら意味ありげに笑った。
    「えっ。は、はい、いいですけど……」
     戸惑いながらも了承すれば彼は満足げに「やった」と笑みを零す。その表情は心なしか嬉しそうだ。
     (……今日は甘えたい気分なのかな)
     不思議に思いながらも立ち上がり彼の頭部に触れる。ふわふわとした髪は手触りがよくて癒された。普段は決して見ることの出来ない場所に触れているのがなんだか新鮮だ。
    「行こうか」
     一通り拭き終わるとフィガロは唐突に俺の手を取って立ち上がる。彼に倣って歩き出そうとした矢先、それが所謂恋人繋ぎと呼ばれるものであることに気がついてぶわりとした熱が身体中を駆け巡った。夏の暑さのせいだけではない熱が、途端に全身に纏わりつく。
    「あ、あのっ! フィガロ、手……!」
    「だめ?」
    「だめ、ではないんですけど、その……恥ずかしくて」
    「あはは、嬉しいな。そんな風に思ってくれるんだ」
    「……?」
    「だって、それってつまり俺を意識してくれてるってことでしょ?」
    「なっ……!」
     秘密を共有するようにいたずらっぽく耳打ちされた言葉にバクバクと鼓動が跳ね上がった。吐息に混じって囁かれた言葉は、それだけでこんなにも俺の心を揺り動かす。やられっぱなしなのがほんの少しだけ悔しくて、だけど、それを上回る幸せな気持ちが胸の奥深くに甘く染み渡っていく。
    「……内緒ですよ」
     小さく囁いて、ぎゅっと握られた手を負けず劣らず強い力で握り返す。フィガロは少し驚いた顔をした後すぐにまた柔らかい微笑みを浮かべた。それを見た俺も自然と口角が上がる。
    「今日、きみと二人でここに来られてよかったな」
     不意にぽつりと呟かれた言葉。独り言のようなそれに込められた想いは日差しに隠れていて眩しい彼の顔からは読み取れない。
     どんな笑顔をしているのかな、と、少し背伸びをしてみたくなった。太陽に照らされた彼の横顔が、もったいぶるようにゆっくりとこちらを振り向く。
    「ありがとう、賢者様」
     振り向いたその顔は今まで見てきた何よりも優しい笑顔をしていた。慈しむような眼差しで見つめる彼の瞳の中には確かに俺の姿がある。
     繋いだ手がひどく冷たいのに、重ね合い馴染みゆく体温のおかげで寂しさは全然感じなかった。

    ****

     その後も二人でいろいろな展示物を見て回った。途中、休憩所で売っていたソフトクリームを食べたり、お土産コーナーでぬいぐるみを見たりと、水族館の中だけで過ごすにはあまりにもったいないくらいに充実した時間を過ごした。
     俺たちはあれからずっと手を繋いでいる。みんな水槽に意識が向いているせいか思っていたよりも周りからの視線は感じない。ただでさえ薄暗い館内は、ひとたび水槽の近くから離れれば本当に真っ暗だ。
     館内に閉館を知らせるアナウンスが流れる。名残惜しいと思いながらも最後にもう一度訪れたのは大きな水槽があるフロアだった。照明が落とされた薄暗い空間の中で、ゆらりゆらりと揺らめく青い光がやっぱり今もまだ幻想的だ。
    「わあ……」
     心地よく落ち着く光景に思わず感嘆の声を漏らす。青の世界の中にいるとまるで自分も海の中へ潜っているような気分になった。不思議な感覚のまま、俺はしばらくその光景に見入っていた。
     ふと気になって隣を見ればフィガロも同じように目の前の景色を眺めている。その瞳には、もう寂しそうな色は浮かんでいなかった。
     普段より一層穏やかな彼の横顔を見て安心する。青く彼を照らす光と浮かび上がる彼の影。その姿がなんだかとても美しく見えて俺は無意識のうちに繋いだ手を強く握りしめていた。彼が確かにここにいることを、きちんと確かめるように。
     瞬間、体が密着するほど強く抱き寄せられて眼前に彼の瞳が迫る。触れた唇と頬に触れた彼の右手は、さっき食べたソフトクリームのせいかひんやりと冷たくて甘かった。
     一瞬の出来事に呆然としている俺を見て、フィガロがくすりと小さく笑う。
    「へっ……」
    「しぃ」
     人差し指を立てて微笑む彼の眼差しは青の世界を反射して静かに煌めいていた。
    「もう少し、このままでいさせて」
    「! ……はい」
     そっと抱きしめ返すと、「うん」という満足げな声と共に肩の上に温かな重みを感じた。頬に触れる髪がくすぐったくて身を捩る。嗅ぎ慣れた香水と汗ばんだ肌の匂いが鼻孔いっぱいに流れ込んできて、心臓がどくんと大きく音を立てた。
     そのまま暫くの間じっとしていたけれど、さすがに恥ずかしさが勝ってきた頃を見計らいフィガロがゆっくりと体を離していく。
    「そろそろ帰ろうか」
     フィガロは俺の手を引いてゆっくりと、ゆったりと歩き出す。進む歩幅は彼にしてはやけに小さい。
     今、この瞬間を噛みしめているかのような歩き方だった。

    ****

     水族館を出ると外はもうとっぷりと日が暮れていた。それでも、じわりじわりと蝕む蒸し暑さが今が確かに夏であることを実感させる。
     今日は彼と二人で充実した時間を過ごすことが出来た。今日という一日をこのまま終わらせてしまうには、あまりにももったいないくらいに。
    「ねえ賢者様。今度の休みにはどこへ出掛けようか?」
     夕焼けが照らす彼の笑顔が一層眩しく感じられた。降り注ぐ穏やかな眼差しはどこまでも優しくて慈愛に満ち溢れている。慈しむような笑顔に一際大きく胸が高鳴った。
    「……あなたと二人なら、どこへでも」
     目と目を合わせれば、黙っていてもお互いに言いたいことは伝わっている。だからこそ止まない想いを臆さずに、隠さずにきちんと全部伝えていきたい。ちょっぴり照れくさくても、今こうして隣にいられるうちに伝えておかないと、きっと後悔してしまうから。
    「二人で、もっとたくさん同じ景色を見てみたいです。これからもいろんな場所に行きましょうね」
     同じ時間を共有出来る幸せがどこまでも優しい気持ちでこの胸を満たす。こんな時間がずっと続いていけばいいと思う反面、いつまでもこうしているわけにもいかないだろうことも知っている。厄災戦の後、気付けば俺が元の世界へ帰ってきていたように、フィガロもいつかあちらの世界へ帰ってしまうのだろうから。
     曖昧な言葉で彼をこの世界に縛りつけることはしたくなかった。だけど、ただ、彼とこうしていつまでも手を握っていられたら。溢れ出る願いを込めて絡めた指先に力を入れる。
    「……気のせいかな、今日はなんだかやけに暑いね」
     額に浮かぶ汗を拭う彼の頬が淡く染まっていることが夏の暑さのせいだけではないことを、繋いだ手が素直に俺に教えてくれていた。ぎゅっと握った手を同じようにぎゅっと握り返される。たったそれだけのことが幸せをもたらしてくれることを彼と出逢って初めて知った。今はただ、それだけで十分だ。
    「フィガロ」
    「どうしたの、賢者様」
    「……」
    「賢者様?」
    「……賢者じゃなくて、名前で呼んでくれませんか?」
     思い描く未来の先は俺一人では描けない。
    「晶、って……」
     手のひらの中で繋がった二人分の未来。どんなにこの手を離したくないと願っても、いつか必ず離さなければならない瞬間が訪れる。
     終わらないでほしいと願うこの瞬間が決して永遠のものではないように、俺たちがこれから先一緒にいられる時間はきっと短い。それでも、繋いだ手はいつだって俺の心にじんわりと優しくてあたたかい気持ちを連れてきてくれる。彼を誰よりも近くに感じられる嬉しさが、傍にいてくれる喜びが、決して消えない想いとなって俺の背中を後押ししてくれていた。
     背伸びしても、手を伸ばしても決して届かない距離。縮まらないその差がもどかしくなることもあるけれど、届きたいと必死にもがいて精一杯あがくことそれ自体に意味がある。何度も重ね合った温もりを思い出す度に、俺の心にはいつも幸せが舞い戻ってきた。だから、俺はいつまでもこの手を離さずにいたい。
     この手はもう決して離さない。離したく、ない。
    「もちろんさ。他でもないきみの頼みだからね」
     知らず俯いていた顔を上げると、フィガロは穏やかで優しげな微笑みを浮かべていた。
    「晶」
     いつもの声から紡がれる慣れない響き。まっすぐに見つめられた瞳と初めて呼ばれた名前がなんだか照れくさい。これからもたくさんの初めてを共に積み重ねていきたいと思わせてくれるような、そんな優しくてあたたかい声だった。
     幸せだなぁ、と思う。こうして二人過ごす今が積み重なって、いつか過去の思い出になってしまったとしても、この気持ちをずっと忘れずにいられれば大丈夫だと思った。なぜだか、そんな気がしていた。
     手を繋いだら、それから二人でどこへ行こうか。たとえどんなに遠く離れたとしても、何度でもその手を取って同じ時間を過ごしてみたい。

     俺たちは小指でなくてお互いの指先を絡めて、言葉には出来ない約束の真似事をしていた。
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