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    SEENU

    @senusenun01

    妄想文や雑絵を載せて発散している

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    ハイコルヴォ×ロウダウド
    やっと終わりです!!!!!!

    Destructive Circuits 10旅程は天候に恵まれ順調だった。その間彼らは時間をかけて少しずつ、色々な話をしたりまた話し合いをした。

    彼はダウドにスパイマスターとしての側面の仕事を手伝って欲しいようだった。疫病の収束が優先だったため復興は軌道に乗り出したばかりで、腐敗や陰謀がなくなる事はないし政治犯罪や内乱の種がなくなる事もない。主に国内の調査や情報収集を任されているトーマスは寝る暇もないほど忙しい事もあるようで、ダウドがいてくれたら、自分の手にマークがあればと嘆くこともあるようだった。

    だが、女王もそれを望んでいると彼に聞かされた時にはダウドも驚いた。

    “エミリーも人は変われるという事を学んだんだ。何よりも、彼女自身が大きく変わった。” コルヴォはそう言った。

    ダウドは成長した彼女を見てみたいと思った。新聞で見た女王に、自分が跪く未来が見えたような気がしていた。




    “普通の、痛みを伴わないセックスには興味がないのか?”

    ダンウォールへの到着は明日に迫り、彼らが船室で夕食を摂っている所だった。なんの脈略もなく、突然問われた内容にダウドは口の中のものを吹き出しそうになった。コルヴォは無表情で、いつものようにただじっとダウドを見つめている。

    コルヴォはカーノウや他のスタッフ食事を摂る事もあったが、この日は船の私室で二人きりで、ダウドはティヴィアの労働収容所について話し、ごくたまにコルヴォが何か答える、そういったごく普通の食事風景の筈だった。

    船にはダウドに割り当てるだけの部屋数はなかったため、彼はコルヴォの船室を利用していた。護衛官の部屋は広くシャワーなどの設備もあったからだ。

    コルヴォはあれ以来ダウドに触れる事もなく、同じベッドで眠っていたがいつもお互い端に寄っていた。ダウドは迎賓館での出来事は彼が単に要求に応えてくれただけで、もう二度とないのかもしれないと思い始めていた所だった。

    “なんで……そんな事を?” ダウドは水を飲み、一息置いてから問い返した。コルヴォは黙って食事に戻ってしまった。聞こえるのは彼の食器の立てる音だけになり、コルヴォは機械的に食事を口に運び続けているようにダウドには見えた。

    彼のだしぬけな発言には慣れて来ていたが、これは想定外だった。ダウドは夢の中でそんな発言をしたような気もするし、そうでない気もしていた。同じように黙り込んだダウドが気になるのか、コルヴォは目だけでこちらを伺うように見た。

    “その……。お前は、したいのか。”

    自分の顔が赤くなっているような気がして、ダウドは思い切り顔をしかめながら言った。コルヴォはうなずいて、

    “だがお前が暴力的でないと駄目だと言うなら無理だ。船室の壁は音が響く。”

    彼の答えにダウドは眉間を揉んだ。コルヴォが自分を揶揄っているのではないかと思ったが、常に無表情でわかりにくいが彼は真剣なようだった。これは難しい問題だと彼は悩んだ。しかしコルヴォの方は今回自分の要求を提示したし、次はダウドが選ぶ番だ。

    “わからない。” ダウドは素直に認めた。“経験がない。”

    ダウドは誰かに性的な関心を持ったことがなく、彼が初めて熱や欲求を感じたのがあの浸水地区での最後の夜だった。あれはレイプではなかったが、セックスでもなかった気がしている。だからそれ以外の事は何も知らないしわからないとしか言えなかった。

    コルヴォはうなずくと、“嫌ではないならしてみよう。” そう言った。



    その後、彼らは服を脱いでベッドで抱き合った。彼を狂わせるような刺激はないものの、深い波のような快感があるとダウドは思った。

    彼はコルヴォの腕の中で眠りについた。そして目覚めた時、彼は驚いた。生きている彼に会って以来見なくなっていたタワーの中庭での、物言わぬコルヴォとの夢――、あの猟師小屋でそれを見て起きた時と、彼は全く同じ気分になっていたからだ。

    穏やかで、何かが洗い流されたようにすっきりとした目覚めだ。タイガの森のハンモックで寝た時でさえ、起きた時には充足感があった。

    “……おはよう、”

    上から声が降りかかり、ダウドは目線を上げた。眠そうなコルヴォがいた。彼の睡眠で温まった手がダウドの肩を抱き、自分の方へと引き寄せる。ダウドは心地よさに目を閉じた。

    彼はコルヴォの手に壊されたかった。彼の手から齎される痛みがずっと欲しかった。しかし、この暖かな手も悪くない。彼は思った。

    小さな窓から見える空は、彼が夢で見ていたように雲がかかった青空だった。昼前にはダンウォールにつくだろう。






    エピローグ


    “マスター、書斎の金庫はやはりダミーでした。”

    ヴォイドの塵とともに背後に現れたトーマスに、ダウドはそうだろうなと返した。昼前のエステート地区の屋敷の屋根で、彼らは手袋はしていたがもう捕鯨員の服は着ていなかった。

    “献金の証拠といってもせいぜい紙が何枚かと、あってもオーディオグラフくらいだ。金庫は思っているよりも小さいだろうな。”

    爵位と国家の重要なポストを持つ屋敷の主人が国に定められている数倍以上もの献金を受け取っている、その証拠と金を金庫に隠している――、そういった情報を得て彼らはそれを探すために来ていた。よくある政治腐敗だ。

    彼らはこの街で、どちらもスパイマスター補佐の任についていた。ダウドは戻ってすぐにアーケインボンドを使いトーマスは自分の左手の印を喜んでいた。もう誰かを殺す必要はなく、彼らの役割は情報収集が主だった。

    “玄関から天井裏までくまなく探す必要がありそうですね。” トーマスの発言にダウドもうなずいた。

    彼らの虚無の目に映らないと言うことは現金や金塊ではなく小切手だ。捜索には時間がかかるだろうから、火事かなにかを起こしてでも屋敷を一度空にした方がいいかもしれない……、彼は考えながら、地図を畳んでコートの内側に押し込んだ。

    “コルヴォに相談するべきだろうな。一度戻ろう。”



    彼が護衛官の部屋に入るとコルヴォは何かを書いていた。近づくと、彼はもうすぐ書記がこれを取りに来るんだと言いながらもペンを止めなかった。

    きっと午後の会議のための草稿かなにかだろうと判断し、彼は開いた窓の方へ向かい煙草に火をつけた。そのまましばらくレンヘイブンを眺めていると、コルヴォが近づいてきたのが気配でわかった。

    “終わったのか?” 彼の言葉にコルヴォはうなずき、ダウドの隣に立った。

    コルヴォは変わらず無表情だが、ダウドは彼のその殆ど動かない表情筋の中の僅かな違いを見分けられるようになっていた。“お前に相談すべきことがあるんだ、” 彼はそう言ったが、コルヴォは黙って彼の顔を見るだけだった。

    ダウドはため息とともに煙を吐くと、煙草を窓の外に放った。コルヴォは窓枠に腕をつくと長身を屈めた。

    “書記が入って来るぞ……。”

    ダウドは一応言ったが、コルヴォのキスを止められるほどの理由でもない。彼は素直に上を向き、コルヴォの好きにさせた。

    ダウドが心配になるほど長いキスの後、コルヴォは服の上から彼の腰を撫で、耳に口元を寄せて言った。“今夜おまえの部屋へ行く。新しい鞭を手に入れたんだ。”

    ダウドは彼を睨んだが、もしコルヴォに表情があったなら彼はきっと含みのある笑顔をしているだろう。今の一言だけでダウドの内側に暗い火が燻り出すことをコルヴォはもうよく知っている。鞭は彼らのどちらもが好きだった。

    ダウドは無関心を装ってコルヴォから離れたが、一度ついた火は消えそうもなかった。今夜は自分に手錠をかけて彼を待っていようか――、彼はそんな事を考えていた。コルヴォから齎される痛みは格別なんだ。
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